環境に関する有識者との対話
2021年度の主な活動
環境に関する有識者との対話
2021年12月、環境に関わる有識者との対話を実施しました。
第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)では、2℃目標から1.5℃目標に国際社会が明確にその重点をシフトした現状を踏まえ、2021年4月に公表したANAグループの環境目標に関わる課題だけでなく、気候変動と生物多様性に関しても情報共有、ご意見をいただきました。


テーマ:ANAグループ環境目標に関する取り組みの進捗について
日時:2021年12月22日(水)13:30-15:30
有識者
山岸 尚之氏(WWFジャパン 気候エネルギー・海洋水産室長)
日比 保史氏(一般社団法人 コンサベーション・ インターナショナル(CI)ジャパン 代表理事)
全体コーディネート
経済人コー円卓会議日本委員会
石田 寛氏(事務局長)
大出 泉綺氏
ANAホールディングス株式会社
高田 直人(取締役 専務執行役員、グループESG経営推進会議 議長)
宮田 千夏子(執行役員 サステナビリティ推進部長)ほか
有識者からの主なご意見
“気候変動への取り組みと環境目標に関して”
- 航空業界におけるCO2排出量削減においては、SBTi等の国際的な脱炭素水準に沿った削減目標や、再生可能エネルギー導入に関する目標を掲げ、情報開示をすることが重要となる。SAFの安定供給や持続可能性といった課題に加え、機内食用の持続可能な食材(認証食材等)を提供するサプライヤーの少なさに関しては、一歩踏み出し、同業他社やサプライヤー等巻き込み、リーダーシップの発揮が期待される。SAFに関する制約を含め自社のみで解決出来ないが、この1%を全力で取り組む必要がある。自社施設や車両の省エネ化、再生可能エネルギーの導入、車両のEV・燃料電池化を推進しこの1%への取り組みと実績により、ANAの環境イニシアティブ全体に対する外部評価は大きく変わる。
- SBTiはクレジットを手段として認めていないが、世界がネットゼロを達成する際に、各業界がクレジット利用抜きにどれくらいの排出量削減を達成している必要があるかによって目標水準が決まっている。他方で、航空業界及び海運業界は国際的にもCO2削減が難しい業界(hard-to-abate産業)として認識されており、特例としてCORSIAといった脱炭素の枠組みが設けられているが、CORSIAでもクレジットは最終手段として使用するという共通認識である。目指すところは同じ1.5℃目標達成であるため、実行可能で実効性のある取り組みを通じて目標達成することにフォーカスする必要がある。
- ネットゼロを目指すにあたり、森林の吸収量を増やす必要性に迫られており、昨今、森林保護が気候変動対策の文脈で再評価されている。自然に基づいた解決策(nature based solutions)は自然環境の保護および気候変動の解決につながる統合的なアプローチとして採用する動きが加速している。
“気候変動と生物多様性に関して”
- 生物多様性を保全する取り組みとは、自然を守る取り組みであり、機内食で使用される食材の持続可能性の担保から、森林破壊、海洋汚染としてのプラスチックまで、さまざまな事柄が含まれる。航空業界においては、例えばきれいな空気や安定した大気環境は当たり前のように享受しているが、これは自然に依存していると言い換えられる。SAF自体も自然環境に依存している分野である。一般論としては、まず、自然環境・資源に対して、ビジネスが「依存」しているものと、「影響」を与えているものは何かを特定・分析・優先順位化することがスターティングポイントである。UNEPが中心となり作成したENCORE等、このイニシャルステップを支援するツールを参考にすると良い。
- 物理リスク(気候変動によってビジネスにもたらされる被害)がないことは、生物多様性が自社に関係ないこととは決して同義ではない。物理リスクの有無や程度にかかわらず、移行リスク(気候変動に対応する社会の仕組みや動きによりビジネスが受ける制約およびその流れに乗り遅れるリスク)にも目を向ける必要があり、特に、環境デューデリジェンスや森林破壊ゼロといった動きについていけないことは大きなリスクであり、投資家からの信頼喪失にもつながりかねないため、注意が必要である。
- 生物多様性の分野での取り組みは気候変動ほど形式が未だ確立されていないため、これをチャンスと捉え、今動き出すことでルールメイキングの役割を担える可能性がある。この分野の知見を豊富に持った人材や、NGOとの連携含めた社外からの協力を得ることで、ANAの環境への取り組みの基盤がより強固になることが期待される。