ANA Inspiration of Japan

好奇心を刺激する、旅と日常にまつわるWebマガジンライフスタイルマガジン ANA Travel & Life (トラベル アンド ライフ)

飛行機に詩を乗せて。
詩人 菅原敏の東ヨーロッパ・ロシア朗読紀行。

2017.09.21ANAオリジナル

花

『ワルシャワ』

ピアノを弾くほど雨が降り

ドーナツの中にバラのジャム

公園の柵の向こうに

おびただしいほど戦車が並ぶ鉛色

「挨拶がわりに文句を言うのが私たちの特徴なのよ」

と話すこの国の人々は

レストランで花束を持っていると

そっと花瓶にさしてくれる

おばあさんの腕に どでかい蛇のいれずみ


雨が降るほどピアノが響き

コニャック漬けの瓶詰めにされた

ショパンの心臓は

教会の柱に埋め込まれながら

今も時々脈打っている

雨が止んでも娼婦たちは真っ赤な傘で

「私の傘に入りなさいな」と囁き続け

中央駅の石畳に こつこつと

ヒールのかかとで時間を刻む

_2017/6/26

夜のワルシャワ

朗読公演を終えて夜のワルシャワを友人のピアニストと歩く。パリで客死したショパンは「心臓だけでも祖国ポーランドへ運んで欲しい」と遺言を残し、今も聖十字架教会の柱の中に安置されている。きっとこの街に暮らさなければ生まれてこない音があるんだろうね。

十字架の丘

エストニア、ラトビアを巡り、リトアニアのシャウレイへ。「十字架の丘」にて何千何万の祈りの中をすりぬける。ソ連時代、何度ブルドーザーで撤去されそうになっても皆静かに丘を登り十字架を突き刺してきたそう。

クルシュー砂洲

リトアニア、バルト海にほど近い小さな町・ニダ。ここにはかつて作家トーマス・マンが“北のサハラ”と呼び愛したクルシュー砂洲がある。この荒涼とした砂地は現在世界遺産に認定されているらしい。小さな砂漠に降りしきる霧雨。