
そもそも、グルーミングとは?なぜ必要なの?

皆さん、はじめまして!
グルーミングサロン「Dog-Salon Groom」代表の竹島将之です。
今回から全6回に分けて、自宅でできるグルーミングの基本ノウハウをお伝えします。
日本では動物の身体のケアというと「トリミング」という言葉が一般的に使われているので、「グルーミングって何?」と思われる方も多いかもしれませんが、本来、「トリミング」とは「動物の毛を刈って整える行為」のみを意味する言葉。
一方、グルーミングとは、シャンプー・トリミング・皮膚や被毛のチェック・体調チェックなど、動物の身体のお手入れ全般を指す言葉で、海外ではグルーミングの方が、一般的に使われています。
グルーミングは主に、
- 健康管理
- 愛犬との信頼関係の構築
- 身だしなみ
の3つを目的に行います。
【グルーミングの目的】

-
健康管理
グルーミングで愛犬の体をくまなく触ることによって、体調の変化や体重の増減などに気づきやすくなり、結果として病気の予防や早期発見に繋がります。 -
愛犬との信頼関係の構築
グルーミングを通じて触れ合うことで、愛犬とのコミュニケーションが深まり、信頼関係が構築されます。しつけの一環として、グルーミングの時間を活用することもできます。 -
身だしなみ
シャンプーやカットで愛犬の毛や体を清潔に保ち、外見の美しさを引き出します。
ブラッシングの目的とは?

グルーミングは通常、専門のサロンで私たち「グルーマー」と呼ばれるプロの手によって行われますが、ブラッシングや皮膚のチェックなど基本的なケアは、正しい方法さえ学べば飼い主さん自身がご家庭で日常的に行うこともできます。
今回ご紹介するブラッシングは、グルーミングの基本中の基本とも言えるケアです。
ぜひ適切な方法をマスターして、毎日、愛犬の被毛をブラッシングしてあげましょう。
ブラッシングの目的は大きく分けて、
- 被毛の汚れを取り除く
- 被毛の絡まり・毛玉をふせぐ
- スキンシップ
です。
被毛の汚れや毛玉は、見た目の美しさを損なうだけでなく、放置しておくと痒みや炎症など皮膚トラブルの原因にもなってしまいます。
また、ブラッシングは皮膚へのマッサージにもなり、コームやブラシによる程良い刺激が血流を促進し、新陳代謝を促す効果も期待できます。
家庭でも毎日ブラッシングをする習慣をつけておき、災害時や飼い主さんが体調を壊したときなど、通常どおりのペースでサロンに行けない場合にも、愛犬の健康や身だしなみの管理ができるようにしておきましょう。
まずはブラッシングに必要なツールを揃えよう!
愛犬のブラッシングには、必ず犬専用のツール使いましょう。
犬種や毛の状態によって必要なツールは異なりますが、ここでは必ず揃えておきたいツールを4つ、ご紹介します。
②と③はサイズが合わないもの・愛犬の毛質に合わないものを使うと、思わぬ怪我やトラブルに繋がってしまうおそれがあるので、できればサロン等でグルーマーに相談して選ぶようにしてください。

下段右から:スリッカーブラシ、コーム、豚毛ブラシ、ピンブラシ
① グルーミング・スプレー(ブラッシング・スプレー)
【目的】
ブラッシング前にスプレーすることによって、コームやブラシの通りをなめらかにし、静電気や切れ毛の予防に。
【選び方のポイント】
アロマオイルや栄養成分を配合したものなど、さまざまな商品が出回っていますが、添加物が少ないシンプルなものを選びましょう。
特に、香りが強いものは避けたほうが無難です。
② コーム
【特徴】
金属製で、櫛目が一直線に並んでおり、目の粗い部分と細かい部分とに分かれています。
【目的】
毛の流れを整えたり、毛玉の有無をチェックしたりするのに使います。
【選び方のポイント】
- 金属製で、櫛目が一直線に並んでおり、目の粗い部分と細かい部分とに分かれているものを選びましょう。
- 柄のあるタイプもありますが、ついていないタイプの方が使い勝手がよく、おすすめです。
③ スリッカーブラシ
【特徴】
長方形の土台の表面に金属製のピンが付いているブラシです。
ピンの先端が針状になっているタイプと球状になっているタイプのものがあります。
【目的】
被毛に絡まった異物を取り除き、毛の流れを整えます。
【選び方のポイント】
- ピンがまっすぐに付いているものよりも斜めに付いているもののほうが、異物を掻き取りやすいので、おすすめです。
- ピンの数が多く、ピンの密度が高いものを選びましょう。
- サイズはメーカーによってS・M・Lもしくは小型犬用・中型犬用・大型犬用などに分かれていますので、その基準に従って選びます。
広い面積の部分を効率よくブラッシングするには、犬種にかかわらず、標準サイズのものを選ぶのがおすすめです。
④ 特別なご褒美(おやつなど)
ブラッシングの際にはコームやブラシだけでなく、ご褒美として愛犬が大好きなフードやおやつをあげるとより良いですね。
こうすることで愛犬にブラッシング=楽しい・嬉しい時間と認識させることができるため、嫌がったり怖がったりせずにブラッシングができるようになるでしょう。
上記の①~④を揃えたら、あとは犬種や被毛の状態に応じて、必要なアイテムを揃えるとよいでしょう。
例えば、ヨークシャーテリアやシーズーなどの長毛種なら被毛にダメージを与えずに整えやすい「ピンブラシ」を、イタリアン・グレイハウンドやラブラドールなどの短毛種には毛並みを揃えて艶を出す「豚毛ブラシ」などがおすすめです。
ただし、日常的に家庭で行うブラッシングは基本が抑えられていればOK。
基本のアイテムのみでも、毎日継続してお手入れを続けることが大切です。
基本的なブラッシング法
続いて、基本的なブラッシングの方法についてご説明します。
コームやブラシの持ち方や扱い方も併せて確認し、愛犬に怪我をさせてしまわないように注意しましょう。
【STEP①】場所を決める

家庭でもこのくらいの面積の台やシートを使ってグルーミングを
できれば、ブラッシングは場所を決めて行うとスムーズです。
おすすめは、テーブルなど少し高さのあるものの上に載せて行うこと。
愛犬は高いところに載ると緊張して動きが制限されるので、特に少々やんちゃで動き回ってしまうタイプの愛犬やブラッシングを嫌がって逃げてしまいがちな愛犬に有効です。
また、ブラッシング専用のビニールシートやマットを決めて、毎回その上で行うと、習慣化しやすいでしょう。
【STEP②】ブラッシング・スプレーをかける

ブラッシングを始める前に、ブラッシング・スプレーをかけます。
愛犬の体に直接振りかけるのではなく、身体の数十cm上の空間にスプレーし、霧状になったスプレーが体に落ちてくるようにして使うのがポイントです。
この一手間でブラッシングしやすくなり、仕上がりがぐっと美しくなります。
【STEP③】 スリッカーブラシで全体をブラッシングする(超短毛種以外)

まずは、スリッカーブラシで全身をざっくりと梳かし、毛に絡まった異物を取り除きます。
愛犬の被毛は、概ね首から足に向かって流れているので、その流れに沿って梳かしていきます。
毛の流れと逆の向きにブラシのピンを当ててしまうと、愛犬が怪我をしてしまうおそれがあるので、くれぐれも注意してください。
なお、超短毛種は【STEP①】を省略して【STEP②】に進んでもOKです。

なお、スリッカーブラシは親指と人差し指、中指で鉛筆を持つときのように、軽く持って使いましょう。
強くつかんでブラッシングしてしまうと、ピン先に圧力が加わり過ぎて、皮膚を傷つけてしまうおそれがあります。

<POINT> 家庭でのブラッシングは「目に見える場所」だけでOK
上述のとおり、スリッカーブラシは使い方によっては愛犬の皮膚を傷つけてしまうおそれがあります。
特にお腹は背面に比べて被毛が薄く、オス・メスともに乳首があるのでブラシの当て方によっては傷がつきやすいので注意が必要です。
しかも、愛犬が仰向けになってお腹を見せてくれない場合は、お腹の皮膚の状態を飼い主さんが目で確認するのは至難の業。
仮にお腹の皮膚に傷や腫れがあった場合、気づかずにブラシを当ててしまい、出血や化膿の原因になってしまうおそれもあります。
家庭では目で確認できない箇所のブラッシングは避けるようにしてください。
【STEP④】コームで全体を梳かす


スリッカーブラシでざっくりとブラッシングが終わったら、コームを使って全体を梳かし、抜けた毛などを取り除きます。
この際、コームを直角に皮膚に当てず、斜めに角度をつけて梳かすようにするのがポイントです。
【STEP⑤】コーム又はスリッカーブラシで毛玉の有無をチェックする

次に少しずつ毛束を取り分けて、毛束単位で毛の絡まりを解消していきます。
短毛種はコームの細かい櫛目の方を使って、長毛種はコームの細かい櫛目またはスリッカーブラシを使用しましょう。
<POINT> 毛玉は無理に切り取らないほうがベター
固くなってしまった毛玉は無理に取ろうとして引っ張ると愛犬が痛がってしまいますし、毛玉を切り取るとトリミング(カット)のバランスが崩れてしまうおそれも。
できてしまった毛玉は無理に取ろうとせず、次回のグルーミング時にグルーマーに対応してもらうことをおすすめします。
【STEP⑥】コームで全体を整える

最後にコームで抜け毛を取り払い、全体の流れを整えて、ブラッシング完了。
必要に応じて上述のピンブラシや豚毛ブラシでのケアを追加しても良いでしょう。
ブラッシングが終わったら、愛犬にご褒美をあげるのを忘れずに!

ブラッシングは、愛犬とのコミュニケーション

以上、基本的なブラッシングの方法を紹介しました。
犬種やサイズにもよりますが、概ね10分~20分ほどで終わらせられるはずです。時間がない日は、短縮しても問題ありません。
短時間でも1日1度はブラッシングして愛犬の身体の状態を確認しつつ、スキンシップを楽しむ時間を取ってあげましょう。
ブラッシングに限らず、何事も義務感から「やらなくてはならない」という気持ちで臨むと、楽しくないですし、長続きしませんよね。
そもそも定期的にサロンに通っているのなら、飼い主さんが「完璧なブラッシング」をする必要はありません。
難しく考えすぎず、愛犬とのコミュニケーションの一環として楽しみながら、リラックスした気持ちで取り組んでみてください。
さいごに
またサロンに行けない時は、手軽で簡単なおうちトリミングもおすすめです。
おうちでできるといつも清潔にできそうですね。
下記、UP LIFEの記事でも紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
忙しくてなかなか愛犬をトリミングサロンにつれていけない、愛犬が臆病な性格だからサロンに預けるのが心配…。そんなとき、自宅でトリミングができたら便利ですよね。そこで今回は獣医師の箱崎加奈子先生にトリミングの意義を、トリマーの根本裕介さんに自宅でトリミングをする際のコツやポイントを教えていただきました。

次回は、顔や耳のブラッシングの方法とコツについて解説します。