私にしかつくれない、
オリジナリティのある
物語を伝えたい

河瀨監督にとって、まだ出会っていないことの一つが東京大会だ。

「もちろんテレビで観戦したことはありますが、会場に行ったことはありませんし、市川監督時代の東京大会開催時にはまだ生まれていませんでした。まさに未知のものである東京大会に、いまからドキドキしています」

いよいよ開幕まで1年を切った東京大会に向けて、競技によっては内定者が出始めている。とはいえ、映画でいえば、ロケ地は決まっているが、出演者はまだまだという状態だ。それでも鍛え抜かれた肉体と精神との関係など、すでに知りたいことが出てきていると語る。また、内定はまだだが東京での活躍が期待されている選手たちにも、河瀨監督はそのまなざしを向け始めている。

「有力選手たちの外見や言語のボーダーレス化が進んでいますよね。欧米ではずっと前から当たり前だったことなのですが、島国の日本で、かつこのタイミングというのが興味深く感じられます。これは市川監督時代の東京大会ではなかったことですし、そこに日本人のアイデンティティを見いだせるような気もしているので、海外出身の親御さんを持つ選手たちは気になります」

また、そうした選手などの大会関係者以外にも、注目していきたいことがある。

「みんなこぞって“2020”と言っていますが、ではそれってなんなのか。そこを掘り下げられればと思っています。2020年という節目がその先の東京、そして日本にもたらすものを日本人として考えていきたいですし、感じていきたいです」

公式映画を制作するにあたっては、オリンピックの意義や役割を伝えるものをとの要望があったという。しかし、河瀨監督はそこに独自の色を加えるつもりだ。

「ドキュメンタリー映画とは、単なる記録ではありません。事実に沿って組み立てる物語であり、その物語は私の創作物なんです。日本人である私が東京で行われるスポーツの祭典を撮影し、ストーリーを組み立てるということは、2020年にしかできないこと。結末が分からないまま撮影を進めるというドキュメンタリーならではの難しさもありますが、未来へ向けてパッと発光するような、オリジナリティにあふれる物語に仕上げ、皆さんにお届けしたいと思っています」

高校時代はバスケットボール選手として国体に出場し、実業団からの引き合いもあったほどの本格的にスポーツに取り組んでいた河瀨監督。現役最後のバスケットボールの試合で、刻一刻と消え去る“瞬間”を惜しむ涙が止まらず、引退後、「時間を閉じ込めて未来へ運べる」映画の世界に足を踏み入れた。そしてキャリアを重ねた末、スポーツの“瞬間”をとらえて未来へ伝える東京大会の公式映画監督となったことに、自分の人生の役割を強く感じたという。

「与えられた使命を果たしたい」

穏やかな口調の中にも決意を込めて、そう語る。作品は、2021年ごろの完成を目指しているという。自国開催の熱狂が過ぎ去った後も、河瀨作品を通して2020年を振り返り、2020年以降の未来を思い描く機会がある。そう考えると、2020年もその先も、一層楽しみになるのではないか。

取材・文/TEAM A 取材協力/国立映画アーカイブ

持続可能な社会の実現は、
グループ社員一人ひとりが足元を見つめることから

企業活動は、地球と共存してこそ継続可能です。そのため近年は、欧米を中心に、環境保全や気候変動対策、生物多様性への取り組みは社会に対する責任であると同時に、企業経営のメインに据えるべき課題との認識が広がっています。

ANAグループでも、以前より環境、社会、そしてガバナンスに配慮した「ESG経営」を推進していくことでSDGs(持続可能な継続目標)へも貢献できると考え、活動しています。

例えば、宮城県南三陸町での環境保全・復興支援活動「ANAこころの森プロジェクト」(2012年~)、沖縄県恩納村でのサンゴ保全活動「チーム美らサンゴ」(2004年~)、同大宜味村での生態系保全活動「やんばる国立公園~外来植物防除活動ボランティア~」(2018年~)に、地域の自治体や企業とともに取り組んでおり、多くのグループ社員も参加しています。

また、SDGs(持続可能な開発目標)では「誰一人取り残さない世界」を謳っています。ANAグループでも社員一人ひとりが環境への負荷や社会課題を認識し、本業を通じてこうした課題に取り組むことが大切と考え、今年度から一般社員を対象としたワークショップを展開しています。ワークショップでは、私たちの仕事のアクションにはプラス面とマイナス面があるという「トレードオフ」の視点にまずは気づいてもらい、マイナス面をプラス面に変える方法を考える機会を提供しています。

こうした活動を通じ、環境保全を自分と地続きのことと意識するきっかけが生まれるとともに、「自分も世界と繋がっていて、そのことを意識しながら仕事をする視点がついた」「ほかのグループ企業や取引先にまで意識がいくようになった」など、日ごろの意識や行動が変わってきたとの声が上がっています。

2020年は、「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」の発生より10年であり、また、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会も開催されます。ANAグループではこれからも地域の方々とのご縁を大切に、環境や社会とともに持続的な成長ができる企業を目指し、社員一人ひとりが自分の足元を見つめ、行動できる人財づくりにも取り組んでまいります。

▼インタビュー
ANAホールディングス株式会社
CSR推進部
上村等社員
佐藤麻美社員

プロフィール

河瀨 直美 - Kawase Naomi -

映画監督

かわせ・なおみ
奈良県出身。リアリティを追求した作品の評価は高く、カンヌ映画祭での新人監督賞、グランプリをはじめ、世界各国の映画祭での受賞多数。東京2020オリンピック競技大会公式映画監督に就任。最新作『朝が来る』は2020年全国公開予定。

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