巻き起こる「羽生旋風」ピョンチャン、そしてその先へ

4年に1度しか獲ることのできない金メダルを手中に収めてもなお、世界のトップで戦い続けようとするスケーターは、近年では珍しい。休養を取り心身ともに休ませてから復帰するスケーターもいるが、年々複雑化するルール、4回転ジャンプを複数の種類のジャンプで跳ばなくてはいけないほど技のレベルが上がり、ジャンプだけではなく、表現力やエレメンツ間のつなぎにも工夫をしなければ、表彰台に上がることさえできない厳しい時代だ。下からの突き上げも激しさを増してきたが、それでも競うことをやめないアスリート――羽生選手に、モチベーションをキープする秘訣を尋ねた。
「”多面性”を持っているからだと思います。表現であったり、スケーティング技術であったり、ジャンプもスピンもステップも、本当にいろいろな面がそろっている競技なので。もちろん、僕の大きな武器としてエレメンツ一つひとつの質が高いことや、技のつなぎにスキがないことなどがありますが、たとえばエッジワークが巧みな選手のスケーティングなど見習いたいと感じるし、それぞれに素晴らしい技術を持っていて学べることがたくさんある。だから、トップを走るつらさはありますが、全てにおいて追いかけられている気はしません。むしろ、ここはもっと追いかけたいとか、ここは負けていないなとか、そんなことを感じながら自分を成長させられると思うことに対して全力で取り組み、もっと上手くなりたい、進化したいという気持ちが続いているのだと思います」
続けて、平昌大会での抱負をさらっと口にする。

「『絶対金メダル獲るぞ!』という気持ちはあります。それは、どの大会でも優勝したいと思うし、いい演技がしたいというのと同じこと。4年に1度の試合も、毎年行われる試合も同じ”試合”なので、『絶対金メダルを獲りたい』と思っています」
そうインタビューを締めくくった羽生選手が退出する際、もう一つだけ質問を投げかけてみた。二つ目の金メダルを手にしたあとは?
「どうしよう? いくつでもほしいですよね!」
満面の笑みと爽やかな一陣の風とともに、彼は取材現場をあとにした。奇しくもこの日は台風が関東を襲い、外は強風がビルに吹き付ける散々な天候で家路を急ぐ人々の足を速めていたが、それはまるで「羽生旋風」が今季も巻き起こり、フィギュア界を席巻することを予言しているようだった。

プロフィール

羽生 結弦 - Yuzuru Hanyu -

男子フィギュアスケート選手

1994年仙台市生まれ。4歳からスケートを始め、
2010年世界ジュニア選手権に中学3年で出場して優勝。
ソチオリンピックでは日本人男子初となる金メダリストとなり、
2015年には世界歴代最高得点330.43点をマーク。
フィギュアスケート界を牽引する逸材として、冬季五輪連覇を狙う。ANA所属。

写真提供:ゲッティ/共同通信イメージズ

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