パワーアップした脚力と知力でスリリングなレースを制する

社会人1年目となった今シーズンは、重心を低くして滑ることを意識して、下半身を重点的に強化した。すると、トレーニングが実を結び、春先に比べて太腿周りが約2cm太くなり、54cmになった。
ともにスケートで ピョンチャン大会出場を目指している姉や妹たちとは、会えば必ずスケートの話題で盛り上がるそうで、「今シーズンは筋肉がついたねと言われます」と笑顔を浮かべる。

尊敬するアスリートは2010年バンクーバー大会のスピードスケート男子500mで銀メダルを獲得した長島圭一郎選手。スケーティングフォームの美しさは世界トップクラスと言われる選手で、オフには一緒にトレーニングする機会もあった。
「長島さんは長距離から短距離に転向してメダルを獲ったことや、レースの最初から最後まできれいなフォームを保つところが本当にすごいと思います。一つ一つの動作の繰り返しが非常に正確で、軸がぶれないので、あの美しいスケーティングが出来上がるんだなと感じます。そういう選手はなかなかいません」
つまり、彼女自身も無駄のない美しいフォームでショートトラックのリンクを駆け抜けるイメージ作りを重要視しているということだろう。さらに、「長島さんは感覚が鋭く、自分の頭で意識したことを、体で表現する能力が非常に高いように思います」と言い、より頭を使いながら技術を磨いていこうという点でも学ぼうとしているようだ。

「アスナビ」への応募の際、当初は練習拠点でもある長野県の企業を志望していたが、意外なことに東京に本社のある全日本空輸株式会社から声が掛かった。ずっと地元で暮らそうと決意していた彼女であったが、「競技を続けさせていただく以上、私がするべきことは、より良い環境を探すことです。就職活動を通して、目の前の自分のやるべきことに全力で取り組む姿勢を見ていただけたこと、そして声をかけていただいたことに感謝をして、入社を決めました。」

地元を離れることに迷いはなかったかを尋ねると彼女のポリシーを語ってくれた。
「理想と現実が混乱してあれこれと悩み、自分を見失いそうになるときもあります。そういったときは、自分の意思や感情だけで判断せず、人、モノ、場所、さまざまな“ご縁”に感謝し、流れに身をゆだねてみる選択も良いんじゃないかと思っています。出会うものすべてに感謝して、笑顔でいることで、不思議と今までとは違う気づきがあったり、多くのサポートを得ることにつながったり、結果として良いことづくめなんです」

体力、技術、知力に運、すべてを少しずつ成長させている彼女。日本の女子ショートトラックスケート界の今後に期待が膨らむ。

プロフィール

菊池悠希 - Yuki Kikuchi -

女子ショートトラックスケート選手

1990年長野県生まれ。幼少時からスケートを始め、中1からショートトラック選手に。
2013年、2015年冬季ユニバーシアード大会出場。
2015年全日本距離別選手権1000m優勝。
日本オリンピック委員会の就職支援制度「アスナビ」を通じ、2016年4月からANAに入社。

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