環境にかかわる有識者との対話

2020年度の主な活動

環境にかかわる有識者との対話

ANAグループは、ステークホルダーとの対話から社会要請を把握し、経営戦略とすり合わせを行った上で、事業や社会におけるインパクトを評価し、取り組みに反映しています。
今回は、重要課題でもある「環境」をテーマに、環境にかかわるグローバル動向について有識者と意見交換を行いました。

テーマ:環境にかかわるグローバル動向について

日時:2020年9月23日(水)14:00から16:00

ご参加いただいた有識者の皆様
池原 庸介氏(WWFジャパン 自然保護室 気候・エネルギーグループ グループ長)
三沢 行弘氏(WWFジャパン 自然保護室 プラスチック政策マネージャー シーフード・マーケット・マネージャー)
西野 亮子氏(WWFジャパン 自然保護室 野生生物グループTRAFFICプログラムオフィサー)
日比 保史氏(一般社団法人 コンサベーション・ インターナショナル(CI)ジャパン 代表理事 兼 CIバイスプレジデント)
藤原 勇二氏(IATA Japan 代表)
小林 靖欣氏(IATA Japan マネージャー)

全体コーディネート
石田 寛氏(経済人コー円卓会議日本委員会事務局長)

ANAホールディングス(株)
伊東 裕(代表取締役 副社長執行役員 サステナビリティ推進 担当)
宮田 千夏子(執行役員 サステナビリティ推進部長)ほか

伊東副社長

ANAグループは、厳しい経営環境でありつつも、今企業に強く求められている“New Normal”や“Green Recovery”を念頭におきながら、Postコロナによる社会価値の変容を見据え、ESG経営の形づくりにどこから具体的に着手することができるのか、本日ダイアログ(対話)を参考にしていきたい。

宮田執行役員

ANAグループは、ステークホルダーとのダイアログを重視しており、昨年6月に実施した環境に関わるダイアログで皆様から頂いた貴重なご意見をふまえ、環境にかかわる長期目標を設定した。
しかしながら、昨今のコロナ感染拡大の影響に伴い、事業そのものも見直しをせざるを得ない状況となっており、改めてANAグループとして果たすべき役割について考えていきたい。また、Postコロナによる社会価値の変容を考慮しながら、ANAグループにとっての存在意義が何であるのか、社会に果たすべき役割についてもダイアログを礎にして検討していきたい。

IATAジャパン 藤原氏
“CORSIAの実現に向けた新たな挑戦”

コロナの感染拡大に伴い、世界中の人々の移動抑制により、航空業界全体収益が2008年のリーマンショック時を大幅に上回る規模で落ち込んでいる。しかし、CORSIAで掲げられている2050年までに純排出量を2005年の半分のレベルに削減することのコミットメントについては変更することなく、継続することになっている。こうした中で、各航空会社では、燃費効率の悪い航空機退役の促進やSAFの促進に向けた取り組みを模索している。

WWFジャパン 池原氏
“グリーンリカバリーに向けて求められる取組み”

コロナ禍の影響に伴い、世界のCO2排出量は8%減少する見込みであるが、グリーンリカバリーを見据え、例えばフランス政府は、航空会社への支援策にCO2の半減目標、航空機の更新、持続可能な代替燃料導入を行うことを条件付ける方向で動き出している。グローバル動向としては、脱炭素化の潮流は止められないものとなっており、企業として脱炭素社会の実現に向けていち早く対策を講じることが必須である。その中核となるのがSBTに沿った目標策定である。Withコロナの中で、SDGsを蔑ろにして経済的側面だけを重視した取組みをすれば、Postコロナにおいて大きなリスクとなることに留意すべきである。つまり、With/Postコロナを踏まえた上で、自社の事業活動を持続可能な形で継続できるよう、事業戦略を軌道修正することが重要であると認識して頂きたい。

WWFジャパン 三沢氏
“サーキュラーエコノミーの視点を取り入れたプラスチック汚染対策について”

海洋プラスチックは、陸地から海への流出が全体の8割となっており、毎年約800万トンが海洋へ流入し、海洋生態系に深刻な影響を及ぼしている。日本からの廃プラスチック発生量は世界3位であるが国内リサイクルは2割未満にすぎない。その対策として、まず総量削減(リデュース)した上で、回収・リユース・リサイクルの最大化を図ることが急務であると考えている。プラスチック問題の解決に向けて、WWFでは“サーキュラーエコノミーの基本原則”を取り入れつつ、新たな資源投入をゼロに近づけた上で、完全リユース・リサイクルの実現により、2030年までにプラスチックの自然界への流出ゼロを目指している。

WWFジャパン 西野氏
“ポスト・コロナ社会における野生生物保全”

野生生物の違法取引に利用される輸送手段では、65%が旅客機である(摘発件数割合)。特にハイリスクなアジア市場(タイ、中国、インドネシアなど)から日本への密輸が多く、コウモリ目やサル目など感染症リスクの高い動物が密輸により国内に持ち込まれている。こうした状況下、人やモノの往来が多様な社会において行政主導のスクリーニングだけでは限界があり、民間セクターとの協力が重要である。ANAグループではすでに課題共有するためのトレーニングを実施しており、今後更に業界全体へと波及させ、行政機関と連携していくことを強く望んでいる。

CIジャパン 日比氏
“環境に関わるグローバルな動向について”

人類は、地球の「環境容量」、特に気候変動や生物多様性については、すでに限界を超えてしまっていると言われている。つまり、地球環境のバランスはTipping Pointを超えつつある可能性があるため、気候変動緩和(=CO2排出)だけではなく、人類による社会・経済に環境影響を一刻も早く“ネットゼロ”にしていくために動き出さなくてはならないと危機感を持っている。そこで、”New Normal”の世界でANAグループに求められる期待は、以下の通りである。

  • 以前のような「高速移動手段」としての飛行機利用ではなく、よりサステイナブルなフライトでお客様にサービス価値を提供し、“Green Recovery”を実際に体感させる
  • カーボン目標の上方修正や前倒しで進められる挑戦する
  • サプライチェーンのネットゼロ負荷への実現:森林破壊ゼロやゼロ・プラスチックなど
  • カーボン・オフセットは、生物多様性保全やコミュニティ支援、そして脱プラスチックにも貢献し得るNatural Climate Solutionに投資。特にプロジェクトの立ち上げ支援が重要
  • ズーノーシス・リスクの軽減も視野に野生生物取引対策の第一人者に