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(アソビ)ギナーズラック

Composed by
imai(group_inou)、辻友貴(cinema staff)
初めて阿蘇を訪れたimaiと辻。group_inouとcinema staffとして同時代の音楽シーンを牽引し、長年交流を重ねる彼ら。友人同士だからこそのリラックスした雰囲気のなかで訪れる場所はどこも刺激的。阿蘇ビギナー2人の遊びに満ちた旅は、あまりにも出来すぎていた。

目次

香辛喫茶 Lion Curry
そらふねの桟橋
鍋ヶ滝
OGUNIYA JERSEY
河津酒造
阿蘇神社
手打ちそば 日出や
高森湧水トンネル公園
草千里ヶ浜
おべんとうのヒライ阿蘇立野店
高森駅

香辛喫茶 Lion Curry

阿蘇に到着した2人が最初に訪れた場所は、バンドマンだった店主が経営するスパイスカレー屋。店名の「Lion」は、店主が組んでいたバンド名が由来だという。無類の酒好きの辻に「酒に合う」と言わしめたスパイスカレーは、列をなすほど地元でも人気の味。imaiも「音楽家の作るカレーはなんでこうも美味しいのでしょうか?誰か僕の代わりに研究して下さい!」とその味を堪能し、「ウミネコサウンズのおさむさんもミュージシャンでカレー屋さん」と、この場所に紐づく音楽としてウミネコサウンズの「春はまだかい」を選曲。辻は、この店を紹介してくれた熊本発のバンド、Shikiの「Venom」を選んだ。「紹介してくれたバンドShikiのメンバー杉本さんに愛を込めて」。

そらふねの桟橋

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アウトドア
「Lion Curry」で腹を満たしたあとは、身体を動かして大自然を堪能したい。「そらふねの桟橋 」は田子展望所の山道を約10分歩いた先にある。桟橋からのパノラマ風景はもちろんのこと、辿り着くまでの山景も必見。そよともしない静まり返った山あいでは、思わずやまびこを聴きたくなる。「『やっほー!』のやまびこがあまりにも美しいディレイで感動しました。いきなり青春しちゃったなー。金色の草がキラキラしていて、頭の中ではTeenage Fanclubの『Going Places』が流れていました」とimai。辻は「澄んだ空気、綺麗な風景を見ると、美しいアンビエントミュージックを聴きたくなりますね」と Hammockの「God Send Us a Signal」を選曲した。さらに、阿蘇の雄大さを早速体感したimaiは、自身にとっての自然の存在について言及する。「コロナ禍でみんながストレスを抱えて対立や強い意見が散見されるなかで、自然を感じられる場所に何度か訪れて気分転換していました。MONO NO AWAREの「そこにあったから」でも歌われているように、人間と違って自然はただそこにあるだけで、何も返ってこない。だからこそ救われます」。

鍋ヶ滝

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アウトドア
滝を裏側から見たことはあるだろうか。鍋ヶ滝は滝壺の奥で流れ落ちる水を眺めることができる、いわゆる「裏見の滝」。木漏れ日が差し込む滝壺は、imaiに爽快感と癒しを与える。「Melt-Bananaの『Circle Jack』のような極度に激しい音楽を聴くと爽快感を覚えるのですが、鍋ヶ滝もそんな感じでした。一周回って癒し系!」。一方辻は、鍋ヶ滝を「つまみになる景色」と表現。imaiも「大自然のなかって最高だよね」と呼応する。酒を嗜みたくなるほどの光景に、辻は「あのすごい自然を目の前に、『自分生きてるなぁ』って感じてる時に聴きたくなる曲です」とeastern youthの「ソンゲントジユウ 」を紐付ける。

OGUNIYA JERSEY

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買い物
阿蘇では自然だけでなく、雄大な土地が生み出した牛乳も味わいたい。鍋ヶ滝から車で約10分、ふらりと立ち寄った道の駅小国内のジャージーソフト屋「 OGUNIYA JERSEY」のジャージーソフトと牛乳の濃厚で優しい味わいに、imaiと辻は感動を覚える。「milkと言ったらこのバンドのことを思い出します」と、Neutral Milk Hotel 「Two-Headed Boy」を選んだ辻は、「牛乳でこんなに感動したことないです」と言う。ジャージーソフトに加えて、搾りたての冷たい牛乳とホットミルクも絶対に味わうべき一品だ。特にホットミルクが気に入ったimaiは、「ホットミルクのシルキーな口当たりはディアンジェロのグルーヴでした。ソフトクリームに行きがちだけど、ホットミルクもマストで!」と振り返った。

河津酒造

「OGUNIYA JERSEY」と同じく、道の駅小国に店舗を構える「河津酒造」が気になり、imaiと辻は近くにある酒蔵を見学させてもらえることに。東京のIT企業で勤務したのち、2011年に3代目として酒蔵を継いだ現当主から話を聞いた。当主が話す河津酒造のこだわりに、2人は音楽と日本酒づくりを重ね合わせる。この場所を表す音楽にRei Harakamiの「Grief & Loss」を選んだimaiは、「『敢えて古い機械や手法を使う』という『効率/非効率』の話をされていたのですが、やっぱり一台の機材を使い倒していたハラカミさんが浮かびます。ハラカミさんもお酒が大好きでしたよね」と語る。辻も同じくものづくりのスタイルに感銘を受け、旅の車内で流れた往年のバンドの楽曲を選ぶ。「昔から活動し続けてその時代の音や録音技術も大切にしつつ、モダンな流れも入れていく感じがFoo Fightersを想起させます。車内ラジオで流れていたので彼らの『Shame Shame』を」。日本酒の多様性が強まる今、「100年後まで誰かが乾杯してくれるお酒」を作り続けていくために、酒造の強みを生かす「非効率」と、より良い品質を目指す「効率」を同居させることを重視する河津酒造。そのスタイルにより生み出した甘口の日本酒「純米吟醸 花雪」は、「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2021最高金賞」を受賞した。

辻の居酒屋に対する鋭い嗅覚で、「これぞまさに居酒屋」と言うべき店に出会った。それが内牧の「阿蘇プラザホテル」向かいに佇む居酒屋「扇」。レーサーとしても活躍するタレントの近藤真彦も訪れる場所だ。割烹着を身に纏った日本酒好きの女将が1人で切り盛りし、天草の燻製かまぼこや馬のアキレス腱を煮込んだおでんの湯気が立ち上る店内では、ムーディーな昭和歌謡が響き渡る。美川憲一の「さそり座の女」が流れ、imaiは「M-1でモグライダーがネタにしていたこの曲がかかった瞬間ぶちあがりました。80歳のお母さんが一人で切り盛りしている最高のお店」と気持ちが昂る。酒がすすむ情緒溢れる雰囲気で、imaiと辻の話にも花が咲く。「こういう最高な居酒屋だと話が弾むわけで。imaiさんと音楽のこと語り合えた感じが堪らないってことで、imaiさんの『Alone 』を選びました」。
place

阿蘇神社

阿蘇市一の宮町の「阿蘇神社」は、全国に約500社ある「阿蘇神社」の総本社。現在は熊本地震による被害からの復旧工事を行っている。「神秘的なものを感じると聴きたくなる音楽です」と、辻はJulien Baker、 Phoebe BridgersとLucy Dacusの3人によるBoygeniusの楽曲「Ketchum.ID」をこの場所に紐付けた。社殿を参観したのち、2人は十種類の縁起物のいずれかが入った「幸福おみくじ」をひいた。imaiは延命長寿や金運招来を表す亀のお守りが納められたものをひき当て、お守りの可愛さに喜ぶ。「おみくじに付いてくる金の小さなカメが可愛かったので、PAS TASTAの『turtle thief』を」。

手打ちそば 日出や

南阿蘇久木野産の蕎麦粉を石臼で自家製粉したそばを提供する「日出や」。阿蘇産の自然薯を使用したとろろそばを味わった2人。その味もさることながら、店内に置かれたタムやコンガにも目を向けたい。レゲエ音楽好きの店主は、以前レゲエバンドをやっていたという。熊本地震により被害を受ける以前はドラムセットが店内にあり、友人であるLITTLE TEMPOのメンバーを招いたスティールパン教室や音楽ライブを開催していた。それを聞いた2人は興奮。辻はLITTLE TEMPOの「Over the rainbow」を、imaiはキセルの「ハナレバナレ」を選曲。「店長さんがLITTLE TEMPOとお知り合いとの事で、店内ではキセルが流れていました。キセルが大好きで、『新宿時代のリキッドルームに観に行ったな』とか思い出しました。LITTLE TEMPOの内田直之さんがミックスされているアルバムから1曲」。

高森湧水トンネル公園

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アウトドア
鉄道建設のために掘削していた岩盤の跡地にできたトンネル公園内には2055mにわたる水路が続く。地元の小中学生手作りの作品、イルミネーションやオブジェを目にしながら水路沿いの歩道を進むと、最後に行き着くのは仕掛け噴水「ウォーターパール」。小さな頃から水が好きだったimaiは、ストロボの光により不思議な動きをする水玉に、「チープで幻想的な照明や謎のオブジェで笑っていると、最後に"ウォーターパール"でカマされる感じはCeephax Acid Crewの『Essex Remblance』を連想しました。最後まで油断するなよ!」と大興奮。身を乗り出してウォーターパールの正体を解明しようとしていた辻は「絶妙なB級感とワクワクするサイケ感」と、トンネル公園の雰囲気にThe Flaming Lipsの「The Yeah Yeah Yeah Song」を重ね合わせる。

草千里ヶ浜

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アウトドア
まだ雪解け前の草千里ヶ浜を訪れた2人。広大な土地に異国の雰囲気を感じた辻は「なんとなくこの曲が思い浮かびました 」とRed Hot Chili Peppers「Californication」を挙げる。よく国内の自然を感じに行くimaiだが、「とても日本とは思えない壮大な景色!そりゃあ心も浄化されますよ。久々にこんな規模の自然を感じました」と草千里ヶ浜の景色に圧倒された。自然と同様、コロナ禍でimaiの心を救ったのは音楽。「コロナでどこも行けなかった時は、リョウコ2000の『Humming Bird』や、パソコン音楽クラブのアルバム『See-Voice』のような音楽に救われました」。

おべんとうのヒライ阿蘇立野店

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買い物
阿蘇を巡る旅の最後に訪れたのは熊本発の惣菜・弁当ショップ「ヒライ」の阿蘇立野店 。地域に根ざし、人々の生活に寄り添うヒライが生み出した「ちくわサラダ」は、いまや熊本定番の料理。ちくわサラダをはじめとする惣菜や弁当、イートインメニューの多彩なラインナップに、辻とimaiも思わずたじろぐ。辻は「今のトレンドも抑えたあのカオスな品揃え、モダンなプログレでしょう」と、ヒライをblack midiの「John Limai」になぞらえた。一方imaiはヒライへのリベンジを誓う。「俺たちの終着駅"ヒライ"!存在が大きすぎてとても一回では把握する事が出来ませんでした。帰り道にすごい夕陽が出ていて、横沢俊一郎の『プロローグ』で歌われる<エンドロールから 始まる打ち上げ花火>という一節が浮かびました。また来ます!!!」。

高森駅

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アウトドア
高森湧水トンネル公園の駐車場で南阿蘇鉄道のトロッコ列車の看板を見つけたimaiと辻は、列車に乗るべく高森駅へと向かう。駅舎内に掲示された、熊本地震からの復興を応援する漫画家・原作者117名のメッセージを見てひとしきり感動したのち、2人はトロッコに乗車。赤い車体に、辻はくるりの「赤い電車 」を連想する。2人を乗せた貸し切りのトロッコ列車は、車窓からの眺めを解説する車掌のトークとともに、現在運行する区間の終点「中松駅」を目指す。車掌のテンポの良いトークは必聴。「電車に乗る事も気を遣うような時代に、まさかの貸し切りでついついはしゃいでしまいました。車掌さんのアナウンスもジャングルクルーズ感があって良い。心が少年に戻ったので、あの頃大好きだったこの曲を」とimaiはスピッツの「グラスホッパー」を選ぶ。
Photos by 小川哲汰朗
その他のプレイスリスト
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愛は資本主義じゃない

Composed by
夏目知幸
長い歴史をかけて形成された阿蘇のカルデラは、埋立地の千葉県浦安市で生まれ育った夏目知幸の知的好奇心を刺激する。高く透き通った阿蘇の空に比例するように、明るくて暖かい街の人たち。初めてなのにどこか暖かい、そんな阿蘇の魅力を伝えるプレイスリスト。
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大人になってもアソびたい

Composed by
Bose(スチャダラパー)
『阿蘇ロックフェスティバル』出演のために阿蘇を訪れたことがあるスチャダラパー・Bose。しかし、阿蘇のスポットを巡るのは今回の旅が初めてだった。予想を超える魅力に溢れた阿蘇の場所の数々に、Boseは圧倒される。大人の遊び場は世界有数のカルデラにあった。
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