第52回(2026年)大会
決勝ラウンド
2日目・総評 レポート

決勝2日目 総評
25アンダーの大会記録で内藤寛太郎選手が悲願の初優勝
今年で第52回目を迎えたANAオープンは、初日、2日目と北の大地北海道とは思えないほど暖かな気候で晴天に恵まれました。しかし、決勝ラウンドとなった3日目は曇天。最終日の午前中も時折小雨が降っていましたが、午後になると晴れ間がのぞく中でのラウンドとなりました。4日間を通して風は穏やかで絶好の観戦日和となり、多くのギャラリーが会場を訪れ戦況を見守りました。
最終日、2位に3打差をつける単独トップの19アンダーでスタートしたのは、これまでにACNツアー3勝、福島県出身選手としてツアー初優勝を狙う44歳のベテラン内藤寛太郎選手。内藤選手と最終組を回るのは、16アンダーで2位からスタートする佐藤大平選手と15アンダーで3位につける香妻陣一朗選手。佐藤選手は昨年の初優勝に続く、ツアー通算2勝目を狙い、香妻選手も豊富な海外ツアー経験を生かし逆転優勝をめざしました。後続組には内藤選手と同郷の福島県出身でツアー未勝利の古川龍之介選手をはじめ、韓国出身で実力者の宋永漢(ソンヨンハン)選手、ツアー2勝目を狙う大岩龍一選手がトップを追いかけます。
この日、内藤選手は出だしの1番ホールをパーとしますが、2番ホールでは20cm、4番ホールでは3mにつけてバーディー。さらに5番ホールではチップインでバーディーを決める上々のスタート。初優勝が懸かる緊張感の中、アグレッシブなプレーで5番ホールまでにトータル22アンダーにスコアを伸ばし、2位の佐藤選手に5打差をつける快調な滑り出しとなりました。しかし、この日最長の実測243ヤードのセッティングとなっている8番ホール(パー3)で、この日初めてのボギー。しかし、続く9番ホール(パー5)では、見事なバウンスバックで前ホールのボギーを帳消しにするバーディー。同ホールでは2位につけている佐藤選手がセカンドショットでピンまで1.5メートルにつけるスーパーショットで2オンに成功するも、惜しくもイーグルパットを決めきれずバーディー止まり。内藤選手は後続に4打差をつける22アンダーで前半を終えます。
| Position | Score | Player | Total |
|---|---|---|---|
| 1 | -25 | 内藤 寛太郎 | 263 |
| 2 | -20 | 佐藤 大平 | 268 |
| T3 | -19 | 大岩 龍一 | 269 |
| T3 | -19 | 香妻 陣一朗 | 269 |
勝負の行方が決まるサンデーバックナイン。内藤選手は10番ホールを痛恨のボギーで2位と3打差の21アンダーに。12番ホール終了時点で佐藤選手、後半2つのバーディーを獲った香妻選手、1組前で2つのバーディーを獲った大岩選手の3名が、18アンダーの2位タイでトップを追いかける展開となりました。
しかし、内藤選手は続く13番ホールでバーディー、ふたたび4打にリードを広げると、続く15番ホール、16番ホール、17番ホールで驚異の3連続バーディーを決めて、後続を突き放す25アンダーに。最終ホールをパーで締め、終わってみれば2位の佐藤選手に5打の大差をつけて優勝を飾りました。
内藤選手はツアープレーヤー転向から19年237日、悲願の初優勝。44歳123日でのツアー初優勝は、歴代5番目、日本人選手では4番目の年長記録となりました。また、通算25アンダー、263ストロークは、尾崎将司選手(1994年)と岩﨑亜久竜選手(2024年)が記録した268ストローク、通算20アンダーの大会記録を5打更新する新記録となりました。
伝統の一戦「ANAオープン」。来年の第53回大会はどのような戦いが繰り広げられ、どの選手が本杯を掲げるのか──さらなる熱戦を期待したいと思います。
決勝2日目
フォトギャラリー
決勝2日目
選手コメント
内藤 寛太郎
25アンダー(1位)FR 66
──優勝インタビューでは涙も見えました。込み上げてきた思いはどのようなものでしたか?
本当に長かったので。ゴルフ人生の中でこうやって優勝することができてうれしいという思いでした。
──関係者の方の姿はプレー中に目に入りましたか?
それはもう目に入りました。東京からも福島からも、たくさんの方々が応援に来てくれていたので。
──声援をどのように受け止めていましたか?
声をかけていただいたので来てくれていたのはわかっていたんですが、自分のゴルフに集中しようと思っていました。「来ているな」ぐらいですね(笑)
──優勝した瞬間、誰かの顔や昔のことなど、思い出すことはありましたか?
特になかったです。ただ、最後も入れて終わりたいと思っていたんですけど、入らなかったですね(笑)
──昨日までは、「緊張もなく普段通り」と振り返っていましたが、今朝起きてスタート前までの心理状態はどのようなものでしたか?
昨夜は10時ぐらいに寝ているのですが、朝だと思って起きたらまだ深夜0時でした(笑)。そこからいろいろ考えていたら寝られなくなってしまい、気づいたら朝になっていました。やはり緊張していたのだと思います。
──今日のプレー中、「このまま優勝できるかな」と思いはじめたのは、何番ぐらいでしたか?
いや・・・思いはじめてないです(笑)。本当に最後まで「どんなミスが出るのかな」と、ビビっていたところはありました。でも、18番のティーグラウンド行った時、ロピアの髙木さんが盛り上げてくれたので、それで気持ちに余裕ができてティーショットを打てました。
──立ち上がりから3つバーディ、中盤の6番からピンチがいくつかあったと思います。特に7番、ティーショットが左バンカーに入り、そこからのバンカーショットが少しダフッたように思いました。焦りはありましたか?
焦りはまったくありませんでした。「うまくいかないな」と思いながらプレーしていました。
──プレーとは関係ありませんが、お名前の「寛太郎(ひろたろう)」さんの由来はどのようなものなのでしょうか?
父が寛(ひろし)という名前なので、祖父が「寛太郎(かんたろう)」にしたかったらしいのですが、それを父が「ひろたろう」という読みにしたと聞いています。
──2006年にプロ転向されてから、「つらかった」「優勝遠いな」など、もっとも印象に残っている時期はいつでしたか?
パッとは出てこないのですが、逆に「良かった」印象が本当に数えるほどしかありません。「良かった」といっても3位、4位で、「ああ、ここで終わっちゃうのかな」ということばかりでした。今、ツアーの平均年齢は20代の若い世代です。今日もジン(香妻陣一朗)は僕のドライバーをスプーンで楽々越えていきますから、「このままやっていけるのか」と心配になる部分はありました。だから、「いつ」というより、ずっとつらかったです(笑)
──その中で44歳になる年に初優勝です。さまざまなめぐり合わせもあると思いますが、これまでとの違い、進化している部分はどういったところだと思いますか?
進化しているかどうかはわかりませんが、プレー中の心理状況は若いころよりは落ち着いていると思っています。
──今シーズンの調子はいかがですか?
今シーズンはそもそも開幕から調子が悪すぎて・・・今日もバーディは獲れていますけどパーのところはほぼピンチでした。「いつどうなるかわからない」という状態ですね。今日もパターが入らなかったら何個ボギーだったんだろうという内容でしたから。でも、その中でこのスコアで上がれたのは、メンタル的にも成長できたからだと思います。
──昔は怒ったりもしていたということですか?
いや、怒りはしないです。諦めもしないのですが、気持ち的に少しへこんでいくというか、「ああ、やっぱり今日もダメか」という感じになりがちでした。
──それは年齢とともに成長していったのでしょうか? それとも誰かの影響や何か気づきがあったのでしょうか?
2020年くらいから谷原(秀人)さんとよく練習させてもらっていたのですが、谷さんはいろいろ考えながらやっていて、そういう姿を傍で見て技術的にもメンタル的にも成長できたと思います。
──昨日の朝、騒動があったと聞いていますが、そのことについて教えていただけますか?
実は昨日の朝に練習している時に、軽いぎっくり腰になってしまいまして。「なんで今?」という気持ちでした。しかも今週はいつものトレーナーさんが来られなくて、勝俣(陵)さんのトレーナーである大塚さんにお願いしていました。朝の練習場に大塚さんを呼んで治療してもらい、痛み止めを飲んで・・・そんなこんなで練習をしていても「今日プレーできるかな」という心配しかありませんでした。そんなことを考えていたら、緊張している余裕はなかったですね(笑)。
──今日も腰に影響はあったのですか?
今朝も起きた時からずっと痛くて。今日は腰にテーピングをしてもらったのですが、朝の練習場では思ったように打てませんでした。痛み止めを飲みながら誤魔化しながらやってくしかないと思っていました。
──スコアの推移だけを見ているとそんなことをまったく感じさせませんが、この決勝2日間のゴルフは、ご自身では何%の出力でプレーされていたのでしょうか?
ショットに関しては振りたいところで振れませんでした。昨日も少し腰を庇ってミスしたこともあったのですが、その分アプローチとパターに集中しようと切り替えました。ショットが乗らないのは想定内ですし、同組の2人よりドライバーが飛ばないのも想定内でしたから。
──9ラウンド連続で60台が続いているということですが、この好調は何が原因だと思いますか?
何があったんですかね(笑)。でも、本当にパターのおかげだと思います。
──25アンダーはジャンボ尾崎さんと岩﨑亜久竜さんを抜いて新記録です。このことについてはどう思われますか?
あまり実感も沸きませんが、今週特に天気が良かったですよね。いつも輪厚は風が強いイメージがありますが、風もないし寒くもない状態だったのでそれが要因じゃないですかね。
──先ほど「つらいことばっかりだった」とのことでしたが、大学ゴルフ時代もレギュラーになれたのは1年だけと聞いています。ゴルフを続けてきたモチベーションについて教えてください。
モチベーションといいますか、ゴルフをやっている以上は優勝したいです。優勝しないまま終わりたくないという気持ちはありました。チャンスはどんどん少なくなってきていたとは思います。
──支えになった人はいましたか?
本当にたくさんの人に支えられてゴルフをさせてもらっているので、そういう方々に結果で恩返しができたと初めて思いました。
──ロピアの高木さんが、内藤さんの一番の魅力は「真面目なところ」とおっしゃっていたようです。ゴルファーとして大事にされていることはありますか?
大事にしていること・・・なんですかね? あまり考えたことはありませんが・・・正直に言うと特にないです(笑)
──自分をどのような人間だと分析していますか?
あまり羽目を外すことはないタイプですね。
──お酒を飲んでいる時もですか?
お酒は飲まないというか、飲めないんです。お酒を飲むと寝るかトイレから出てこないかどちらかです(笑)。基本的には飲みたくないです。
──賞金2000万円、ANA の往復ファーストクラスペア航空券など、ゲットできました。
そうですね、両親にどこかに旅行してもらいますかね。
──6年ぶりの日本シリーズJT カップ出場が決まりましたが、意気込みをお願いします。
その時期はいつもQT(クォリファイングトーナメント)で忙しかったので(笑)。今、自分で言おうと思ったんですけど、QT受けなくていいっていいですよね(笑)。日本シリーズに出られるとなったらうれしいです。ありがとうございます。
──「勝てないと思った」「チャンスも残り少ないと思っていた」ということですが、この1勝を経て次はどのような目標になりますか?
正直、今はまだ何も考えられなくて。1試合1試合やってくだけだと思っています。これまでも特に大きい目標を立ててやっていたわけではなかったので。
──一度シード落ちの経験もありますよね。シード選手とQT から来た選手で何か違いを感じましたか?
最近の若い世代はQTから来てもうまいじゃないですか。今週も上位にQTから出ていた選手もたくさんいたと思います。そんなに変わらないと思います。
──シード選手だと余裕を持ってプレーできると思いましたが、感じませんでしたか?
僕はあまり感じなかったですね。シードを獲ったから余裕があるのかというとそうではありません。余裕を持ってプレーしても、結果が出なかったらあまり意味がないと思います。
──福島県勢初優勝を果たして、福島でゴルフをやっている若い世代の希望になったと思います。
ジュニアの子たちのためにイベントをやっているのに、僕が試合に出られなくなったらやる意義があるかな・・・と考えていたんです。やはり結果を出さないと示しがつかないなと。で、一昨年にアジアンツアーで優勝して、ジュニアの子やその親御さんがとても喜んでくれたので、今回レギュラーツアーで優勝できたので、良い報告ができると思っています。それで福島が盛り上がってくれたら、なお良いなと思います。
──パターがこのところ良いということですが、クラブにこだわりはありますか?
僕はクラブにこだわりはそれほどないんですよ。14歳からずっと同じ担当の方にクラブを見てもらっていて、基本的にそんなに変えません。「これ良いんじゃない?」と言われたらそれを使っています。
──ゴルフを始めたのが14歳というのは比較的遅いほうだと思いますが、理由はあったのでしょうか。
僕はサッカーをやっていて、最初はゴルフに興味がなかったんです。で、サッカーで怪我をしてつまらなくなって辞めて、父親に「ゴルフやってみるか」と言われて始めました。
──始めたのが遅いことによるハンデを感じたことはありましたか?
今でこそたくさんの小さい子どもたちがゴルフをしていますけど、僕が14歳の時はまわりでゴルフしている人は誰もいませんでした。なので、遅いと思ったことはありません。
──先ほどぎっくり腰のお話がありましたが、プロに入って大きな怪我や故障は経験ありますか?
今回みたいな軽いぎっくり腰は年に何回かあるのすが、大きい怪我は特にないです。
──普段から心がけている健康法や食生活などはありますか?
人一倍ケアには気を使っているつもりです。食事も食べ過ぎないようにしていますし、油物は控えています。そのぐらいですかね。
──谷原さんも同じ44歳で勝ちましたが、刺激はありましたか?
何勝目ですか(笑)? あの時の谷さんは見ていて強かったし、競っていたじゃないですか。最後17番でバーディを獲って、抜けて優勝だったと思いますが、自分が同じような状況だったらこんな冷静にプレーできていたかどうかはわからないです。後半に余裕ができたのは事実なので。
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