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犬が撫でられたくない時・撫でてもらいたい時

一言に犬といっても犬種の特性や個性があるため、「どんな人にでも撫でてもらいたい」と思う犬もいれば、「飼い主さんだけにしか撫でられたくない」と思う犬もいます。
また、普段から撫でられたり触られたりすることが好きだと思っている犬でも、「今はちょっと…」と好まない時があります。
例えば、ご飯を食べている時や眠っている時など。
犬によっては食事中に手を出すことで、「ご飯を取られるかもしれない」と思い急いで飲み込んでしまったり、ご飯を守ろうと唸ることもあります。
また、寝ている時も過度に撫でられたり触られると犬は安心して休むことが出来ないため、唸ったり噛みついたりといった抵抗をすることもあります。
一方、犬が撫でられたり触られることを好む時は、犬が「撫でて!」と寄ってくる時です。
寝起きやお留守番の後など、飼い主さんとしばらく離れて寂しい思いをしたあとは、積極的に触れ合ったり触られることを望んでいます。
また、飼い主さんがリラックスしている時に、ひざの上などに乗ってきて、撫でられることをリクエストしてくる犬もいます。
このように犬が自ら撫でられたり触られることを好むようなしぐさが見られた時は、優しくたくさん撫でてあげ、「もういいよ。ありがとう。」と離れていったらいったん終了しましょう。
麻布大学で行われた研究では、飼い主が犬にマッサージ(撫でるなどのスキンシップ)を行うと、犬の体内で幸せホルモンとして有名な「オキシトシン」が上昇することがわかっています。
しかし、犬が望んでいない時に人の都合で「無理に撫でる」ことは、幸せに感じるどころかストレスに感じてしまいます。
人と同じように、犬も状況によっては触られたり撫でられたりすることを好ましくないと感じるため、愛犬が今どんな気持ちでいるかを察し、愛犬に余計なストレスを与えないようにしましょう。
犬に不安や不快な思いをさせないように接してあげれば、咬傷トラブルなどを防ぐことに繋がり、飼い主さんと犬の絆も深まっていきます。
犬が撫でられて嬉しい場所と注意点

犬が撫でて欲しくて自ら近づいてきた場合も、ただ撫でてあげれば喜ぶか、というとそうではありません。
犬が撫でて欲しい場所・撫でられると心地いい場所は次の通りです
【犬が撫でられたい場所】
-
耳の後ろ
- 首周り
- 背中
- 身体の横
- 顎の下 など
撫でられたら嬉しい場所であっても、撫で方には注意が必要です。
犬は100センチより近い距離にはっきりと焦点を合わせることが出来ないため、あまり近い位置で激しく手を動かされると不安に感じてしまいます。
そのため、顔の周りをワシャワシャと激しく撫でることはやめましょう。
また、犬は上から覆いかぶさられるような人の動きにも不安を感じます。
そのため、立った状態で前かがみになって犬の頭の上から手を出すことはせず、座ったりしゃがんだりして姿勢を低くし、撫でる手も上からではなく下からゆっくり出して、毛並みにそって優しく撫でてあげましょう。
犬が撫でられたくない場所とポイント

犬にとって撫でられて嬉しい場所があるように、あまり撫でられたくない(触られたくない)場所もあります。
一般的に犬が撫でられるのを好まない場所は次の通りです。
【撫でられたくない(触られたくない)場所】
-
足(特に足先や指の間の水かき部分)
- お腹
- 尻尾
- 目の周り
- 口周り(口の中)
- 耳の中
撫でられたくない場所というのは、犬に限らずその動物にとって弱い部分(急所)や神経が密集している敏感なところです。
そのため、犬自身がリラックスして、自らお腹を出して撫でて欲しいとアピールする時以外は、撫でられることを嫌います。

しかし、上にあげたような場所は、トリミングサロンや病院などのケアや健康チェック時にはどうしても触られる場所です。
そのため、日ごろから触られることに慣らしていないと、いざ触らなくてはいけなくなった時に強いストレスを感じたり、場合によっては噛み付いて逃れようとすることも。
犬にとって本来は触られたくない場所を理解したうえで、子犬の頃から触られることに慣らすトレーニングをしておくことが大切です。
初対面の人から撫でられる時の注意点

来客や散歩中、新しい人と出会うこともあります。
そんな時、1番大切なことは「愛犬の気持ちを汲んであげる」ことです。
間違った対応をしてしまうと、犬にストレスがかかるだけでなく、相手に怪我をさせてしまうこともあります。
犬は恐怖や興奮(喜び・警戒)している時や、突然の出来事に驚いた時には予期せぬ行動をすることがあります。
吠え、噛み付き、唸る、飛びつき、パニックになるなど、場合によってはそういった犬の行動によって事故や怪我が発生してしまいます。
最悪の場合、損害賠償責任を求められることも。
そうならないためにも、気を付けるべきポイントを抑えて愛犬に嫌な思いをさせないようにしましょう。
【気を付けるポイント】

1.「愛犬の性格を理解する」
犬によって性格は違います。
人が好きな犬もいれば、苦手な犬もいます。
人が苦手な犬にとって、初対面の人から撫でられる(触られる)というのはとても怖い状況で、些細な出来事でもさらに人嫌いになってしまうことがあります。
2.「ボディーランゲージを読み取る」
ボディーランゲージというのは、非言語コミュニケーションのこと。
犬の身体の動きから気持ちを読み取ります。
尻尾や耳、姿勢でその他、目や息づかいなどからも読み取ることができます。
初対面の人を目の前にして、尻尾が下がっていたり、耳が後ろに倒れていたりする場合は恐怖や緊張を感じている状態ですので、無理強いすることは避けましょう。
また、「尻尾を振っているから喜んでいる」と決めつけるのは危険です。
犬は興奮している時に尻尾を振るので、嬉しいときだけでなく、警戒して興奮している時にも尻尾を振ります。
そんな時に、知らない人が急に触ろうとすると、びっくりして相手を噛んでしまうこともあります。
3.「相手の人に接し方を伝える」
初対面の人に愛犬を触ってもらう時には、犬に恐怖心や不安感を抱かせないように触り方を伝えてあげましょう。
犬の目を見つめないようにしながら姿勢を低くし、手を犬の顔より下の位置からゆっくり出してもらいましょう。
手を犬の前に出したところで、犬から匂いを嗅ぎに行ったり、特に気にしないようなら優しく撫でてもらいましょう。
しかし、手を出された時に不安や緊張を示すボディーランゲージが見られたり、その場から逃げるようしぐさが見られたら無理に触ってもらわず、相手の人に「怖がっているみたいなのですみません。」と伝えることも必要です。
4.「突然触ろうとしてくる人に要注意」
散歩中、子供など突然犬に駆け寄って触ろうとしてくることもあります。
子供が苦手な犬は多いですし、子供でなくても突然知らない人から触られることで驚いて反射的に防衛行動をとってしまうこともあるため注意が必要です。
予測できる場合には、距離をとって歩いたり道を変えて回避してあげましょう。
とっさの時には、飼い主さんが愛犬とその人との間に立ったり、抱き上げるなどして愛犬を守ってあげてください。
犬種による特徴
人から撫でられることに対して好きか嫌いかというのは、犬の性格やその時の気分、また犬種の特性によっても違いが生じます。
いわゆる「ペット」として品種改良されてきた、トイ・プードルやヨークシャーテリア、マルチーズなどは「人のそばにいたい」といった愛着欲求が高いため、撫でられることが好きな子が多いです。
反対に、柴犬や秋田犬、ハスキーなど遺伝子的にオオカミに近い犬種は警戒心が強いため、あまり人から触れられることを好まない傾向があります。
また、コーギーやシェパード、ビーグルなど使役犬として身体能力を重視されて改良されてきた犬種というのは、撫でられるよりも体を使って人と何かのやり取りをすることを好む傾向があります。
まとめ

犬と人は触れ合うことで相互に良い影響をもたらしますが、それはお互いの気持ちが一致した時です。
一方的に気持ちを押し付けてしまうのは、人間社会でもよく思われないですよね。
「飼い主さんに撫でられるのは好き、でも知らない人は嫌」「首周りや背中を撫でられるのは好きだけれど、足先や口の中は触られたくない」など、愛犬の性格をよく知り、今はどんな状態(気分でいるのか)なのかをしっかりと見てあげましょう。
そして、必要があれば触られることに慣らしてあげたり、時には犬の気持ちを尊重して触りたくても触らないでそっとしてあげる我慢の気持ちも大切になります。