人一倍思い入れのある東京大会へ
日の丸サーファーの挑戦

2年後の東京大会では、5競技18種目が新種目として追加されることが決定している。その中の一つに採用され注目度が高まっているのが、サーフィン(ショートボード)だ。サーフィンといえば海のレジャースポーツというイメージを抱く方も多いだろうが、近年は高度な波乗りのテクニックを競う採点競技としても発展。世界ランク上位34名のみが参戦できる世界最高峰の舞台「WCT」(ワールドチャンピオンシップツアー)では、主にブラジルやオーストラリア、アメリカの選手たちが競い合っているのだが、その中に唯一日の丸をつけて戦うプレイヤーがいる。五十嵐カノア選手だ。

五十嵐選手が初めてサーフボードに乗ったのは、わずか3歳のときだ。

「絶えず揺れる波の上でボードの上に立つというのは、なかなか難しいものですが、カノアは最初からなんの苦もなく立ち、しかもその姿がなんとなく様になっていました」

と、当時トップアマチュアサーファーとして活躍していた父親も驚いたという。そして、その才能を見事に開花させた五十嵐選手は、ジュニア時代から記録づくめの快進撃を続けて12歳でプロとなり、一昨年、18歳という異例の若さでWCT参戦を果たした。

「サーフィン界の頂点は、WCTチャンピオンです。サーフィンを始めて以来、僕の夢はワールドチャンピオンになることですが、WCT参戦は挑戦権を得たことになります。3年目となる今年はトップ10入りを目指しています」(五十嵐カノア選手)

夢の実現に着実に近づいているとの手ごたえも感じているという。その根拠の一つが自身の身体の変化だ。

「サーフィンは繊細な競技で、身長や体重の変化に応じてサーフボードの長さや厚さもミリ単位で調整しなければなりません。僕の場合、身長の伸びは落ち着きましたが、トレーニングのおかげで、体重は昨年の同時期に比べると約8キロ増の77キロになっています(2018年4月末現在)。10歳の頃からお世話になっているトレーナーとともに、あと1~2年かけて『これだ!』と思えるところまで身体を作り上げていきます」

身体づくりが完成すればボードの微調整から解放され、相性のいいボードを使い続けられるようになる。すると安定して力を発揮しやすくなり、結果にもつながるはずだ。そしてその先に待っているのが、東京大会である。

実はサーフィンの正式種目採用の背景には、五十嵐選手の尽力があった。2016年5月、正式種目への採用を検討する会合に招かれた五十嵐選手は、開催地を代表するサーファーとしてサーフィンの魅力をプレゼンした。

「サーフィンの最大の魅力は、社会性にあると思っています。海の中では国籍なんて関係ありません。友人たちと波に揺られてリラックスしながら、いろいろなおしゃべりをするのも楽しい。しかも、サーフスポットは多くの人が集まるので自然と経済が発展しますし、ライフスタイルそのものにもなり得る。プロ化されてファンも増えており、実際、僕自身も多くの日本人サポーターに支えてもらっているので、これから日本でもサーフィン人気は高まっていくと思うと伝えました」

そして、東京大会の正式種目として採用が決定した。当然、思い入れも人一倍だ。

「正式採用されたと聞いたときはうれしくて鳥肌が立ちましたし、すぐに東京大会に出て初代金メダリストになりたいとも思いました。国を代表して戦うとなると、個人戦であるWCTとはまた違う緊張感があるでしょうね。僕は今、体幹を中心に鍛えていますが、勝つためにさらになにが必要かを考えながら、一日一日を大切にしっかりと準備を重ねていきます」

日本は開催国枠として男女1枠ずつが与えられているのだが、それとは別にWCT10位以内に入ることでも出場権を得られる。五十嵐選手のWCTトップ10入りという今年の目標は、実は東京大会へ向けたものでもあるのだ。五十嵐選手の活躍次第では日本人の出場選手数が増える可能性もあり、表彰台も見えてくる。これは期待せずにいられるだろうか。

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