チーム力を引き上げたのは、選手たちの自主性

取材当日の4人は、実に和気あいあいとした雰囲気。いわゆる体育会にありがちな上下関係の厳しさや世代間の壁を感じさせない。「チーム全体が仲良くて、普段からちょっとした会話で盛り上がっています」(浮田選手)というが、シーズン当初は違っていたという。

「今季は初めてメンバー入りした若い世代が多かったのですが、彼女たちが私のようなベテラン組に対して委縮してしまったんです。食事も世代ごとに分かれてとっていました」(足立選手)

メンタルコーチがチームの雰囲気を「暗い、バラバラ」と評すほど、世代間の壁の厚さは深刻だった。ところが、このチームのすばらしさは、選手たちの自主性にある。早速、自分たちで問題を解決しようと動き出した。まずはメンバー同士の交流を深めようと、遠征時の部屋割や食事の席を毎回変えた。また、個々の強みを分析した結果をもとに、選手全員を「分析」「チームビルディング」「アイディア」「コミュニケーション」の役割のチームに分類し、チーム力向上を図るべく活動した。ちなみに床秦留可選手は分析、浮田選手と床亜矢可選手はアイディア、足立選手はコミュニケーショングループだ。

さらにチームの絆を強固にしたものがある。共通の目標を設定したのだ。とはいっても、ただ平昌で勝つことではない。もっと根本的な問い――「何のために戦うか」、その想いを共有したのだ。そのきっかけもまた、選手たちの自主的な活動にある。ある日、「日の丸に戦う目的を書こう」ということになった。ところが、いざ標語を決めようとすると、意見がまったくまとまらなかったという。


床亜矢可選手

「自分のため、家族のため、あるいは競技の普及のため……と、見事にバラバラでした。それぞれに強い想い入れがあるから、お互い、簡単には譲れません。それこそ何日間もかけて、侃々諤々(かんかんがくがく)、意見を戦わせました」(床亜矢可選手)

突き詰めていけば、自分のためなのではないか。その意見に従い、まずは日の丸に自分たちの名前を記してみた。次に家族。そしてチームメイト。さらに未来のアイスホッケーを支える子どもたちへの想い……。皆で次々に書き込んでいくことで、一つの答えにたどり着く。それが「Play For All」だ。
「この旗を見るたびに『これだけの想いが集まっているからこそ、今までどんなにつらくても乗り越えてこられたんだ』と再確認できますし、もっとがんばろうと力が湧いてきます」(床秦留可選手)

チームビルディングの成果は、見事、本番で発揮される。まず、今期最大の目標としていた平昌の出場権を獲得。その勢いのまま臨んだ今年2月の冬季アジア札幌大会と4月の世界選手権(Div1‐A*)でも全勝優勝を果たした。

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