事業継続マネジメント
基本的な考え方
ANAグループでは、あらゆる危機的状況においても、安全を最優先に事業を継続するためのANAグループ事業継続推進計画(BCP)を定めています。この計画は、「人命を最優先する」「グループ各社の事業の優先順位を定め、早期復旧する」ことを基本方針として、想定される脅威(自然災害・感染症・事故・サイバー攻撃等)に対する具体的な影響に捉われず、災害発生の結果起こりうる状況(要員不足、建物・設備損壊、ITトラブル)に対して対応を行い、 顧客・役職員等の健康・安全を確保するとともに、経営および社会に対する影響を極小化し、事業を可能な限り早期に常態に回復するための方針と手順を定めています。
また、空港全体のBCPへの取り組みとして、国土交通省が設定するガイドラインを基に各空港の空港管理者が策定する「A2(Advance/Airport)-BCP」とグループ各社が策定するBCPと連動することにより空港としての事業継続を目指しています。
- 「A2(Advance/Airport)-BCP」とは、空港全体としての機能保持及び早期復旧に向けた目標時間や関係機関の役割分担等を明確化したもので、全ての空港利用者(滞留者)の安全・安心の確保、背後圏の支援、航空ネットワークの維持を目的として、空港ごとに策定されている。
ANAグループにおける事業継続計画について
ANAグループでは、事業活動が一時的に停止するような状況においても、お客様・役職員等の安全の確保や、経営や社会に対する影響の極小化など、事業を可能な限り早く常態に復旧させるための備えとして、特定の災害にとらわれないオールハザード型の「ANAグループにおける事業継続のための基本方針」を定めています。その方針に定められた事業継続推進計画ガイドラインを基に、グループ各社では事業特性に応じた各種マニュアルを作成しています。また、継続的改善を図る事業継続マネジメント(BCM)を推進し、有事の際、迅速に対応できる体制づくりに努めています。

主な取り組み
自然災害対策への対応
昨今、集中豪雨や台風の巨大化により各地で天災による被害が発生しており、空港内のオペレーションに不可欠なインフラ設備である「通信設備」「電源供給設備」を守るために様々な対策を進めています。浸水被害への対策として、主要空港の中でも水没リスクが高いと想定される5空港(羽田、中部、関西、福岡、沖縄)に対し、最新のハザードマップをもとに止水板の設置や機器類の上部移設などの工事を順次着手し、早期復旧できる環境の整備を進めています。
また、停電時の対策として、大規模空港では、航空機の運航に必要な端末などを非常用電源設備に接続することや、その非常用電源設備の能力を補完するために大型の蓄電池を配置することで、停電が発生した場合にもオペレーションが継続できる環境の整備を進めています。
システム運用継続計画(IT-BCP)
ANAグループでは、多くのシステムが企業運営を支えており、安全で安定的な事業を継続していく上では、IT-BCPの確立が不可欠であることから、遠隔地にバックアップデータセンターを備え、本番データセンターの被災時にバックアップセンターへ切り替えを可能とすることで事業を継続させる、ディザスターリカバリー(DR)も実現しています。
また、データセンターのシステム基盤は仮想化技術などの最新IT 技術を駆使しており、システムの耐障害性向上やコスト削減に寄与しています。
ANAグループでは、事業に重大な影響を与えうるITリスクを的確・迅速に捉え、非常時に適切に対応するため、少なくとも年に一度テストを実施し、事業継続とシステム復旧を確実にしています。今後も、これらの訓練やプロセスを通じ、ハード・ソフトの両面で継続的に改善を図ることで、安全で安定的なサービスを提供し続け、社会の重要インフラとしての責務を果たしていきます。
教育・訓練の実施
ANAグループ全体の従業員を対象に、平時からどう備え、災害時にどう行動するかを理解するために防災eラーニングの実施や、各種災害等発生時の初動対応を強化するための安否確認システムによる応答訓練を実施しています。また、ANAグループ全体のBCP担当者を対象に、災害時を想定した実践型の図上訓練を実施しています。
災害用備蓄品の整備
ANAグループでは、一定期間の事業運営を支えること、および自治体等による要請に基づく一斉帰宅抑制のため、国ならびに自治体が定める基準等を参考に「ANAグループ災害用備蓄ガイドライン」を定め、各事業所に災害用備蓄品を整備しています。