足音や息遣いで相手の動きを予測する――。
ショートトラックの駆け引き

リンクのサイズは1周111.12m。タイムレースではなく、1レースにつき4~6人の選手が同時にスタートし、着順を争う。
大きな大会なら、予選から決勝まで1日7レース。技術や体力はもちろんのこと、駆け引きで上回るための知力や、転倒などのアクシデントに巻き込まれない運を含め、すべての要素を持ち合わせた者が頂点に立つ。非常に奥深く、スリリングな競技、それがスピードスケート・ショートトラックだ。

「前の選手に気づかれないように音を立てずに追い抜いたり、後ろの選手の息遣いから疲労度合いを察知してスピードアップしたり。予想外のことも起きるので、やっていても見ていても、すごく面白いですよ」

柔らかな笑みと芯の強そうな瞳を持つ26歳は今、来シーズンに開催される4年に一度の大舞台を目指し、一歩一歩、着実に前へ進んでいるところだ。

ソチ大会の前シーズンだった2012年12月。全日本選手権のレース中に転倒し、右足くるぶしの奥にある きょこつを骨折する重傷を負った。年明けの2013年1月に手術を受け、ボルトを入れたが、練習を再開できたのはソチの代表選考会の5カ月前。太腿はすっかり細くなっていた。

「自分の脚がこんなに細くなってしまうなんて、と落ち込みました」

2013年12月のソチ大会代表メンバー選考レースに出ることを断念。代わりに同時期にイタリアで開催されたユニバーシアード大会に出ながら気持ちを切り替え、4年後を目指すことにした。
2年間の休学があったことで、6年かけて大学を卒業し、2016年4月、日本オリンピック委員会(JOC)による就職支援制度「アスナビ」を通じて、全日本空輸株式会社に入社した。
「アスナビ」での就職活動で与えられた5分間のスピーチでアピールしたのは、目の前のことに常に全力で取り組む姿勢。世界で活躍したいという意欲と飽くなき情熱が認められ、入社が決まった。

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