炭鉱開発のために周囲を埋めたてられ要塞のような人工島・長崎市の端島は、明治時代から昭和時代にかけて海底炭鉱によって栄えました。岸壁が島全体を囲い、高層鉄筋コンクリートが立ち並ぶその外観が軍艦「土佐」に似ているところから「軍艦島」と呼ばれるようになったことは有名です。最盛期の1960年には約5300人もの人が住み、当時の東京都区部の9倍もの人口密度に達しました。島内には小中学校や病院など生活は全て島内で賄えるようになり、映画館やパチンコホールなどの娯楽施設もそろうなどにぎわいました。端島炭坑の石炭はとても良質で、隣接する高島炭坑とともに日本の近代化を支えましたが、主要エネルギーが石炭から石油へと移行したことにより1974年に閉山、島は無人となり現在はその石炭産業の歴史を伝えています。

スコットランドの貿易商人、トーマス・ブレーク・グラバーは、1859年に来日し茶やその他の産物、武器船舶などを取り扱う商人として外国人商人の仲間入りをしました。その後、造船、炭鉱、水産、鉄鋼、造幣、ビール産業の分野を開拓したり、1868年には、小菅に近代式修舟場を設け、1869年には高島炭坑を開設するなど、日本の近代化に大きく貢献。そのグラバーが、1863年に長崎港や製鉄所、船の出入りが良く見える南山手の高台に建てたこの邸宅は、現存する最古の洋風木造建築であると同時に、最初の和洋折衷建築といわれています。L字型バンガロー、扇型の屋根に瓦葺、レンガの煙突、コロニアル風大型窓などが特徴です。アーチ型のドアは全てが洗練されており、今も見るものを楽しませています。また、グラバー園の石畳には、恋愛に関する伝説のあるハートストー ンがあるので、探してみてください。

薩摩藩主島津斉彬は、国を護るインフラ整備と新事業として日本初の近代的な工場群を仙巌園内に設け、その工場群を「集成館」と名づけて力を注ぎました。海外からの外敵から護るための大砲や武器、軍船を自前で作る必要があると考え、材料の鉄を溶かす溶鉱炉や反射炉建造に着手。必要な熱源には寺山で焼いた木炭を使い、水は関吉から仙巌園まで水道を通し、さらにはガラス工場、紡績、蒸気機関の研究所など次々に設けたのです。世界文化遺産としては、旧集成館反射炉跡、12代藩主忠義が完成させた日本最古の洋式工場である旧集成館機械工場、技術者宿舎として建てられた旧鹿児島紡績所（技師館）があります。

⿅児島市下⽥町にある疎⽔路「関吉の疎⽔溝」は、薩摩藩主島津⻫彬によって進められた、集成館事業（⼯場群）の動⼒源として利⽤されたもの。元々島津家別邸の⽣活⽤⽔として吉野⼤地を流れる棈⽊川（あべきがわ）の⽔を引いていましたが、⿅児島城下を流れる稲荷川の上流から仙巌園まで、およそ7kmに渡って新たな⽔路が築かれました。その⽔路を使って集成館まで⽔を引き込み、⾼炉や砲⾝に⽳を開ける装置など、館内の⼯場で使われる⽔⾞動⼒に変えていたと⾔われています。関吉には、棈⽊川から取⽔した当時の取⽔⼝跡が残っており、疎⽔溝の⼀部は現在も灌漑（かんがい）⽤⽔として利⽤されています。