
そのダイレクトメールを受け取っていなかったら、パイロットへの道を選ぶことはなかったと思います。それまで、じぶんとは一切縁のない世界だと思っていた職業。じぶんとは最も遠いところにある仕事として、パイロットを考えていたからです。しかし、そのダイレクトメールには、応募には特別な技能や能力は必要なく、誰にも平等にチャンスがあると書かれている。テニスをずっと続けてきて、身体には自信がありましたから、チャレンジしてみようと思ったのです。実際、パイロットへの憧れをより強く感じるようになったのは、選考がはじまってからでした。選考の過程で、数人のパイロットとお会いする機会があったのですが、それぞれの話を聞いていて、その誰もが魅力的に感じられました。そうして徐々になりたい気持ちが高まっていき、その頂点で、採用の知らせを受け取れたのですから、いま振り返っても幸運に恵まれたと思います。 |
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入社後は、地上配置(福岡空港での旅客サービス業務)を経て、訓練に入りました。まず国内で学科を学び、事業用の国家資格を得てから、実技の訓練のために渡米します。それまでは、コックピットに入った経験さえないわけですから、基礎の基礎から行き届いた指導が行われます。そして教官の指導のもと飛行回数をこなすうちに、徐々に思うように機体が動いてくれる感覚を味わいながら、パイロットへの想いがますます強くなるのを感じていました。訓練では、一人で飛ぶこともありますが、訓練過程で最も大切なのは、チームワークだと思います。それぞれ得意・不得意があるのは自然なことで、みんなで目標に向かっていくためには、全員がじぶんの持っているものをすべて相手に与えながら、進んでいく必要があります。操縦技術を身につけると同時に、全員で乗り越えていこう、何とかしていこうという意識が学びました。 |
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現在、副操縦士としてコックピットに座るときに心がけているのは、じぶんが気づいたことは、何でも積極的に発信していこうということです。実際に操縦桿を握るのは、機長と副操縦士の2人ですが、航空機はパイロットだけで飛ばしているのではありません。客室乗務員をはじめ地上のスタッフなど多くの人たちの支えがなければ成り立ちません。それら全員がひとつのフライトに関する情報を共有し、意見交換をしながら、安全で快適なフライトを支えていく。だからこそ、自分の考えや気づいた点などを、相手に伝え合うことが重要だと考えています。同じ路線を運航していても、その度ごとに、あらゆる状況が異なります。それがこの仕事の尽きない魅力であると同時に、難しさであるのでしょう。多くの情報を自ら発信し、また客室や地上の状況に気を配りながら、ひとつのフライトをまとめあげていく力がパイロットには求められています。 |
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