2014-16年度ANAグループ中期経営戦略の解説

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2013年度は、ボーイング787型機の運航停止や急激な円安など、いくつかの課題への対応から始まりましたが、下期にかけて堅調な旅客・貨物需要に支えられ、グループ一丸となって収益の回復に取り組みました。
「2014–16年度 ANAグループ中期経営戦略」の下、2014年3月末より羽田発着の国際線ネットワークも拡大し、私たちは、新たな成長ステージへと踏み出しています。

「2014–16年度 ANAグループ中期経営戦略」策定に至った
背景と戦略の方向性

 2020年開催予定の東京オリンピック・パラリンピックに向け、政府は訪日外国人旅行者数の目標を2,000万人に定めています。また日本経済の高揚や活性化、さらには高い成長率で発展を続けるアジア経済やASEANにおける航空自由化の動きは、日本やアジアの航空需要をさらに大きく伸長させる追い風になると考えられます。

 当社グループにとってこのようなビジネスチャンスが拡がる一方、本邦航空業界においては、ここ数年間で段階的に進展してきた首都圏空港の発着枠拡大が最終ステップを迎えることとなります。2014年3月末からは、待望していた羽田昼間時間帯の国際線発着枠が拡大されました。さらに2015年3月には、成田発着枠の増加も予定されています。これらのビジネスチャンスを着実にグループの成長に結び付けていくために、今般「2014–16年度 ANAグループ中期経営戦略」を策定しました。

 この経営戦略の重点戦略テーマは、事業ポートフォリオ戦略として「収益基盤の強化・発展」と「収益ドメインの拡大・多様化」を図る一方、「新たなコスト構造改革」を推進して収益性を強化し、いかなる環境変化にも耐えられる真に強いグループを目指すことです。

 最大の収益基盤である航空事業においては、国内線事業の維持安定を図りながら国際線事業を成長ドライバーとしてグループ全体を牽引していくほか、航空関連事業、旅行事業、商社事業についても収益の拡大を追求していく考えです。経営資源の適正配分を図りながら多角化を進め、グループ全体の収益を高めていきます。

 一方、コスト構造改革としては、事業を拡大する局面でも着実に収益力を向上させていくため、内容・規模ともに深堀りが必要と判断しました。2011年度から2013年度までの3年間で525億円の削減を実施済みであり、2014年度は340億円の削減を予算前提に織り込んでいます。また本戦略では、新たに500億円の削減計画を追加することとして、2016年度までの6年間で合計1,365億円の削減を断行する計画です。グループ全社をあげて生産性の向上に取り組み、このコスト構造改革を必達させることによって、2016年度末時点における航空事業ユニットコスト(座席キロ当たりの費用、燃油費を除く)は、2011年度当初計画比で約1.5円の低減となる見通しです。

 また、2014年3月末に、15年先のANAグループの姿を見据えて5機種70機の航空機調達計画を発表しました。中長期的視点に立ち、財務の健全性を担保しながら今後の成長や更新に必要となる機材を安定的に確保していきます。

持株会社制2年目における取り組み

 当社が2013年4月に持株会社制に移行して以来、1年が経過しました。経営方針の決定と業務の執行を分離するとともに、経営資源の配分を最適化し、事業ポートフォリオ戦略を推進していく方針に変わりはありません。貨物やLCCを含めた航空事業はもとより、航空関連、旅行、商社など、グループのすべての事業において、安全・品質・コスト競争力などで他社を凌駕するとともに、ANAをはじめとする各ブランドの価値を高め、グループ全体の利益に貢献することを目指します。また、グループ各社の連携による新規ビジネスの育成や市場の開拓、事業の幅を拡げる外部投資などについても、慎重かつ大胆に進めていく必要があります。そして、着実に収益を上げて、株主・社会・従業員に還元しながら将来に投資し、成長を続ける正の循環を作っていく考えです。

 持株会社制移行後の初年度には、これまでの経営体制では困難だったことも遂行できるようになりました。例えば、2012年8月に就航したエアアジア・ジャパン(株)については、業績の立て直しに向けた事業モデルの再構築が必要と判断し、2013年6月に当社とAirAsia Berhadによる共同事業を解消して、当社100%出資子会社であるバニラ・エア(株)を立ち上げました。日本型LCC事業の再構築に向けた一連の流れは持株会社としての視点に基づいた対応であり、この他にも、外部視点からのベンチマークによって適正コストを追求したこと、また多角化事業の収益拡大計画に着手したことなどが挙げられます。

 一方、これまで60年間続けてきたエアライン経営から体制を変更したため、意識面の切り替えに多少の時間を要しているのも事実です。

 こうした初年度の振り返りも踏まえて、2年目において取り組む課題は、グループコストの適正化と個社業績評価制度の本格導入です。2013年度に実施したベンチマーキングを足がかりに、市場競争力のある価格水準でのグループ間取引を実現し、外部収益の拡大を図っていく考えです。また、各事業会社の目標達成度を確認する仕組みとして、事業会社のPDCAサイクルを加速させることで、グループ収益の最大化を目指していきます。

 この持株会社制の下でグループの成長を支えていくために、コーポレート・ガバナンスを引き続き強化していく予定です。社外取締役や社外監査役による監督および監視の下、意思決定の公正性や経営の透明性を高め、さらに企業価値の向上を図っていきます。

ANAグループ一体となり、厳しい競争を勝ち抜く

 私は2014年の年頭挨拶で、グループ社員に対して「新しいANAグループを創っていこう」と語りました。今後、日本の航空業界における競争はますます加速していくと思われ、海外エアラインも含めた競合他社の供給量も拡大していくものと想定します。国内線市場に目を向けると、少子高齢化や生産年齢人口の減少により、総需要は縮小傾向にあるのが現実です。しかしながら、アジアを中心に事業拡大のチャンスは限りなく広がっています。今回取得した羽田国際線発着枠の効果的な活用を含め、私たちには、まだ取り組むべき課題が残されています。これを実現するのが各グループ会社の力だと考えます。

代表取締役社長 伊東 信一郎  私はANAグループをもっと強くしたいと考えています。グループ各社がもっと強くなれば、その帰結として、集合体であるグループ全体も強くなるはずです。現行の中期経営戦略で掲げた成長戦略に向けて欠くことのできない基盤は、言うまでもなくグループ各社の「人財」です。グループの経営理念・経営ビジョン・行動指針(ANA’s Way)に込められた想いをグループ社員と共有し、国籍や組織、職種などの垣根を越えて、時代の変化に柔軟に対応できる「人財」を育成していく考えです。そして、この「人財」を原動力に、経済的価値・社会的価値を高め、あらゆる企業活動を通して国際社会からの信頼を得て、自らの持続的成長を果たしながら社会の発展に貢献することが、我々の責務であると考えています。

 実現すべきは「強い個人、強い組織、強い会社、強いブランド」、そして「強いグループ」です。この5つを着実に実現させながら、グループの一体化を推進していきます。

ANAグループならではの価値創造を目指して

 国際線ネットワークの拡大といった成長戦略だけではなく、日本を代表するエアラインならではのサービス・クオリティもANAグループの大きな強みです。英国の航空サービスリサーチ会社であるSKYTRAX社によるエアライン・スター・ランキングで、日本初となる「5スター」を2年連続で獲得するなど、ANAのサービス品質は世界的にも高く評価されています(詳しくはこちら)。

 一方、経営財務指標としての価値創造目標については、今回の中期経営戦略で掲げた利益目標の達成と、安定的に事業を拡大できる財務体質の確保が最重要課題となります。

 当社グループは、2012年度に営業利益で1,000億円台に到達しましたが、2013年度は諸要因によって減益を余儀なくされました。本戦略の期間中、改めて1,000億円台へ回帰するとともに、2016年度には1,300億円を目指し、中期的な価値創造目標である「営業利益1,500億円、ROA8%、ROE10%」への足がかりとする方針です。健全な財務体質を維持しながら事業ボラティリティへの耐性をさらに高め、安定かつ充実した株主還元を実現していくことが重要であると考えます。

 グループ内に有するすべての経営資源をフルに活用して事業を発展させていくとともに、世界中のお客様から愛されるANAグループを目指していきます。そして、安全を基礎にサービスや品質にさらに磨きをかけ、お客様の期待にお応えし、厳しい競争の中でも確実に成長・飛躍していきます。経営ビジョンに謳っているとおり「お客様満足と価値創造で世界のリーディングエアライングループを目指す」ANAグループに、ぜひご期待いただきたいと思います。

2013年7月
代表取締役社長 伊東 信一郎