ESG関連投資家との対話
2021年度の主な活動
ESG関連投資家との対話
ANAグループは、2021年12月、定期的に対話を続けているESG関連投資家の皆様と、ANAグループのESG経営の進捗についてオンラインによる意見交換を行いました。


テーマ:ANAグループのESG経営の進捗について
日時:2021年12月7日(火)18:00-19:30
有識者(オンライン参加)
World Benchmarking Alliance
カミーユ・ル・ポルス氏 (Lead, Corporate Human Rights Benchmark)
シャーロット・ハグマン氏 (Research Analyst on the Climate and Energy Transformation)
日時:2021年12月10日(火)17:30-18:30
有識者(オンライン参加)
Hermes EOS
鈴木 祥氏(エンゲージメント担当アソシエート・ディレクター)
全体コーディネート
経済人コー円卓会議日本委員会
石田 寛氏(事務局長)
大出 泉綺氏
ANAホールディングス株式会社
高田 直人(取締役 専務執行役員、グループESG経営推進会議 議長)
宮田 千夏子(執行役員 サステナビリティ推進部長)ほか
有識者からの主なご意見(World Benchmarking Alliance)
“広がる「人権」のスコープ”
- 環境への影響は人権デューデリジェンスの一部であるという認識は今後より一層強くなる。人権デューデリジェンスの法制化が進んでいるEUは、企業による地域への環境負荷を厳しく見ている。
- 人権デューデリジェンスはライツホルダーの生活環境にも密接に影響することから、ジャストトランジションと人権課題を連携させ、気候変動による人と地球への負の影響に着目する必要がある。環境面と人権面の二つのアングルから人権デューデリジェンスを行い、“leave no one behind(誰ひとり取り残さない)”社会の実現が求められる。そのために企業がすべきことはUNGPsに忠実に則った人権デューデリジェンスをまず行い、それに環境テーマも組み込むことである。
- どの程度、そしてどのように環境問題を人権デューデリジェンスで扱うか、ステークホルダー間でも異なった意見がある。ステークホルダーとのエンゲージメントを図り、対話しながら、進めていくと良い。
“取り組むべき課題の特定”
- インパクトアセスメントを通じてまず企業のインパクトと顕著な人権課題を特定し、さらにライツホルダーを取り巻く環境を確認する。特定した課題を、ライツホルダーとのダイアログを通じて、優先順位をつけることが大切である。
- 気候変動が人に及ぼす影響の評価に際して「直接影響*」と「間接影響*」を分けて考えることが必要である。また、課題解決に向けたプロセスを開示することも重要である。
- 直接影響:自社の企業活動により直接引き起こされる影響。問題解決のアクションを単独でとることが可能。
間接影響:サプライヤーが絡む影響や、気候変動に代表されるような一社単独での解決が難しい影響。サプライチェーン一丸となってプラットフォームを通じての取り組みや業界全体での取り組みが必要となる。
- 直接影響:自社の企業活動により直接引き起こされる影響。問題解決のアクションを単独でとることが可能。
“TCFDに基づく情報開示”
- ANAグループは、TCFD提言に沿ってリスクと機会を評価している点や1.5度と4度の複数シナリオで分析している点が良い。気候変動に関する指標に基づき、いかに透明性をもって情報開示するかが評価で重要なポイントとなる。
- アカウンタビリティの観点から、経営・マネジメント体制、CO2削減等、具体的な計画を開示することが必要である。さらに、開示した情報はステークホルダーがより企業の取り組みについて理解し、エンゲージメントを図るカギとなるため、より効果的なステークホルダーとのコミュニケーションを可能にするという観点からも情報開示は非常に重要である。
- 低炭素経済への移行を実現するために、機体の変更等を含め、何をどこまでできるのか、定量的及び定性的に実効性と実現可能性を精査し、1.5度シナリオの実現成功に近づけることが重要である。また、最初から完璧な開示を目指すのではなく、進捗状況を公開するなどできるところから進めるプロセスが大切である。
有識者からの主なご意見(Hermes EOS)
“カーボン・ニュートラルに関して”
- 航空業界においては、SAF実用化が可能になるまで目標達成が難しいが、現実的で実行可能性のある目標を明確に立てることが第一条件であり、さらにそこからもう少し高い目標を掲げることに期待する。
- カーボンニュートラルに向けて、排出削減の目標をより高いものに切り替え、SAF開発に向け他業種とも協業を行っている点は素晴らしい。現在は投資が困難だとしても、全体の供給量増加に向けて研究開発への参加も有効である。
“ダイバーシティに関して”
- ダイバーシティについて、取締役等の議決権のあるポジションに女性の割合が増えることが重要である。一方で、取締役の女性比率にのみ注力し、執行役やマネジメント層の比率が低いのも問題である。執行役員レベルの女性を増やすことも重要であり、現在の目標に向けて改善されることを期待する。
“ガバナンスに関して”
- 持ち合い株式が生む安定株主の存在によりカバナンスが機能しなくなる懸念がある。グローバル基準に従えば、可能な限り削減検討を求める。
“TCFD関連”
- TCFDについて、求められているレベルで開示できている企業は未だ少ない。気候変動による財務インパクトをシナリオ分析に基づいて開示し、それに基づき何をするのか定量的に開示することが求められる。また、ANAグループが気候変動対策の取り組みをより進めやすくするための国への働きかけも重要である。EUではロビー活動の開示も進んできており、明確な情報開示が期待される。
“生物多様性含めた人権DDについて”
- 小さな問題や事例についてもレポート等を通じて情報を開示することが重要である。
- 例えば、森林伐採は環境負荷のみならず、地域住民の生活環境に関連するなど、人権、地域、生活環境等全てにリンクしている。生物多様性も気候変動を軸としており、重要テーマとして取り組むことが求められる。