責任ある調達
ANAグループは、サプライチェーン全体で社会と環境に配慮した責任ある調達活動を行います。
基本的な考え方
近年、グローバルに市場経済が成長する一方、限りある天然資源の枯渇や水不足、温暖化などの環境問題が顕在化し、地球の持続可能性への危機感が高まっています。また、グローバル化する企業のサプライチェーン上では労働災害や人権問題などの社会問題も深刻化しており、企業に対し、各国の法令・規制への遵守はもとより国際的な認識された基準や原則とそれらの精神を尊重し、持続可能な社会の実現のために貢献することが求められています。
ANAグループでは、安心・安全なサービスの提供だけでなく、調達活動を通じて、地域及びグローバルにおいて、社会と環境に配慮した活動を率先して行い、社会的価値の創造に貢献してまいります。
その一環として、サプライチェーン全体で、持続可能な調達活動を推進するため、下記の通り「ANAグループ調達基本方針」を策定しました。
ANAグループ調達方針は「調達基本方針」と「サプライヤー行動指針」で構成されています。

ANAグループ調達方針
調達基本方針
- ANAグループの調達活動は、国内外に開放され、関係法令を遵守し、自由な競争に基づく公正、公平かつ透明な手続きによって行い、サプライヤーの皆様との間では相互信頼、相互補完関係を築くように努めます。
- ANAグループは、人権、環境に配慮した責任ある調達活動に取り組みます。
- ANAグループは、品質の確保、最適な価格、納期の遵守を重視し、安定した経営基盤と、変化への対応力を備えたサプライヤーの皆様と、イノベーションを推進しながら、お客様の期待に応えます。
- ANAグループは、サプライチェーン全体で社会的価値と経済的価値を創造することで、持続可能な社会の実現に向けて貢献できるよう、取り組みます。
サプライヤー行動指針
ANAグループのサービス・製品に関わるすべてのサプライヤーの皆様に、ANAグループと共に遵守いただきたい指針として、「ANAグループサプライヤー行動指針」を策定しています。
サプライヤー行動指針 PDF 新しいウィンドウで開く。外部サイトの場合はアクセシビリティガイドラインに対応していない可能性があります。
1.品質の確保と事業継続計画 |
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2.法令遵守と腐敗防止 |
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3.労働基準 |
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4.安全衛生 |
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5.環境 |
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6.地域社会への貢献 |
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7.情報の開示 | |
8.紛争鉱物に対する取り組み |
サプライヤー行動指針は、国際連合の「ビジネスと人権に関する指導原則」、「国際人権章典」(「世界人権宣言」、「市民的および政治的権利に関する国際規約」、「経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約」)や、労働における基本的権利を規定した国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則および権利に関するILO宣言」による中核的労働基準に加え、「賃金や労働時間など労働者の人権に関する条約」、「先住民族の権利に関する国際連合宣言」などの人権に関わる国際規範等を参照しています。
推進体制
ANAグループの責任ある調達を推進するため、ANAグループ主要部署に『調達責任者』を選任し、サプライヤーの皆様と共に持続可能な社会の実現に向けて取り組みを進めていきます。


ANAグループのサプライチェーン
ANAグループは、グローバルに調達活動を展開し、約9,900社の取引先と、年間約1.2兆円の調達取引を実施しています。

主な取り組み
サプライチェーンの健全性確立に向けて
ANAグループのサプライチェーンについて、「事業継続上の重要性」と「ESG上の重要性」でカテゴリー分けを行い、それぞれのカテゴリーに応じたマネジメントを実施します。


サプライチェーンにおけるリスクマネジメント
新規の全てのサプライヤーの皆様には、「ANAグループ調達方針」「サプライヤー行動指針」の内容を理解いただくとともに、同意いただいた上で、取り引きしています。
また、取り引き開始後は、遵守状況をモニタリングし、著しく逸脱している内容が確認された場合は、改善計画の確認などのフィードバックを行い、持続可能な調達への理解と協力をお願いしています。また、必要と認められる場合には、2次・3次サプライヤーへの調査を実施し、サプライチェーン全体でのリスクマネジメントに努めます。

重要アイテムについて
ANAグループでは、(1)アイテム*1、(2)製造地*2、(3)ANAグループ専用品の3つの指標で重要アイテムを特定しています。特に全てに該当するものを最重要アイテムと位置付け、優先して健全なサプライチェーン構築に取り組みます。
対象となるアイテム、製造地については、IATA(国際航空運送協会)等が定めるESGリスク基準を参照し、決定しています。
- *1.アイテム:「環境」「労働条件」「公正取引」「持続性」等により評価
- *2.製造地(国・地域):「環境」「健康」「人権」「汚職」等により評価


サプライヤーの皆様とのコミュニケーション
ANAグループでは、新たな取り引きを開始する際には、調達方針の内容の理解、遵守をサプライヤーの皆様にお願いしています。
取り引き開始後は、サプライヤーの皆様との良好なパートナーシップを築くため、適宜、情報共有・意見交換を行っています。
- 個別の訪問、メールやWEBを通した意見交換や課題確認
- 調達方針の周知、説明会の開催(オンラインでの開催を含む)
モニタリングの実施
健全なサプライチェーン構築のため、アンケート調査や視察、従業員へのインタビューなどを実施し、労働・人権課題への対応・改善状況について定期的にモニタリングを実施しています。リスクや課題が発見された場合は、改善計画の確認やフィードバックを実施し、継続的な状況把握と改善に努めていきます。
実施状況
ANAグループでは、IATA等が定めるESGリスク基準を参照し、サプライチェーン上における優先すべきリスクの分析を行い、優先度が高いアイテムを扱うサプライヤーに、当社グループの調達方針に関わる説明会を開催する等、責任ある調達への理解を求めています。
2020年度以降、制服および機内で使用するリネン、また2022年度には「食器、カトラリー類」を優先度の高いアイテムとして特定しました。対象アイテムを扱うサプライヤーには、説明会に加えサステナビリティに関する独自の調査を実施しています。
さらに2次・3次サプライヤーも含めた把握を目的として、2021年度、ANAグループの3次サプライヤーに該当する海外(ベトナム)の生産工場労働者を対象に、第三者機関による直接インタビューを実施しました。


サステナビリティ調査について
サステナビリティに関する調査は、国際連合の「ビジネスと人権に関する指導原則」、国際労働機関(ILO)の労働基準に加え、人権に関わる国際規範等を参照した、当社「サプライヤー行動指針」をベースに、ANAグループにおける責任ある調達への理解を深めていただくと共に、対象サプライヤーのサステナビリティへのマネジメント体制や取り組み状況を確認することで、健全なサプライチェーンを構築する重要な機会としています。
また、サステナビリティ調査実施後は、各社の取り組み状況について分析、評価をし、フィードバックを実施しています。評価結果が低かった項目については、ヒアリングによる詳細確認や改善提案による支援など是正対応に向けたフォローアップを実施しています。
テーマ | 設問数 | 設問内容例 |
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サスティナビリティー全般 | 6 | マネジメントシステムの構築、教育等 |
品質の確保と事業継続計画 | 4 | 品質管理体制構築、BCP体制構築等 |
法令遵守と腐敗防止 | 13 | 法令遵守・国際規範の尊重、腐敗防止等 |
労働基準 | 20 | 人権尊重・労働時間への配慮、適切な賃金と手当、外国人労働者への対応等 |
安全衛生 | 8 | 安全衛生 、緊急事態対策 |
環境 | 7 | 環境負荷低減、大気への排出、水の管理、資源の有効活用と廃棄物管理等 |
地域社会への貢献 | 2 | 地域への貢献活動の実施有無等 |
情報の開示 | 1 | 個人情報保護、機密情報漏洩等 |
紛争鉱物に対する取り組み | 1 | 紛争鉱物の使用等 |
サプライチェーン | 3 | サプライチェーンへの取組状況等 |
合計 | 65 |
調査結果:2020-2022年度
対象:制服、機内で使用するリネン、食器・カトラリーサプライヤー23社
各テーマにおけるサプライヤーの平均実施率は以下の通りです。

2020-22年度実績 | |
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サステナビリティ 調査実施社数 |
23社 |
サステナビリティ 調査回収率 |
100% |
PDCAに向けた フィードバック |
100% |
社内教育の実施
ANAグループでは、調達方針の着実な浸透を図るため、定期的な教育を実施しています。2022年度は、ANAグループ調達責任者
(約100名)に対し、調達活動における社会規範や法令の遵守、環境負荷の低減に継続的に取り組んでいく重要性について、計3回教育を実施しました。今後も継続的に啓発活動を実施します。
機内食に関わるサプライチェーンマネジメントの強化
2017年、ANAグループは日本企業として初めてブルーナンバー・イニシアティブ*へ参画しました。機内食の食材に関わる生産者や業者の情報登録を進めており、生産過程における人権尊重や環境保全にもつながる、透明性の高い「食のサプライチェーン」の構築を目指しています。

- ブルーナンバー・イニシアティブ:ブルーナンバー財団による、食に関わるサプライチェーン・プラットフォーム構築を目指す世界的な取り組み。