50年後の未来のために
皆様、あけましておめでとうございます。
2019年が皆様にとりまして幸せな一年になりますよう、心よりお祈り申し上げます。
元日、私は装い新たなカレンダーを1月から12月まで眺めながら、新年の抱負についてイメージ固めをしていきます。「カレンダー」が“毎月の初日”を意味するラテン語の「カレンダエ」に由来しているためか、カレンダーをめくるたびに過ぎた月の反省から「今月こそは」と気持ちを入れ直すこともしばしばです。また1か月日めくりカレンダーも愛用しており、“今日の一言”が毎朝私に語りかけ、時に自分の考えや行動を正してくれます。中でも15日目の一言「息を吐くから空気が吸えます」はとても気に入っています。カレンダーは私にとって日常生活の道しるべです。
「我々は月へ行くという選択をした。1960年代が終わるまでに月へ行く。困難であるがゆえの選択だ。人類の発展のため、それらを手に入れなければならない」。アメリカ合衆国第35代大統領のジョン・F・ケネディが1961年に行った議会での演説です。ケネディの言葉のとおり1969年7月20日、アポロ11号によって人類は初めて月面に降り立ちました。「これはひとりの人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍だ」とはあまりにも有名なニール・アームストロング船長の言葉です。
その小さな一歩から50年後の“2019年”が舞台の「月面居住者からの手紙」で始まる物語があります。1986年に刊行された『アーサー・C・クラークの2019年7月20日』です。あのヒット映画『2001年宇宙の旅』の作者だといえばお分かりでしょう。彼は今から30年以上も前に、まるでタイムマシーンに乗ったかのように日常的な事柄から政治・経済・戦争に至るまで、克明に21世紀の世界を描き出しました。「旅への誘い:2019年の交通機関」という章では、シンガポールからロサンゼルスまでなんと2時間10分で飛ぶ航空機が登場します。空港では航空機がまるでバスのように、搭乗口に着いて乗客と荷物を降ろし、すぐに新しい乗客と荷物を乗せて次のフライトに発つ、その所要時間はわずか20分。これがクラークの描いた月面着陸から50年後の航空の姿でした。
さて50年後の未来はどうなっているのでしょう? そういえば50年ほど前、私が小学生の時に『サンダーバード』という大好きなテレビ番組がありました。放映当時から100年後の2065年という時代設定で、有人原子力輸送機の「サンダーバード2号」が最大時速8000kmで飛んでいました。現在はというと、いよいよ電動化航空機や低騒音の超音速航空機など夢の次世代航空機の開発が本格化し始めています。「可能性の限界を測る唯一の方法は、不可能であるとされることまでやってみることだ」とクラークは言いました。夢にあふれる50年後の未来のために、私たちは日々安全と品質の向上を目指し続けます。
皆様により進化したANAを感じていただける一年にできますよう頑張ってまいりますので、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
全日本空輸株式会社
代表取締役社長 平子裕志