館内に美術品が展示されていたり、客室そのものがアートで彩られていたりするアートホテル。美術館に泊まる気分でホテルライフを過ごせるなんて、素敵ですよね。そんな“旅×アート”体験ができる全国のホテルをご紹介します。

Text by
Nozomi Okamoto(verb)

板室温泉 大黒屋(栃木県)

“保養とアートの宿”をコンセプトに、美術作品を展示している老舗の温泉旅館「大黒屋」。創業は469年と古く、室町時代から続く建物には、侘び寂びに通じるそぎ落とされた美しさと落ち着きがあります。そこへ現代美術を中心としたアートが見事に融合し、新たな世界観を感じることができます。

敷地内には、現代美術家・菅木志雄氏の「倉庫美術館」や若手作家の作品が展示された「しえんギャラリー」、月替わり展示が行われるサロンがあります。そのほか、館内や客室にも美術作品が展示され、滞在中はアートを存分に感じることができます。

「菅木志雄 倉庫美術館」。毎日朝10時から1時間だけ開館(料金500円)。※予約制
「菅木志雄 倉庫美術館」。毎日朝10時から1時間だけ開館(料金500円)。※予約制

大黒屋のアート展示の1つが「菅木志雄 倉庫美術館」。菅木志雄氏は、石や鉄板、ガラス、電球などを使った「もの派」の中心メンバーとして活動する現代美術家。自然界の物質と工業的な物質の出会いをアートして表現しています。

大黒屋と菅木志雄氏の付き合いは、1991年に庭の制作・展示を開催したのが縁。その後、定期的に展覧会が開催され、2008年に常設展示のスペースとして倉庫美術館が開館しました。まとめて菅氏の作品が集められた倉の意味を込めて、この名前に。1980年代から現在までおよそ300点以上の作品が展示されています。

サロンでの月替わりの展示
サロンでの月替わりの展示

サロンでは、月替わりでいろいろな作家の展示が行われています。ジャンルは絵画、器、オブジェなどさまざま。大黒屋のコレクションがまとめて展示されることもあるそう。

松の館の客室
松の館の客室

客室は、梅の館、竹の館、松の館に分かれています。いずれも南向きで、十分に陽射しを取り入れられるよう設計されています。窓も大きく取られていて、まぶしい光と緑が感じられる温かで静かな雰囲気。客室にもアート作品がさりげなく配されています。非日常感がありながら、ゆったりとくつろげる空間です。

板室温泉 大黒屋
住所:栃木県那須塩原市板室856
電話番号:0287-69-0226
宿泊料:1泊2食付き(2名一室利用の場合)1名20,000円~(税・サ別)
URL:http://www.itamuro-daikokuya.com/

パークホテル東京(東京都)

東京・汐留にあるパークホテル東京は、客室はもちろん、フロント周りや客室フロアの回廊などでも展示された作品を見ながらアート散歩ができるホテル。まるで美術館でアート鑑賞するような気分でホテルライフを楽しむことができます。

アート体験は、フロントと同じ25階にあるアトリウムからスタート。都内最大級の吹き抜けがある広い空間は、昼はパワースポットのような心地よさ。さらに夜は窓から見える東京タワーや都心の夜景が、まるで幻想的な絵画のようです。ここでは、アート作品の展示やイベントが行われ、展示会「アートカラーズ」開催中はそのアーティストの映像作品が壁面に映し出されます。

夜はレストランでも、展示作品に合わせたオリジナルのカクテルやデザートを提供。料理をのせる茶器や器にも、ホテルオリジナルの作家コラボレーション作品が使われています。

回廊展示コリドーギャラリーの様子
回廊展示コリドーギャラリーの様子

パークホテル東京のアートのコンセプトは、「日本の美意識が体感できる時空間」。アートを通して日本のよさや文化が感じられるよう展示が行われています。

その1つが、客室回廊「コリドーギャラリー」での展示。すべての人にアートを身近に感じてもらいたいと、30階から34階すべての回廊にアートが展示されています。

アーティストルーム歌舞伎
アーティストルーム歌舞伎

客室にもアートのこだわりが随所に表現されています。お部屋ごとに統一されたアクセントカラーを配したファブリック類が使われ、ぐっすりと眠れる空間に整えられています。

その中でも、31階は客室すべてがアーティストルームになっており、客室そのものがアートに。アーティストが壁に絵を描き、部屋をプロデュースした贅沢な空間になっています。それぞれダイナミックに日本の美意識が表現され、自分もアートの一部になったような気持ちになれるでしょう。

アーティストルーム桜
アーティストルーム桜
パークホテル東京
住所:東京都港区東新橋1-7-1汐留メディアタワー
電話番号:03-6252-1111
宿泊:1泊(2名一室利用の場合)1名20,000円~(税・サ別)
URL:https://parkhoteltokyo.com/ja/

KUMU金沢 by THE SHARE HOTELS(石川県)

ホテル名の「KUMU」とは、金沢の伝統を“汲む”場所という意味。禅や茶の湯の武家文化が色濃く残る金沢の文化を、未来につなげるサロンのようなホテルとして誕生しました。街に開かれたホテルのロビースペースは、工芸作家やアーティスト、茶人、住職とシェアし、新しいコンテンツを展開。ホテルが、土地をアップデートできる存在でありたいというコンセプトのもと、作り上げられています

広々としたロビーは、ゲストと地元の人、アーティストが集う場所。地域に根ざしたプレイヤーが発信できるよう、イベントが展開され、文化が生まれる場所として機能しています。ゲストは旅のアクセントとして、そうした地域の空気を感じることができるのも魅力のひとつです。

各階にはアートの工芸作品が展示されている
各階にはアートの工芸作品が展示されている

お茶がゆっくりいただける「ティーテーブル」は、3階と5階の2カ所に設けられ、くつろぎのひとときをおくることができます。ここでは他の旅行者と交流したり、パソコンを広げて仕事をしたり、ゲストは自由に使うことができます。

ジャパニーズスタイルのジュニアスイート客室
ジャパニーズスタイルのジュニアスイート客室

客室は、ロースタイルのベッドが置かれたジャパニーズスタイルと、通常のベッドが置かれたウエスタンスタイルに分かれています。ほかに2段ベッドやロフト付きで4人が泊まれる客室も。いずれもすっきりとしたモダンでシンプルなデザインとなっています。どちらのお部屋も最大4名様まで泊まれます。

KUMU金沢 by THE SHRE HOTELS
住所:石川県金沢市上堤町2-40
電話番号:076-282-9600
宿泊:1泊(2名一室利用の場合)1名7,800円~(税・サ別)
URL:https://www.thesharehotels.com/kumu/

ホテルアンテルーム京都(京都府)

京都駅の南側に建つ「ホテルアンテルーム京都」は、2011年に学生寮をコンバージョンして生まれました。2016年にはリニューアルしてホテル&アパートメントとして増床。アート&カルチャーに和をプラスしたコンセプトで、変わりゆく「京都の今」を発信しています。

ホテル内では「ギャラリー9.5」での企画展のほか、ショップでもクリエイター達の意欲作を展示販売。アート作品に囲まれたバーラウンジでは、旅で磨いた感性をさらに高められるような時間を過ごすことができます。また、客室の共有部などホテルの至るところに、90以上のアート作品が展示され、購入することもできます。

客室は、アーティストの友人の家に泊まるような居心地の良さをテーマに、シンプルで飽きのこない空間を実現。また、コンセプトルームは、蜷川実花氏や名和晃平氏といったアーティストの世界観を表現した客室。ファンにとってはたまらない一夜を過ごすことができるでしょう。

アンテルーム京都のアート活動の中心となっている「ギャラリー9.5」では、京都を拠点に活動するクリエイターを紹介する企画展を開催したり、彫刻家・名和晃平氏がディレクションする「SANDIWICH」との共同プロジェクトが進められています。ホテルのエントランスからつながる場所にあることを生かし、世界中から訪れた人と京都に暮らす人が同じものを見て、新たな創造がもたらされることが期待されるホテルのシンボル的な場所です。

蜷川実花氏のコンセプトルームNo.152
蜷川実花氏のコンセプトルームNo.152

客室で注目したいのは、現代を代表する気鋭のアーティスト9組によるコンセプトルーム。写真家・映画監督の蜷川実花氏、彫刻家の名和晃平氏、美術家のヤノベケンジ氏などがこの客室のために空間をつくりあげています。例えば、蜷川実花氏のコンセプトルームNo.152は桜をモチーフに極彩色の心躍る世界を表現。いずれの客室もここでしか発表されることのない貴重な作品となっています。

宇加治志帆氏のコンセプトルームNo.666
宇加治志帆氏のコンセプトルームNo.666
ホテルアンテルーム京都
住所:京都府京都市南区東九条明田町7
電話番号:075-681-5656
宿泊:1泊(2名一室利用の場合)1名4,500円~
URL:https://www.uds-hotels.com/anteroom/kyoto/

ベネッセハウス(香川県)

ベネッセハウス 写真:山本糾
ベネッセハウス 写真:山本糾

香川県の直島は、豊島、犬島とともに島そのものがアートに彩られています。ベネッセハウスは、その直島に1992年に誕生した美術館とホテルが1つになったアートホテルの草分け。「自然・建築・アートの共生」をコンセプトにしたミュージアム・オーバル・パーク・ビーチの4つの宿泊棟に、一般客も利用できるレストランやカフェ、スパ・ショップが併設されています。

広い施設のなかには、至るところに現代アートが配され、いつでもどこでも作品にふれ、さらに客室でその余韻を楽しむといった体験ができます。設計は安藤忠雄氏によるもので、時間の経過とともに瀬戸内海国立公園の自然と一体となるように考えられています。建物の特徴的な造形と自然の光もアートの1つ。環境からも鑑賞体験ができるアートホテルとなっています。

直島や豊島、犬島をスタッフに案内してもらえる鑑賞ツアーもあり、より深くアートに親しむことができます。

ベネッセハウス ミュージアム 写真:大林直治
ベネッセハウス ミュージアム 写真:大林直治

ベネッセハウスミュージアムは、地下1階、1階、2階の3つのフロアからなる美術館。絵画やインスタレーション、建築模型が展示され、なかにはベネッセハウスミュージアムのために制作されたアート(サイトスペシフィック・ワーク)もあります。それらは美術館の外の自然と一体になり、風景とあわせて1つの作品となっています。

ベネッセハウス ミュージアムレストラン 写真:鈴木研一
ベネッセハウス ミュージアムレストラン 写真:鈴木研一

地階にあるミュージアムレストラン「日本料理 一扇」は、大きな開口があり、店内から瀬戸内海と現代アートが融合した景色が見られる特等席。アートにふれながら食事をいただける贅沢で心やすらぐ体験ができます。料理は、瀬戸内の海の幸を中心とした季節感あるメニューが揃います。

ベネッセハウス パーク 客室 写真:渡邉修
ベネッセハウス パーク 客室 写真:渡邉修

4つある宿泊棟の客室には、ドローイングや絵画、版画などが展示されています。瀬戸内海の自然に向かって建てられ、窓が大きめに取られた客室からは、美しい借景が望めます。

ベネッセハウス オーバル 写真:渡邉修
ベネッセハウス オーバル 写真:渡邉修

客室棟は、それぞれコンセプトを持って建てられているのが特徴。例えば、オーバルはミュージアムからモノレールで移動する独立性のあるゲストだけの空間。瀬戸内海の自然と安藤建築のオーバルが1つの造形として重なり、新しい宇宙を見つけたような感覚をもつでしょう。わずか6室しかない客室での貴重な体験ができます

ベネッセハウス
住所:香川県香川郡直島町琴弾地
電話番号:087-892-3223
宿泊:1泊(2名一室利用の場合)室料22,000円~(税・サ別)
URL:https://www.benesse-artsite.jp/stay/

全国のアートホテルは、コンセプトはさまざまながら、ホテルライフそのものをアートとして楽しめるように考えられているところばかり。泊まるだけで、旅という非日常のなかで感性を刺激するいい機会になりそうです。アートホテルを主役にした旅で、新しい発見をしてみませんか?

※記載の内容は2020年11月現在のもので、変更となることがあります。
※税抜価格を表示しております。