宇宙・イノベーション
2017年1月26日
有人機とドローンが共存できる空を目指して〜天草市と東京大学と連携し、社会基盤構築の協定を結びました〜

今や私たちの身近な存在となりつつある、ドローン。

無人飛行機という利点を生かして、災害時や防災での活用、また空撮に使用されるなど、幅広い活躍を見せています。

2016年12月18日、ANA総合研究所は、熊本県天草市、東京大学とドローンを活用した社会基盤構築に向けた協定を結び、翌日の12月19日には、天草市の天草広域連合南消防署で日本初となる実験を行いました。

有人機とドローンの共存に向けた調査研究に取り組む、東京大学の鈴木・土屋研究室。防災や水産業、観光等でドローンの活用を目指す天草市。そして、地域活性化支援で既に天草市と協力関係にあり、航空の安全運航に関して知見のあるANA総合研究所。

三者がそれぞれのノウハウを生かして、新しい社会基盤の構築に取り組むことになりました。

現在、ヘリコプターとドローンのように異なる操縦者同士では、目視でお互いの位置を確認するのが一般的ですが、ヘリコプターからドローンを確認するには、視認性に課題があります。そのため、「双方で位置情報等を確実に確認できること」が安全な飛行のために重要なポイントとなってきます。

今回の実験は、「飛行機やヘリコプターなどの有人機とドローンが安全な距離を保ち、互いが共存できる環境づくり」を目的として行われ、有人ヘリコプターと複数のドローンが衝突を回避するために、いかにスムーズに各機の位置情報を共有できるかに焦点があてられました。

実験の想定は、「崖から転落した人の救助に防災ヘリコプターが要請され、ヘリコプター到着まで30分間必要。現場では、防災ドローンと一般ドローンが飛行中」。

緊張の中で始まった実験。

防災ヘリコプターが到着するまでの間、防災ドローンが崖から転落した人を発見。その場所を特定し、映像としてドローンからヘリコプターの操縦者に伝えられます。ドローンの位置情報を共有した防災ヘリコプターが付近に接近すると、衝突回避システムを活用して、ヘリコプターから各ドローンに着陸命令が。

ドローンが安全に着陸したことを確認してから、防災ヘリコプターが無事に着陸し、転落者を救助。これで実験は完了です。

日本で初めての試みとなるこの実験は見事成功に終わり、今後は更に「有人の防災ヘリコプター」と「無人のドローン」が共存するためのルール作りや、衝突回避技術の研究に必要なデータや知見の収集を目指します。

ANA総合研究所の岡田社長は「空は無限大のように見えるが、道路が走っている訳ではないため、空を飛ぶ民間有人機と無人のドローンの共存ルールを作る必要である。航空会社としては安全が一番大事であり、安全における当社の経験を今後のドローンの将来に向けて活かしていきたい。ANAグループではHISとの宇宙ベンチャーへの資本提携を発表したが、同様に空のビジネスへ向けての夢、そして将来へ向けて頑張っていきたい」と話しました。

ANAではドローンの事業化に向けたプロジェクトも昨年発足し、取組みの加速がますます期待されます。ANA総合研究所はこの取り組みを通じ、有人機とドローンが共存できる空を目指して、新たな分野でより良い社会づくりに貢献していきます。

※東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻鈴木・土屋研究室:
東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻において航空機・宇宙機の飛行力学・制御・機体設計と飛行経路の同時最適化、飛行ロボットの研究開発、パイロットの操縦分析に関する研究などを行っている。