イギリス スコットランド

今も息づく貴族の釣り文化

ーモンフィッシングという格式

18世紀初頭にイングランドと合併するまで、長く独立国であったスコットランド。北大西洋に浮かぶグレートブリテン島の北部3分の1ほどを占め、1万6000kmを超える長い海岸線、ロッホと呼ばれる3万を超える湖沼、そして無数の河川を持つ。厳しくも豊かな自然が広がる土地では、ゴルフなどの近代スポーツと並び、長くサーモンフィッシングの文化が発展してきた。サーモンとは、大西洋に生息するアトランティックサーモン(和名タイセイヨウサケ)のことである。

スコットランドの川には春を過ぎるとサーモンが遡上する

スコットランドの川には春を過ぎるとサーモンが遡上する

川は緑の多い田園地帯を縫うように流れる

川は緑の多い田園地帯を縫うように流れる

体が大きく、姿が優美で、さらに毛バリで釣れることから、ヨーロッパでは昔からサーモンこそが貴族が釣るのに相応しい、至高の釣りのターゲットと位置付けられてきた。スコットランドでサーモンの釣りができるのは、1月11日から11月30日まで。これはスコットランドの法律で定められた基本的な期間で、実際は河川ごとに少しずつ異なる解禁期間が定められている。また、解禁期間内であっても、日曜日のサーモンフィッシングは全土で禁止されている。

アトランティックサーモンを描いた現地の絵画

アトランティックサーモンを描いた現地の絵画

一般の釣り人がサーモンフィッシングを楽しみたいと思った場合、まず有望なのはパブリックの釣り場だ。スコットランド内には、地域ごとの釣りクラブが管理する川がある。これらはアングリングクラブウオーターやアソシエーションウオーターと呼ばれ、なかにはサーモンが多く遡上する有望な川もあり、予約に空きがあればビジターでも許可証を購入のうえ釣りができる。また、ホテルなどが一定の釣り場を所有している場合は、そのホテルに宿泊することで釣りができるケースもある。

  • パブリックな釣り場でサオをだす現地の釣り人たち
  • パブリックな釣り場でサオをだす現地の釣り人たち

パブリックな釣り場でサオをだす現地の釣り人たち

一方で、彼の地のサーモンフィッシングには、管理された私有地でのこのうえなく贅沢な釣りも残っている。そうした釣り場は、一日に川に入れる人数などがパブリックの釣り場以上に厳密にコントロールされており、現地でギリーと呼ぶ専属のガイドもいる。ギリーはもともと、その土地を所有する地主や貴族に代わり、現地の河川管理も任されながら、オーナーが川に来た際には釣りを案内した付き人のこと。手入れの行き届いた釣り場で、ギリーのガイドのもとロッドを振ることができれば、それは格別な体験となる。

河畔のベンチで釣り人を見守るギリー

河畔のベンチで釣り人を見守るギリー

手入れの行き届いた川はまさに貴族の庭だ

手入れの行き届いた川はまさに貴族の庭だ

伝統的なフライ(毛バリ)にヒットしたアトランティックサーモン。現在、多くのサーモン釣り場ではカエシのないバーブレスフックの使用、釣りあげたあとのリリースが義務付けられている

伝統的なフライ(毛バリ)にヒットしたアトランティックサーモン。現在、多くのサーモン釣り場ではカエシのないバーブレスフックの使用、釣りあげたあとのリリースが義務付けられている

界クラスの資源を誇るパイク

貴族の釣り文化が今も残る一方で、近年、世界中の釣り人の注目を集めている魚がパイクだ。スコットランドのパイクは他の地域に比べてサイズが大きく、20ポンド(10kg)は当たり前、30ポンド(15kg)オーバーも珍しくないといわれる。それでいて、いわゆるコースフィッシュに分類されるため、釣りのライセンス自体は非常に安いか場所によっては無料のこともある。スコットランドの大自然の中で迫力満点の巨大魚と対峙する。そんな釣りもまた大いに挑戦する価値がある。

  • パイクは湖沼に生息する大型の肉食魚。スコットランドの淡水域において食物連鎖の頂点に立つ
  • パイクは湖沼に生息する大型の肉食魚。スコットランドの淡水域において食物連鎖の頂点に立つ

パイクは湖沼に生息する大型の肉食魚。スコットランドの淡水域において食物連鎖の頂点に立つ

この旅のインフォメーション

行き先

韓国

行き先

イギリス・スコットランド

日本からはロンドンに入り、国内線に乗り換えてエディンバラなどスコットランドの主要都市へ。ANA直行便で東京からロンドンは、約12時間30分。ロンドンからエディンバラまでは1時間10分ほど。

気候(エディンバラ) 平均気温(℃):10.2(5月)、13.1(6月)、14.8(7月)、14.4(8月)、12.3(9月)
降水量(mm):54(5月)、52(6月)、63(7月)、70(8月)、70(9月)
北緯約56度で北海道より北に位置する。北大西洋海流の影響で気候は比較的穏やかであり、年間を通じて涼しい。
通貨・公用語 通貨は英国全土と同じポンド(1ポンド≒146円)。公用語は英語、スコットランド・ゲール語。道路は日本と同じ左側通行。
ビザ 6ヵ月以内の観光目的の滞在はビザ不要。

釣り場情報

対象魚 アトランティックサーモン、ブラウントラウト、パイクなど。
シーズン サーモン釣りの解禁期間は1/11~11/30の中で河川ごとに決められている。ハイシーズンは4~5月頃の晩春と9月以降の早秋。ブラウントラウトも3/15~10/6の間で河川ごとに解禁期間が定められている。パイクの禁漁期はない。
ライセンス スコットランドの川や湖沼で釣りをするには許可証の購入が必要。釣り場により地主、ホテル、あるいは地元の釣り協会などに支払う。海での釣りは基本的に無料。
タックル サーモンとブラウントラウトは一般的にフライフィッシングでねらう。
サーモン:大きな河川では15フィート#10/11クラス、少し小さな川では13~14フィート#9/10クラスのダブルハンド・フライロッド。水位が低い時のために10フィート#7/8クラスのシングルハンド・フライロッドもあるとよい。ラインはフロートタイプからシンキングタイプまで各種。リーダーは8~15ポンド。フライはサーモン用の#6~12フックに巻いたウエットフライ、1~1.5インチサイズのチューブフライなど。
ブラウントラウト:9フィート#4クラスのシングルハンド・フライロッド。フローティング、シンキングのどちらのラインもあるほうがよく、フライは#10~16フックに巻いたニンフ、ウエット、ドライフライ。
パイク:パイクはルアー、フライ、エサ釣りのいずれも可。ただし巨体で歯が鋭いので相応の強さを持ったタックルが必要。ルアーは大型のスプーンからトップウオータープラグまであらゆるタイプに反応する。フライは#9~10の充分に強度があるロッドとワイヤリーダーの使用が必要。エサ釣りでは生きたエサの使用が禁じられているので、地元の釣具店で購入できる冷凍のサバやニシンを使う。その際も15~20ポンドクラスの丈夫なミチイト、30ポンドクラスのワイヤーの使用が不可欠。また、どの釣法の場合も大型のプライヤーなど安全かつ迅速にハリを外せる道具が必須になる。
ウエア サーモンやトラウトの釣りでは川に立ち込むためチェストハイウエーダーを着用する。また天気が変わりやすく冷涼な気候のため、レインジャケットを含めた充分な防寒対策が必要である。

※釣り場情報は2018年6月現在のものです。
写真:津留崎健

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