航空機の運航における取り組み
環境をめぐる世界情勢
ICAOの動き
ICAO(国際民間航空機関)は2010年の第37回総会において、国際航空分野における地球温暖化防止目標として、2050年までの年平均2%の燃料効率改善を目指すとともに、2020年以降は温室効果ガス(CO2)の排出量を増加させないグローバルな目標「CNG2020(Carbon Neutral Growth from 2020)」を採択しました。

CORSIAの導入
2016年に開催されたICAO(国際民間航空機関)第39回総会において、CNG2020(2020年以降の温室効果ガス増加抑制目標)を達成するための国際的な枠組みとして、国際航空のための炭素オフセットおよび削減スキーム「CORSIA」が採択されました。これにより、2021年以降、基準値を上回るCO2排出量に対して炭素相殺(オフセット)義務が課されています。
その後、2022年の第41回総会では、パンデミックに伴う航空需要の変動を踏まえ、2024年以降の排出基準値(ベースライン)を2019年比85%とすることが合意され、実質的な規制の厳格化を図られました。
IATAの動き
世界の主要航空会社が加盟するIATA(国際航空運送協会)は、2021年10月の第77回年次総会において、2050年までに温室効果ガス(CO2)の排出量を実質ゼロにする「2050年ネットゼロ」決議を全会一致で採択しました。これは、航空業界全体が一体となって脱炭素化へ取り組む共通の道標となっています。
SAF導入に向けた法規制の進展
航空業界の脱炭素化において、SAF(持続可能な航空燃料)の導入は最重要課題となっています。欧州(EU)では2025年より、域内空港から出発する航空機に対して一定割合のSAF使用を義務付ける規制(ReFuelEU Aviation)が開始されました。また、日本政府(国土交通省)においても、2030年までに本邦航空会社の燃料使用量の10%をSAFに置き換える目標を掲げており、国内外で法的な枠組みの整備が急速に進んでいます。
ANAグループにおけるCO2排出量削減の取り組み
ANAグループは、2030年度の中期環境目標および脱炭素化目標を達成するためにトランジション戦略を見直し、2050年度までのネットゼロへ向けたトランジション・シナリオを更新しました。2030年度までに、国際線・国内線合わせてCO2排出量を2019年度比で実質10%以上削減していきます。目標達成のため、SAFの活用を中核とする4つの戦略的アプローチ(運航上の改善・航空機等の技術革新、SAFの活用等航空燃料の低炭素化、排出権取引制度の活用、ネガティブエミッション技術*1の活用)を組み合わせ、経済合理性との両立も追求しながら、2050年度ネットゼロを実現してまいります。
- *1. ネガティブエミッション技術:
大気中からCO2を直接回収・除去し、長期間にわたり貯留・固定化する技術の総称

運航上の改善
運航上の改善は、燃料消費量およびCO2排出量の直接的な削減に寄与します。ANAグループでは運航部門を中心に、運航の各フェーズにおいて多岐にわたる施策を展開しています。

従来の「早期加速上昇」「着陸後の逆噴射抑制」「地上走行時の片側エンジン停止」に加え、2024年度からは航空管制機関との連携による「飛行経路の短縮」に伴う燃料削減効果の定量化を開始しました。機体の適切な重量管理、地上電源および地上空調設備の活用など、これら一連の運航改善施策により、2025年度の実績として、CO2排出量を約12万6,500トン削減しました。
| 年度 | 2023 | 2024 | 2025 | |
|---|---|---|---|---|
| 目標 | 燃料 (千KL) |
105 | 114 | 158 |
| CO2 (千t) |
83.0 | 90.0 | 125.0 | |
| 削減実績 | 燃料 (千KL) |
114 | 158 | 158 |
| CO2 (千t) |
90.0 | 124.9 | 126.5 | |
- 主な取り組み項目
早期加速上昇/地上走行時の片側エンジン停止/着陸後の逆噴射抑制/飛行経路の短縮/その他施策
1.整備中
エンジンの水洗い・試運転
ANAグループでは、専用の車両を独自開発し、エンジンコンプレッサー(圧縮機)部分の洗浄を行っています。エンジンは使用するにつれて、コンプレッサー部分に微小なほこりが付着し、燃費が悪くなるため、定期的な洗浄でエンジン性能を回復させています。
また、試運転作業の見直しや効率化を行い、試運転で使用する燃料を年間で1%削減することができました。

飛行機の総重量軽量化
飛行機は、総重量が軽い方がより少ない燃料で飛行することができ、CO2排出量を抑制することができます。ANAグループでは、航空機への給水量の適正化、機内搭載品の軽量化を実施しています。
例えば、「翼の王国」(機内誌)の電子化、「Sky Shop」(ショッピングカタログ)の紙質変更やページ数の削減、食器やお飲物などの搭載量の見直しや使用率の低い備品の取り下ろしを実施しています。さらに、パイロットや客室乗務員のマニュアルを紙からi-Padに変更することで、70%の減量を実現しました。

2.飛行計画の作成
最適高度・速度・経路の選定
一般的には、空気密度が低い高い高度ほど、燃料消費量は少なくなります。また、必要以上に速度をあげることは、燃料消費量の増加につながります。気象条件によっては燃料を最適化できる経路も日に日に異なります。パイロットとディスパッチャーは、一便一便ごとにあらゆる情報を確認しながら、最適な高度や速度、そして経路の選定を行い、飛行計画を作成しています。また、例えば国内線など、1人のパイロットが1日に複数便を運航するような場合には、便間に次の便のフライト情報をパイロットのiPadに送り、その時点での最新の情報を使用して、飛行計画の再作成を行っています。
3.駐機中
APU(補助動力装置)の使用時間を短縮
飛行機には翼にあるメインエンジンの他に、もうひとつAPU(補助動力装置)と呼ばれるジェットエンジンが最後尾に装備されています。APUは出発時のメインエンジンの作動や空調設備に使用する「圧縮空気」と、地上でメインエンジンの作動前に必要な「電気」を作る役割を担っています。APUの作動は燃料を必要とし、CO2を排出します。そこで、地上駐機中はAPUを使用する代わりに、地上から電力や空調を供給することができるGPU(Ground Power Unit)を飛行機に接続し、APUの使用時間を短くする取り組みを行いCO2排出の削減に貢献しています。
4.離陸
浅い離陸フラップの使用
フラップは高揚力装置と呼ばれ、離陸時に翼の面積を大きくするための装置です。翼面積をさらに大きくする深いフラップは、短い滑走路などで早く離陸できるメリットがある一方で、空気抵抗が増え、飛行機が上昇や加速を行う際に、より大きなパワーと燃料が必要となります。
滑走路が長い場合など、できる限り浅いフラップを使用することで、空気抵抗や燃料消費量の低減、そしてCO2削減につながります。
5.上昇中
早期加速上昇
離陸後の早いタイミングで加速しながら上昇し、フラップを収納、巡航高度にできるだけ早く到達することで燃料消費を抑えることができます。
6.巡航中
最新の気象情報を使った上空での飛行経路の見直し
ANAグループでは、飛行計画作成時に加えて、飛行機が出発した後にも再度気象情報を確認し、状況に応じて飛行経路を変更する取り組みを行っており、これをDARP(Dynamic Airborne Reroute Procedure)方式と呼んでいます。
より最適な燃料計画・飛行経路での運航が可能となり、CO2削減につながります。
7.降下中
エネルギー効率の良い降下法(エンジン推力を絞り必要以上のパワーを出さない降下方法)
連続降下方式(Continuous Descent Operations:CDO)は、降下開始地点から最終進入地点まで、最適かつ滑らかなアプローチ経路で連続的に降下を行う方式です。高度を段階的に下げる従来の降下方式と比較して降下中の水平飛行を排除し、エンジン推力の調整を最小限に抑えられるため、燃料消費量およびCO2排出量の削減、ならびに空港周辺地域における騒音低減に寄与します。
ANAグループでは、関西国際空港の深夜・早朝便において本方式を運用しており、現在は関係機関と連携のもと、対象空港の拡大を進めています。
フラップを出すタイミングの考慮
飛行機は着陸に向けた降下中に速度を下げつつ、フラップを出して着陸します。
フラップを出すことで空気抵抗が大きくなるため、できるだけフラップを出すタイミングを遅くすることで、燃料消費量の削減、CO2削減につなげています。
ランディングギアを出すタイミングの考慮
滑走路への着陸に使用するランディングギアは、降下中に下ろします。ランディングギアを下ろすことで、大きな空気抵抗が発生し燃料の消費量も増加します。降下中は、ランディングギアを下ろすタイミングを安全上問題ない範囲で、できるだけ遅くし、燃料消費を抑えCO2削減につなげています。
8.着陸時
着陸後の逆噴射抑制
着陸した飛行機は、リバーサー(逆噴射装置)やブレーキを使い、減速します。エンジンに取り付けられたリバーサーを使うことで、一時的にエンジンのパワーを上げ、高速で着陸した飛行機をより早く減速させることを可能とします。
着陸する滑走路が十分に長く、安全上問題がない場合は、リバーサー使用時のエンジンパワーを調整して小さくすることで、燃料消費量を抑制し、CO2削減に繋がり、騒音を抑える効果もあります。
地上走行時の片側エンジン停止
着陸後は、一つのエンジンでも十分に地上走行が可能です。パイロットは天候や飛行機の周辺環境を確認、安全に実施できるかどうか判断します。片方のエンジンを止めて1つのエンジンパワーを使って地上走行をすることにより、燃料消費量の削減、CO2削減につなげています。
9.フライト後
フライトの振り返り、地上スタッフによるフライトデータの分析を行い、日々の運航だけでなく環境負荷低減への取り組みにも活かしていきます。
ANAグループは、グループ行動指針「ANA's Way」に基づき、社員一人ひとりが自ら行動して価値創造やブランド力の向上、企業文化の強化やグループ一体感の醸成に貢献した取り組みを「ANA's Way AWARDS」として表彰しています。
本表彰制度では、「Safety(安全)」や「Sustainability(サステナビリティ)」などさまざまなカテゴリーにおいて優れた実践事例を表彰・グループ全体に共有することで、生産性向上のサイクルを促進させ、部門や会社の壁を越えたチームスピリットの強化を目指しています。
航空機等の技術革新
低燃費機材・エンジンの導入
燃費効率にすぐれたボーイング787型機のローンチカスタマーとして開発に携わり、2021年には就航10周年を迎えました。2022年7月末現在77機(B787-8/-9/-10)を運用するとともに、エアバスA320neo/A321neo型機をはじめとした最新鋭の航空機を積極的に導入し、2025年3月末時点でグループの運用機材(ジェット機対象)の82.7%が低燃費機材となっています。さらに、ボーイング737-8型機の導入に向けての最終購入契約を締結し、2025年度以降の導入を目指します。
また、2030年度にはボーイング787型機100機以上の体制を目指し、低燃費機材への早期転換を推進するとともに、航空機以外にも、機体表面に鮫の肌のような特殊な加工を施す ことによって、飛行中の空気摩擦抵抗を低減し、CO2排出量削減に貢献する実証等に取り組んでいます。
日々の機材運用においても、低燃費機材を優先的に使用するなど環境負荷低減に尽力しています。
機体の改修
リブレット技術の実装機が初めて就航

ANAは、ルフトハンザ テクニック社とBASF社が共同開発したリブレット加工フィルム「AeroSHARK」をボーイング777型機に順次導入しています。
2024年9月に初号機である貨物専用機(フレイター)の運航を開始し、2025年4月には2号機(旅客機初)となる機体(JA796A)を国際線に投入しました。ボーイング777型機の貨物機および旅客機の双方向に同技術を導入したのは、ANAが世界初の航空会社となります。
本技術の適用により機体表面の摩擦抵抗が低減され、1機あたり年間約250トンの燃料消費量削減、および約800トンのCO2排出量削減効果が見込まれています。
- ANAの年間平均飛行時間を前提として、ルフトハンザ テクニック社が算出した最大予測効果。

AeroSHARKとは?
ルフトハンザ テクニック社とBASF社が共同開発したリブレット加工フィルム。
サメ肌の摩擦抵抗を低減する構造に着想を得た機能性表面フィルムで50マイクロメートル程度の微細加工が施されています。
ウィングレットの装着
ANAグループは、2010年に国内航空会社として初めてボーイングB767-300ER機にウィングレットを装着しました。現在、同改修を施した国際線仕様機等が継続的に運航されており、年間約14,700トンのCO2排出量削減に貢献しています。
次世代塗装システムの採用
従来のコーティングと比べ、耐候性に優れ、揮発性有機化合物の含有量が少なく、軽量化にもつながる次世代ペイントシステムを採用しています。
客室シートの軽量化
ANAグループは、トヨタ紡織と共同で国内普通座席のシートを開発しました。
ANAグループの航空会社としてのノウハウとニーズを、トヨタ紡織は長年に渡る自動車用シートの開発で培ってきたもの作り技術を生かして、「お客様の心に残るひとときを」をコンセプトに、どなたでもリラックスできるシートを開発しました。
今回のシート開発に当たっては、快適さを追求しながら客室重量の軽量化に対しても挑戦し、従来のシートと比較して、1機あたりの195kgの軽量化を図ることに成功しました。この軽量化により、1機あたり年間で約15KLの燃料削減となります。

ICAO離着陸サイクル
着陸時の高度3,000フィートから、離陸上昇時の高度3,000フィートまでを離着陸サイクルとして、エンジンをこの条件で運転し、各排出量を計測するものです。エンジンテスト条件は下表の出力状態および作動時間が条件となっています。
| 出力状態 | 定格出力(%) | 作動時間(分) |
|---|---|---|
| 離陸 | 100 | 0.7 |
| 上昇 | 85 | 2.2 |
| 下降 | 30 | 4.0 |
| 地上滑走 | 7 | 26.0 |

SAFの活用等 航空燃料の低炭素化
ANAグループの脱炭素社会の実現に向けた戦略の中核となるのはSAFの活用です。2030年度には消費燃料の10%以上をSAFへ置き換えることを環境目標とし、2050年度には消費燃料のほぼ全量を低炭素化していきます。現在、国産のSAFの安定供給に向けて、関連企業、関連省庁と連携して取り組んでいます。
| 2019年 |
|
|---|---|
| 2020年 |
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| 2021年 |
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| 2022年 |
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| 2023年 |
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| 2024年 |
|
| 2025年 |
|
詳細はこちらをご覧ください。
再生可能エネルギー大手NESTEと中長期的なSAFの調達に関する覚書を締結
環境省「令和3年度二酸化炭素の資源化を通じた炭素循環社会モデル構築促進事業」に採択
「SAF Flight Initiative」コーポレート・プログラムの受け付けを開始
国産SAF(持続可能な航空燃料)の商用化および普及・拡大に取り組む有志団体「ACT FOR SKY」を設立
JOINと持続可能な航空燃料(SAF)に係る連携強化に向けた協力覚書を締結
ANAと伊藤忠が再生可能エネルギー企業RavenとSAFの調達に関する覚書を締結
「SAFの活用による羽田=八丈島路線のCO2排出量削減事業」が東京都バイオ燃料活用における事業化促進支援事業に採択されました
排出権取引制度の活用
排出権取引制度は、排出量取引制度(ETS)やCORSIAなどの排出削減規制の遵守に用いられる対策の一つです。ANAグループでは、直接削減を補完する短中期的な対応として、国際的な枠組みや各国の制度に基づいた適切な運用を行っています。将来的には、SAFの導入拡大や技術革新による直接削減を最大化させることで、2050年度には排出権取引制度に依存しないネットゼロの実現を目指します。
ネガティブエミッション技術(NETs)の活用
2050年度のネットゼロ実現に向け、SAFの導入等による直接削減を最大限に推進した上で、なお解消しきれない「残存排出量」を相殺するために、ネガティブエミッション技術*1(NETs)による炭素除去(CDR:Carbon Dioxide Removal)を戦略的な手段と位置づけています。
ANAグループは将来を見据えた先駆的なアクションとして、Direct Air Capture*2(DAC:大気直接炭素回収)の活用を進めており、2023年には、米国1PointFive社*3との間で、DAC由来のCDRクレジットに関する調達契約を締結しました。
中期経営戦略においては、技術の成熟度や外部環境の変化を慎重に見極めながら、実効性のある除去手段の確保に向けた検討を継続してまいります。 将来的には、これらの革新的な炭素除去技術とANAグループで取り組んでいる排出削減策を最適に組み合わせることで、持続的な成長と2050年度ネットゼロの両立を追求してまいります。
- *1.ネガティブエミッション技術:
大気中からCO2を直接回収・除去し、長期間にわたり貯留・固定化する技術の総称 - *2.DAC(Direct Air Capture):大気からCO2を直接回収する技術
- *3.1PointFive社
1PointFive社は、カーボン・エンジニアリング社のDAC技術やAIR TO FUELS™技術、地中貯留ハブを含む脱炭素ソリューションの展開を通じて2050年までに世界の気温上昇を1.5℃に抑えることを目指しています。「AIR TO FUELS™」はカーボン・エンジニアリング社の登録商標です。
社外での取り組み
ANAグループは、気候変動に関するロビー活動および業界団体への参画において、パリ協定の目標(1.5℃目標)との整合性を確保するためのマネジメントシステムと経営レベルのガバナンスフレームワークを構築しています。以下に、その具体的な取り組みを開示します。
経営レベルのガバナンスフレームワーク
ANAグループは、気候変動関連の対応を重要な経営課題の一つと位置づけ、国際機関、政府機関、業界団体など社外機関とも連携しながら、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを進めています。具体的には、国土交通省が主導する将来の航空交通システムの構築に関する「CARATS(Collaborative Actions for Renovation of Air Traffic Systems)」や、国際的な研究開発事業である「GOBLEUプロジェクト」への参画、さらに宇宙航空研究開発機構(JAXA)との協働による定期便を利用した温室効果ガスの観測実証(JAXA共同プロジェクト)など、気候変動対策に関する研究や最先端技術の検証・実装を行っています。また、国際民間航空機関(ICAO)の航空環境保全委員会(CAEP)に関連する活動や、持続可能な航空燃料(SAF)に関する提言などにも参画しています。
また、ANAグループは、国際航空運送協会(IATA)、Association of Asia Pacific Airlines(AAPA)、Star Alliance、Sustainable Aviation Fuel Users Group(SAFUG)などの業界団体に参画しています。IATAでは、ANAの代表取締役社長がBoard of Governors(BOG)のメンバーとなっているほか、環境に関する専門委員会にも関与し、業界全般における環境課題への対応に取り組んでいます。
こうした制度変更に関する取り組みは、ANAホールディングス株式会社代表取締役社長を議長とし、チーフESGプロモーションオフィサー(CEPO)を長とする「グループESG推進役員会議」において、重要方針や重要課題に関するモニタリングを年4回行う体制を構築しています。経営戦略にかかわる重要な環境課題は「グループ経営戦略会議」にて議論・審議し、「取締役会」に報告しています。取締役会は、重要課題を含めたグループ全体の経営基本方針や計画を決定しつつ、グループ各社の経営方針および業務執行を監督する役割を担っています。
さらに、ANAグループは、脱炭素化に不可欠なSAFの安定調達に向けて、日本政府の政策策定への働きかけを行っており、「グリーンエネルギー戦略(中間整理)」にも意見が反映されています。今後も、航空関連事業の脱炭素化に向けて、関係機関との対話と連携を通じた取り組みを進めていきます。
【環境に対する社外機関・業界団体との具体的取り組み】
CARATS(Collaborative Actions for Renovation of Air Traffic Systems)
ANAは、国土交通省が主導する将来の航空交通システムの構築に向けた産学官連携の枠組み「CARATS(将来の航空交通システムに関する長期ビジョン)」に参画しています。現在は2040年を見据えた長期ビジョンのもと、安全性や運航効率の向上とともに、航空分野の脱炭素化に向けたCO2排出量削減目標の達成を目指した具体的な施策の検討が進められています。
当社は、本邦航空会社としての運航実績や知見をもとにシステム構築への提言を行っているほか、下部組織の「CO2削減推進サブグループ」等へも参画。実務レベルにおいても、最新の気象・運航データを活用したフライトプランの最適化システムを導入するなど、効率的な運航方式の早期実装を推進しています。また、気候変動に伴う異常気象の激甚化への適応策として、慶應義塾大学との共同研究成果から誕生した同大発ベンチャー、BlueWX社と連携し、高度な気象予測技術やAIを活用した運航判断支援システムを運用。予測が困難な乱気流や悪天候を高精度に回避することで、環境負荷の低減と同時に、スケジュール遅延や欠航を防ぐ強靭な運航体制を構築しています。さらに、欧米の次世代運航システム(米国のNextGenや欧州のSESAR)とも連携したグローバルな動向を見据えつつ、タイムリーな情報共有を可能にするシームレスな航空管制ネットワークの実現に協力し、環境負荷の低減と持続可能な航空ネットワークの構築に貢献してまいります。
ICAO(International Civil Aviation Organization)
ANAは、国際民間航空機関(ICAO)における国際標準およびルール形成の議論に本邦航空会社としての知見をもって参画しています。長年にわたりICAO日本政府代表部へ専門調査員を派遣しているほか、国土交通省のアドバイザーとして航空環境保全委員会(CAEP)やその下部組織(CORSIA・航空燃料ワーキンググループ・長期目標タスクグループ)の会合に継続して出席。国際航空セクターの長期目標(LTAG)である「2050年ネットゼロ」の実現に向け、排出削減枠組みの制度設計やCORSIA適格クレジットの適格基準策定において、具体的な提言と助言を行っています。
また、2026年からは当社グループCSOが「ICAOグローバル・アンバサダー」の日本代表に就任し、「ICAO戦略計画2026-2050」の達成に向けた広報活動や次世代のキャリア開発支援に協力しています。今後も国際機関や政府との連携を通じて、航空業界の持続可能な成長と発展に貢献してまいります。
IATA(International Air Transport Association)
ANAは、世界の主要民間航空会社が加盟する国際航空運送協会(IATA)において、業界共通のグローバル基準やサステナビリティに関する方針議論に参画しています。当社代表取締役社長が意思決定機関である取締役会(Board of Governors)のメンバーを務めるとともに、その下部組織である「産業戦略・政策委員会(ISPC)」において業界の重要政策に関する対話に加わっています。
環境分野では「Sustainability Industry Committee」のメンバーに選出され、定期会合等を通じて航空業界の脱炭素化に向けた課題解決や政策提言を推進。持続可能な航空燃料(SAF)の普及拡大をはじめ、ICAOが推進するCORSIAに対する業界としての実効的な仕組みづくりなど、国際的な枠組みへの対応について本邦航空会社としての知見を提供し、業界全体の持続可能な発展に寄与しています。
AAPA(Association of Asia Pacific Airlines)
ANAは、アジア太平洋地域の主要航空会社で構成されるアジア太平洋航空会社協会(AAPA)において、地域特有の課題を踏まえた環境政策やサステナビリティ戦略の推進に寄与しています。当社は同協会の執行部において2026年度の副議長を務めており、2027年度には議長への就任が予定されるなど、同協会の意思決定と地域全体の議論を率いています。
環境分野では「環境委員会(Environment Committee)」の会合等を通じて、アジア太平洋地域におけるSAFの普及やCORSIAへの参画促進に向けた対話を展開。域内のエネルギー事情や地理的特性を考慮しつつ、地域全体での実効性ある脱炭素化の実現に向けて本邦航空会社としての知見を提供し、メンバー各社との連携強化に貢献しています。
Star Alliance
ANAは、世界最大規模の航空アライアンスである「スターアライアンス」において、最高意思決定機関である「社長会(CEB)」のメンバーを務め、アライアンス全体の戦略策定に参画しています。
サステナビリティ分野においては、加盟各社との強固なネットワークを通じ、環境負荷低減に向けた先進的な知見の共有や課題の抽出、推進可能な取り組みに関する協議・検討を行っています。単独の航空会社の枠組みを超えた連携を最大限に活かし、グローバルな環境課題の解決に向けた国際的な連携強化に努めています。
GOBLEUプロジェクト(温室効果ガスの観測拡充に向けたANAとJAXAの協働)
ANAグループは、2020年より温室効果ガス観測の拡充に向け、宇宙航空研究開発機構(JAXA)との協働による「GOBLEUプロジェクト」を推進しています。本プロジェクトは、衛星よりも低い高度を飛行する定期航空機の特性を活かし、地表面の大気成分等の分布を詳細に遠隔観測する先進的な取り組みです。
2025年12月には、ボーイング737型機の客室内一部を改修し、世界で初めて定期旅客便の機内からリモートセンシング技術を用いた大気成分等の恒常的な自動観測を行う実証を開始しました。また、2026年3月には、次世代地球観測衛星、航空機、地上ネットワークを連動させ、二酸化炭素の排出・吸収量を発生源別に高精度でモニタリングする技術開発が、政府の「宇宙戦略基金」の対象事業に採択されました。これら一連の取り組みを通じ、温室効果ガス削減に向けた科学的エビデンスの提供や、透明性の高い国際的な環境評価指標の確立を目指しています。
政府検討会への参画と脱炭素ロードマップの策定
ANAは、日本の航空分野における脱炭素化と国際競争力の強化に向け、国が主催する主要な検討会に参画しています。「航空機運航分野におけるCO2削減に関する検討会」においては、委員として参画し、2050年脱炭素社会の実現に向け、航空機運航全般のCO2排出削減のための取組について議論しています。さらに、空港施設やグランドハンドリング車両の電動化・再生可能エネルギー導入を促す「空港分野におけるCO2削減に関する検討会」にもオブザーバーとして参画し、運航と地上インフラの両面から日本の航空セクターにおける脱炭素施策の具体化を推進しています。
官民協議会におけるSAFサプライチェーンの構築
国産SAFは脱炭素のみならず、エネルギー安全保障の観点からも重要であり、その生産体制構築および国際競争力のある供給体制の確立を目指し、国土交通省と経済産業省が共同設置した「持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進に向けた官民協議会」には、当社GX担当役員が構成員として発足時より出席しています。
実務レベルにおいても、同協議会傘下の「更なるSAF導入促進策検討タスクフォース」および「流通ワーキンググループ」に構成員として、「持続可能な航空脱炭素化に関する有識者会議」にオブザーバーとして参画。SAFの導入を加速させるべく、技術的・経済的な課題や解決策を関係者とともに協議し、具体的な制度設計に寄与しています。
業界内外の連携を通じた環境対策の推進と社会への発信
国内の航空各社が加盟する「定期航空協会」の枠組みにおいて、JATA等とも連携しながら会員社間の環境対応を推進しています。当社代表取締役社長が定期航空協会の会長を務めた際には、「2050年カーボンニュートラル」の業界目標達成に向けた基調講演を主導。加えて、運輸総合研究所の調査検討委員会などにも委員や研究員を輩出し、学術・調査の面からも本邦航空業界の環境負荷低減活動を後押ししています。
先進テクノロジーの機体実装と運航燃費の改善(AeroSHARK)
世界で初めてボーイング777型機の貨物専用機と旅客機の両方に、リブレット加工フィルム「AeroSHARK」を導入。機体表面の空気抵抗を低減することで、年間約250トンの燃料消費量および約800トンのCO2排出量削減を見込んでおり、本取り組みは第26回「物流環境大賞」(先進技術賞)を受賞するなど外部からも高く評価されています。
次世代航空機開発に向けた官民連携とメーカーとの対話
経済産業省が主催する「航空機の脱炭素化に向けた新技術官民協議会」や「航空機産業小委員会」へ参画し、日本の航空機産業の成長と環境対応の方向性づくりに貢献。また、エアバス社やボーイング社をはじめとする航空機メーカーとの定期的な対話を通じて、水素や電動飛行技術の開発動向を把握し、将来的な導入に向けたインフラ整備等の課題抽出を進めています。
宇宙・航空技術の融合による地球観測イノベーション
当社グループが有する広範な運航ネットワークをインフラとして活用し、JAXAとの共同プロジェクト等を通じて高精度なモニタリング技術を開発。温室効果ガス削減に向けた科学的エビデンスを提供し、透明性の高い国際的な環境評価指標の確立に寄与しています。
国際イニシアチブへの参画と国内外における産業連携の推進(WEF)
世界経済フォーラム(WEF)のダボス年次総会をはじめとする国際舞台へ当社経営トップが継続的に出席。WEF傘下の「Airports for Tomorrow」やワークショップへの継続的な関与を通じて、グローバルな環境規制やサステナビリティの最新動向を正確に把握しています。
国産SAFの普及に向けた産業間連携「ACT FOR SKY」の牽引
国産SAFの普及に向けた産業間連携の有志団体「ACT FOR SKY」に設立幹事会社として参画。参画企業は53社(2026年6月時点)へ拡大。「Book & Claim(環境価値の移転取引)」や「Scope3」の利用促進など、最先端のテーマを掲げたワーキンググループ活動を展開・牽引しています。
アジア太平洋地域(ASEAN)におけるアドボカシーと相互理解の促進
東南アジア諸国連合(ASEAN)の「第52回航空運送ワーキンググループ(ATWG)関連会合」にて登壇。日本の航空脱炭素化における特有の市場環境やインフラ事情に対する東南アジア諸国の深い理解促進に寄与しています。
SAF Flight Initiative(SFI)
旅客・荷主に対してScope 3排出量の削減価値を提供する「SAF Flight Initiative(SFI)」を展開。法人向けの「カーゴ・プログラム」「コーポレート・プログラム」に加え、フォワーダーを介した「3社間契約」モデルを導入。さらに2026年6月には、一般個人旅客を対象とした新たな「パーソナル・プログラム」を新設し、購入証明書の発行を通じて個人需要の環境貢献を可視化しています。
パリ協定との整合性に関するレビュー
当社グループが所属する業界団体や関連するイニシアチブのアクティビティ活動方針が、当社の気候戦略および「パリ協定の目標(1.5℃目標)」にアライン(整合)しているかを担保するため、全社トータルリスクマネジメント(ERM)システムを通じた定期的なレビュープロセスを適用しています。 具体的には、各業界団体の意思決定におけるポジションや政策提言内容を毎年継続的に評価・監視し、当社のTCFD提言に基づく設定目標や「脱炭素に向けたトランジション・シナリオ(1.5℃シナリオ等)」と大幅に乖離が生じていないかを、経営レベルで確認しています。評価結果は、定期的にグループ経営戦略会議へ報告されるほか、万的一致が確認された場合は速やかにエスカレーションを行う体制を構築しています。
立場が不一致の場合の対応ルール(エスカレーションフレームワーク)
定期的にレビューした結果、所属する業界団体の気候変動政策や活動が、当社の気候戦略やパリ協定の目標と相反する(不一致である)ことが判明した場合、グループ経営戦略会議にて速やかに対応を協議し、ESG担当役員主導のもと以下の明確なエスカレーションルール(対応フレームワーク)に則り、段階とした措置を行います。
Step 1
不一致の特定: 業界団体の主張とANAグループの立場における不一致(ミスマッチ)を明確化する。
Step 2
影響の評価: その不一致がどのような効果・懸念を生じさせているのかを評価する。
Step 3
見直しの判断: 業界団体の主張に変更の余地があるか、またはその見直しの方向性やタイムライン(期間)を判断する。
Step 4
建設的な意思表明: 不一致を解消するための建設的なアプローチを業界団体へ提言し、是正要求について合意を形成する。
Step 5
進捗管理: 改善に向けた進捗状況を継続的にモニタリングする。
継続的な働きかけを実施しても立場の一致が見られない場合、最終的な対抗措置として、脱退の検討・当該団体からの脱退を行います。
【適合レビュー結果(2025年度実績)】
直近のレビュー(2025年度実績)において、当社が加盟する主要な業界団体の姿勢と、パリ協定の1.5℃目標と相反する重大な不一致は確認されていません。(該当事項なし)
気候政策へのポジションと支出
当社グループは、航空業界の脱炭素化における公的政策の導入を一貫して支持しています。
【具体的な政策ポジション】
SAFの普及をはじめとする脱炭素制度導入に対し、積極的な政策提言を行っています。「持続可能な航空燃料(SAF)導入促進向けた官民協議会」等を通じた国産SAFの安定供給および自国産業強化への寄言にとどまらず、社会全体で移行コストを公平に負担する「日本型モデル」の重要性に向け、社会への働きかけや提案を実施しています。また、環境投資の観点から、国内のGX-ETS等カーボンプライシング制度の導入についても、市場の健全な発展を促す仕組みであることを前提に、一貫して「賛成」の立場を表明しています。
【業界団体への関与における透明性の確保】
加盟団体における透明性を確保するため、IATA(国際航空運送協会)をはじめ、気候変動政策に関連する主要な業界団体への加盟状況および決議案価値を開示しています。
| 政策領域 | ANAグループの立場 | 主な関与チャネル |
|---|---|---|
| SAF普及・国産SAFサプライチェーン構築 | 積極支持 | SAF導入促進官民協議会、ACT FOR SKY |
| 日本型SAFコスト負担モデルの主導権 | 積極支持・提言実施 | 政府への直接提言・意見書提出、クリーンエネルギー戦略への意見反映 |
| GX-ETS(国内排出量取引制度) | 支持 | GX推進推進協議会提言 |
| CORSIA(国際航空カーボンオフセット制度) | 遵守・積極参加 | ICAO CAEP、IATA |
| カーボンプライシング全般 | 支持(健全な制度前提) | 業界団体、政府懇談会での対話 |