
漂鳥咖啡 - Wandervogel café
止まり木に集う鳥たちのように。
プラットフォーム・カフェでひと休み

グラフィックデザイナーで文筆家のEveさんが「みんなが集まれるプラットフォームのような場所をつくろう」と始めた「漂鳥咖啡」。深夜まで営業しているので、仕事終わりや夕食後に立ち寄るファンも多いカフェです。
店名の「ワンダーフォーゲル」は、日本でも登山用語としておなじみですが、もとはドイツ語で「渡り鳥」という意味。Eveさんがひとりで切り盛りするこの店は、路地に面したカウンタースタイル。出版関係者やミュージシャン、デザイナーなどアーティストのほか、お隣りの食堂のおじさんや近所のひとたち、通りかかった旅行者も気軽にひと休みしていきます。
オーダーは、Eveさんにその日の気分を伝えてみて。濃いめですっきりしたい、酸味は苦手、あっさりしたもの、ミルクを使って…など要望に応じて、Eveさんがおすすめのコーヒーを淹れてくれます。基本的に英語と中国語対応ですが、Eveさん曰く「日本のお客さまとは身振り手振りや翻訳機を使ってコミュニケーションを楽しんでいるのよ」とのこと。
Eveさんおすすめ、人気のメニューを紹介してもらいましょう。

エスプレッソをペリエで割った、ほろ苦く爽やかな大人の味。暑い台湾の気候にもぴったりの1杯。

Bloody Roseは、Eveさんが好きなオルタナティブ・バンド「The Pretty Reckless」の曲からインスパイアされてつくったオリジナルブレンド。まるでワインのように魅惑的な香りです。

こちらもオリジナルテイストの「九崁風(Jiu Kan Wind)」(100元)。台北北部の港町・淡水の古い街並みをイメージして、インドや南アフリカなど5種類の豆をブレンドしたそうです。さっぱりしていながら深みのある味わいを、ストレートで楽しんで。

この笑顔で、カフェに集まる人たちを大らかに迎えてくれます。おすすめのコーヒーを気軽にたずねてみましょう。


この日も近所のレストランシェフがお店を開ける前のコーヒータイムを楽しんでいました。
夜の遅い時間、女性も安心して過ごせる漂鳥咖啡。小さなカウンターの止まり木に腰かけてコーヒーを楽しむ人たちは、店の名の通り、ふらりと羽を休めてとまる小鳥のようです。
- 漂鳥咖啡 - Wandervogel café
-
住所:台北市八德路二段346巷7弄42號
TEL:(886) 0933-090-084
営業時間:11:30~23:30/日曜休
アクセス:地下鉄MRT「南京復興」駅または「忠孝復興」駅から徒歩約10分
URL:https://www.facebook.com/WandervogelCafe
元益與寶來 – Baolai Coffee
漢方薬局の二代目がアプローチする
新世代の漢方コーヒーとスイーツ

台北市内から地下鉄で約30分、新北市新荘にある「元益與寶來(Baolai Coffee)」は、漢方薬局に併設するカフェ。お父さんが長年営んできたお店で、「漢方を、次の世代に新たなアプローチしよう」と3きょうだいが試行錯誤してオープンしました。
台湾料理ではおなじみのスパイスにもなる漢方をコーヒーにブレンドした「八角ラテ」や「花椒(ホァジャオ)オーレ」など、めずらしいテイストが看板メニュー。ただ漢方を使うだけではなく、コーヒーの味を引き立てるおいしさを追求して、開発まで1年近く研究と試行錯誤を続けたそうです。
「花椒」はミカン科サンショウ属の、四川料理に欠かせないスパイスとして有名です。本場の麻婆豆腐のしびれるようなうまみと香りは、この花椒が引き立てるものなのだとか。

小さな赤い花が咲いているように見えるので、花椒と呼ばれるのだとか。かわいい見た目でスパイシーなのも魅力的です。

テイクアウトできる各種漢方アイスオーレ(700ml)は160元。ミルクたっぷりのまろやかで濃いカフェオレに花椒のスパイスがほのかに香る、絶妙なブレンドがたまりません。

八角ラテ(90元)はスチームミルクにスパイシーなパウダーがほどよく溶け合い、くせになりそう。味わいながらいただくと体がとても温まりました。
コーヒーのほか、健康や美容に効果が期待できるオリジナル漢方スイーツも人気メニュー。手づくり、無添加でおいしく食べられるので、老若男女問わずよく注文が出るそうです。

ハトムギ、ハスの実、きくらげなど、美白にいいとされる漢方を使ったミルクのゼリー。オレンジゼリーと二層で、さっぱりさわやか。ほのかな甘みとハスの実の歯ごたえが楽しめる台湾ならではの漢方スイーツです。

台湾はさつまいもの産地。漢方用のニンジンとともに甘く煮詰めた、体にも心にもやさしくしみる贅沢なおやつです。

台湾のコンビニには必ずあるといっていいほど、台湾で身近な「煮たまご」。寶來では肉桂やコーヒー豆、羅漢果などで煮込んでいます。くせがなく食べやすいので、小腹が減ったときのタンパク質補給に。
3きょうだいがアイデアを出し、力を合わせて両親の店を新たな形で受け継いでいる「元益與寶來」。この日案内をしてくれた張惠雯(チョウ・ケイウン)さん、弟さんも日本に留学経験があるので、日本語対応も問題ありません。店舗では漢方の小売りもしているので、気軽に相談してみましょう。

張さんは、走ることが好きで2019年東京マラソンにも参加したとのこと。「日本のボランティアや沿道で応援してくれる方たちが励ましてくれたから、頑張れました」とうれしそうに話していました。
- 元益與寶來 – Baolai Coffee
-
住所:新北市新莊區新莊區建安街121巷30號
TEL:(886) 02-2205-9903
営業時間:8:00~21:00/無休
アクセス:地下鉄MRT「丹鳳」駅から徒歩約10分
URL:https://www.facebook.com/baolaicoffee/
藏田咖啡豆專賣
希少な台湾産コーヒー豆を
ローストの腕に、よりをかけて届けたい

カフェの多い台湾でも、コーヒー豆専門店はまだ珍しい存在です。「藏田咖啡豆專賣」は、「コーヒーが好き過ぎて台湾のコーヒー農園にこもっている」オーナーが永康街でオープンしたお店。ケニアやインド、アフリカの豆はもちろん、希少な台湾産コーヒー豆を揃えています。
「阿里山コーヒー」は台湾産コーヒーとして有名ですが、土産店などで売られているものは少量で値段が高く、味のレベルも低いものが少なくありません。アフリカやケニアに比べて台湾産の価格が高いのは、人件費によるもの。しかし輸入ものと異なる台湾産コーヒー豆の利点は、殻付きの新鮮な豆を品質よく手に入れられることです。


店名の「藏田」は、「良質のものをたくさんしまってある場所」という意味。オーナーが各地から探し出してきたコーヒー豆が揃っています。
「いい豆をおいしくするのは、ロースターの腕次第です」
藏田咖啡豆専賣でロースター(焙煎士)を務める梁さんは、穏やかに語ってくれました。


一見クールに見えるロースターの梁さんですが、コーヒーの話を始めるととてもにこやかで饒舌に。選んだ豆をつめる袋に商品名を手書きしてくれます。「酸味の少ないものを」とリクエストすると「深煎りがいいんじゃないかな」台湾南部、マンゴーの産地としても知られる屏東の豆(100g450元)を選んでくれました。


台湾のコーヒー豆農家では、自社でうまくローストができず、希少さと品質、価格と味がアンバランスになってしまうこともあるのだそう。藏田咖啡豆專賣では、真面目にコーヒー豆づくりに取り組む農園をサポートしながら、台湾コーヒーの発展に尽力を続けています。
- 藏田咖啡豆專賣
-
住所:台北市大安區永康街91號1樓
TEL:(886)02-2392-7770
営業時間:14:00~21:00/無休
アクセス:地下鉄MRT「東門」駅から徒歩約8分
URL:https://www.facebook.com/藏田咖啡豆專賣-114619232020401/
Ruins Coffee Roasters
廃墟を蘇らせた秘密基地。
店もスイーツも手づくりのカフェ

台北市内から電車で約20分の「木柵」は、台北市立動物園や「猫空」へのアクセス口になる、緑の多いエリアです。さらに駅から歩いて10分ほどの川沿いにある「Ruins Coffee Roasters」は、うっかりしたら見落としてしまうかもしれないガラスのドアの向こうに、秘密基地のような空間が広がります。
ここは元々、台北アリーナに近くにあったカフェ「Café Junkies」の焙煎所でした。当初は平日をロースター、週末のみカフェとして運営していましたが、「Junkies」が惜しまれつつ閉店した後、営業を開始。店名の「Ruins」が廃墟を意味する通り、この場所は20年近く放置された倉庫のような場所だったのだとか。

焙煎所を探していたオーナーのWill Hungさんは、この場所を紹介され、約半年かけて自分たちの手でリノベーションしました。男子好みの工業系、古い木を再生してつくったカウンターやテーブルや椅子は不揃いだけれど、この空間に収まると秘密基地のような遊び心とぬくもりが感じられます。

空間のめずらしさだけでは、リピートするファンをつかむことはできません。Ruins Coffee Roastersの魅力はそのメニューにも。同店ならではの手づくり素材メニュー、台湾の人たちに人気のコーヒーを紹介してもらいましょう。

台湾で人気のレモンコーヒー。手づくりハニーレモンにエスプレッソを加え、酸味と苦味を蜂蜜のやさしい甘さが包む

台北の郊外、駅から徒歩10分と決して便利な場所ではない、ふらりと立ち寄るには少し遠い場所にもかかわらず、平日も週末も多くの客が訪れるRuins Coffee Roasters。「台湾は狭いからいつも同じ場所では飽きるし、ちょっと遠出してみたくなるんじゃないかな」人気の秘密をたずねると、Willさんは飄々と答えてくれました。

現在の役割をたずねると、「ロースター、ミュージシャン、大工、雑用係」と笑ったオーナーのWill Hungさん。東京・代官山のTSUTAYAで、台湾人アーティストとして初めてライブを行った「STAY COOL」のボーカル&ギタリストでもあります。Willさんのお姉さんCharleneさんはスイーツを担当。彼女は日本語も話せるので、お店で会えたら気軽におすすめをたずねてみましょう。
Ruinsにふらりと現れた保護猫「Nori」とNoriの子どもたちの日常をつづるインスタグラム@norifamilyもチェックしてみて。
「自己流で適当につくっているだけ」と謙遜するCharleneさん。おいしい手づくりケーキもRuins Coffee Roastersの人気メニュー。カウンターに並んでいるとシンプルに見えるけれど、テーブルに届けられるときにはフルーツやアイスクリーム、自家製ジャムなどを添えて大変身。女子も男子も笑顔で思わず歓声をあげてしまいます。何度も試作してはスタッフたちと試食を繰り返し、相談しながらメニューに加えているのだとか。

アイスクリームを添えて提供される「苺仁愛」(150元)。添えられたベリージャムもCharleneさんのお手製です。

ほどよいボリューム、甘さ控えめで大人気のメニュー

手づくりの空間とコーヒーにケーキ、そして音楽と、さりげないこだわりから生まれる心地よさ。離れた場所でも多くの人がRuins Coffee Roastersにやってくる理由を、この秘密基地の中で見つけてみましょう。
- Ruins Coffee Roasters
-
住所:台北市木柵路三段242號
営業時間:13:00~21:00/月曜休
アクセス: 地下鉄MRT「木柵」駅から徒歩約10分
URL:https://www.facebook.com/RuinsCoffeeRoasters/
日本と同様に仕事や勉強に忙しく暮らす台北の人々は、穏やかなひとときを持つことを、とても大切にしています。心を込めて淹れられたコーヒーとともに、おしゃべりをしたり、本を読んだり、音楽を聴いたり、ぼんやりしたり…。オーナーの愛情に満ちたカフェで過ごす時間は、台湾の人々のやさしさや笑顔を支えているのかもしれません。次の台湾の旅行では、そんな彼らと同じ空間で楽しむカフェタイムを過ごしてみませんか。
- 記載の内容は2019年6月現在のもので、変更となることがあります。
- 1台湾ドル約3.44円(2019年6月現在)