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Inspiration of JAPAN

#03 ANAペースメンテナンステクニクス 羽田整備部 機体整備課チーフ 平松敏夫 盤石の体制と、お客様視点。“命”を守る整備の仕事

地道に、丁寧に、そして愚直に 当たり前のことを言うようで申し訳ないが、旅客機は巨大だ。コンパクトと言われるボーイング787でさえ、その全長は56.7mに達する。それだけの大きさのものが、毎日当たり前に空を飛び、お客様に空の旅を提供する。そのためには、念入りな整備はもちろんだが、“お客様目線”も大切な要素だという。 

整備は緻密で繊細。万全を期して臨む

羽田空港第2ターミナルの近くにある、ANAの整備ドック。ジェット機が丸々入る広大な空間に、分解された旅客機が横たわる。ここで行われているのは、“重整備”と呼ばれる定時整備だ。「クルマでいうところの車検と考えていただけると、分かりやすいですね。3,000〜6,000飛行時間ごとに詳細点検や修理作業を行い全てをチェックするんです」現場でジェネラルメカニックとしてチーフを務める平松敏夫はこう語る。正直、「ここまでするのか!」と驚くほど緻密な作業が行われているが、なにせ結果的には人の命を預かる仕事なのだ。それも当然のこと。「余すところなく点検するのはもちろんですが、特に大切なのが、小さな作業で“もの”をなくさないことです。それだけでエンジンが回せなくなったり、事故が起こることだってあります。工具の管理徹底やビニールを敷いて作業するなど、万全の体制で作業に当たります」
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当たり前を当たり前にこなせることが、最大の喜び

これらはもちろん、平松一人の仕事ではない。チーム全てで共有して作業に臨むのだ。「伊丹空港にいたとき、中部空港でトラブルがあって、エンジンを一晩で換えなくてはいけなくなったんです。その日の夜に駆けつけて、どうにか1日で作業を終わらせました。緊張しましたし大変でしたけど、達成感がありましたね」いわば、トラブルを未然に防ぐのが仕事である。予期せぬ事態に突き当たることも少なくない。「思いも寄らない不具合もおきますし、その場合は急いで部品を海外から取り寄せる必要も。整備完了直前に問題が発覚することもありますから、筋書き通りには行きません。それだけに、工期の中で作業をしっかり終えられることが、一番の喜びなんです」
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安全にするのは、当然。いかに満足していただくか

平松の仕事は裏方だ。職場は空港のなかではないうえ、そもそもお客様と接する機会も少ない。しかしあるとき、気がついた。「数年前、乗客として飛行機に乗ったときに『もしかしたら意外とこういうところを見ていらっしゃるかな』ってふと考えたんです。それ以来、たとえば送り出すときにお客様から見えるエンジンの上を念入りに拭き上げたり、客室整備にもこれまで以上に気を配るようになりました。安全に飛ばすことはもちろんですが、お客様の視点も重要なのかな、って」そんな理想のために、やるべき仕事を積み重ねる日々だ。なぜなら整備とは地道であり、それこそが結果を作る唯一の方法だから。「それに加えて、勉強を欠かさないことです。それと、チーフとしてはやはり背中を見られますので、気を抜かないことですよね」ドック内では787のエンジンの試運転が始まった。まだお客様を載せていない新品だが、念入りに整備する。安全を確実に提供するために、それもまた“当然”の作業なのである。

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