W杯まで地道なトレーニングをやり切ること
それが最大の挑戦

2017年9月27日、メキシコの都市パチューカで行われたメキシコプロサッカー1部リーグ・リーガMX第11節、CFパチューカ対クルス・アスル戦。CFパチューカの本田圭佑選手は後半37分、(ゴールに最も近い位置で得点を狙う)1トップとして出場すると、後半44分に見事ゴール。チームの4-0での快勝に華を添えた。移籍後2得点目となったこのシュートシーンは、ケガからの順調な回復ぶりをうかがわせるには十分に見えた。しかしその翌日、取材に応じた本田選手の自己評価はシビアなものだった。

「僕はもともとトップ下が主戦場なのですが、新しいことへのチャレンジとして1トップの練習もしています。昨日のシュートはその成果が出たとも言えますが、やはりにわか仕込みの印象は否めません。僕としてはシュートを打った後、そのまま走り抜けるのが理想の形です。でもボールタッチの粗さやそれに伴うシュートのタイミングのズレなど小さなことが重なった結果、シュート後に転んでしまいました。人によってはゴールが決まったのだからいいのではと思うかもしれませんが、僕にとっては改善すべき大きなポイントだと思います」

世界が認める日本を代表する選手が、ケガ明けとはいえ「改善すべきところがある」と語り、さらなるプレーの質の向上へ意欲を燃やす。その最大の原動力となっているのが、2018年6月に開催される2018年FIFAワールドカップ(以後、W杯)ロシア大会だ。いわずと知れたサッカー界最高峰の大会で、出場は全サッカー選手の夢である。日本代表チームはすでに6大会連続出場を決めているため、代表の座を狙って選手間の競争が激化しているのはご存じの通りだ。2010年南アフリカW杯、2014年ブラジルW杯と2大会連続で主力として出場した本田選手も当然今大会でも出場を目指している。そしてもちろん、ただ出場すればいいなどとは考えていない。

「これまでも言い続けてきたことですが、出るからには優勝したい。全試合、勝ちたい。そのためにもエースとして一分でも長くピッチに立ち、チームの勝利に貢献することを目指します」

前回のブラジル大会でも本田選手は「目標は優勝」と公言していたものの、力及ばず予選敗退で終わった。それだけに「日本が優勝なんて」という空気があるのも事実だ。しかし、本田選手は意に介さない。

「そもそもベスト8を狙ってその通りの結果が得られるほど甘い世界ではないですし、相手がどんな強豪国であろうと、勝つチャンスがあるのがサッカーというスポーツです。日本人は前例のないことに対して臆病になりがちですが、僕は前例のないことに挑戦するのが好きなんです。ですから日本代表として大記録に挑戦したいですね」

口調は穏やかながらも、言葉の一つひとつから本気度がひしひしと伝わる。すでにW杯での姿も具体的にイメージできていて、その実現に向けての取り組みが進んでいるのだとも明かす。

「若手のJリーガーの場合、海外チームに移籍して1年間プレーするだけで体重が5キロも増えるほど筋肉がついたり身体のシステムが変わるものなのですが、31歳の僕にはもうそんな劇的な変化はあり得ません。ですから、やるべきことといえば、とにかく毎日地道にトレーニングを積み重ねていくことに尽きます。しかも、休んでしまうとそれまでの積み重ねが水泡に帰すので、ケガをしないことも大切です」

サッカー選手にとって、ケガをしないということは簡単ではない。試合では、激しいぶつかり合いの結果、身体の一部を痛めて交代を余儀なくされる選手をよく見かけるし、試合中は無事に見えても後日痛みが出るケースもある。さらに、トレーニングで追い込み過ぎて故障する場合もある。このように常にケガと隣り合わせだからこそ、ケガをせずに成長できるギリギリの調整を最後までやり切ることが最大の挑戦なのだと語る。

「W杯までの期間をワンセットと考えてパチューカに移籍したのですが、イメージ通りに成長していければ、その途中にあるFIFAクラブワールドカップ2017やリーガMXでもそれなりの結果を出せるかもしれませんね。移籍時は、そこはまったく意識していませんでしたが」

取材後、チームで先発出場の機会も増え、得点を重ねている様子を見る限り、取材時に聞いた「ギリギリの調整」が順調であることを伺わせる。残念ながら11月の日本代表戦には招集されなかったが、12月に行われるFIFAクラブワールドカップ2017などでの活躍ぶりが注目されれば、いずれは――と期待を抱かずにはいられない。

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