2026/04/03
ANAグループでは、海洋漂流ごみを活用したフライトタグの販売を開始しました。
本商品はANAグループ社員提案制度から実現し、フライトタグの糸の一部には、ANAグループ社員が実際に石垣で拾った海洋ペットボトルや、機内から回収したペットボトルが使用されています。
海洋ごみ問題の解決を目指した1年半にわたる挑戦を、企画者の想いとともにご紹介します。
企画をしたのは、石垣出身の松原さん(ANA 整備センター)。
高校生の時に、海で初めて漂着ごみを見て以来その光景が忘れられずにいました。
3年ほど前に石垣の海を久しぶりに訪れた時、砂浜に漂着したごみの多さに驚き「きれいだった石垣の海を取り戻したい」その一心で、まずはごみ拾いからスタートしました。
活動を続ける中で、海のごみのほとんどは街から雨や風によって運ばれてきたものだという事実に気づきます。
「海辺を掃除するだけでは足りない。私たちの日常生活から意識を変えていく必要がある。」
そう確信した松原さんは、石垣に翼を広げるANAグループの一員として、またこの地を故郷に持つ一人として、「この美しい海を守る責任がある。自分たちにできることはないか」という強い想いで、社内提案制度に企画を提出しました。
松原さんは、ごみを「資源」として循環させ、商品として手に取ってもらうことで、人々の意識・行動変容を促す仕組みが作れないかと考え、2つの挑戦をします。
1つ目の挑戦は、ごみを新たなモノに生まれ変わらせることです。
何度も石垣に足を運び、同じ志を持つ仲間と協力して海を綺麗にしながら海洋ごみを集めたり、ANA沖縄空港株式会社と連携し、石垣空港到着便の機内で排出されたペットボトルを回収したりと、モノづくりの材料を集めるところから着手しました。
こうして集めた海洋プラスチックに、回収したペットボトルを混合することで品質を安定させ、付加価値の高い「OCEAN THREAD®」再生糸へと循環し、さらにこの糸を素材とした「フライトタグ」へと製品化させることで、ごみが再び価値を持つサイクルを形にしました。
デザインにもこだわり、あえて「OCEAN THREAD®」再生糸の色を活かした白地に、自身でゼロから描き起こしたクジラのモチーフで、海への情熱を表現しています。
2つ目の挑戦は、環境問題に対する意識の醸成です。
松原さん自身が講師を務め、海洋ごみ問題について一緒に考える特別授業を石垣の小学校で開催しました。
これまでもANAグループのキャリア教育の一環で、さまざまな学校を訪れてきた松原さん。
今回の授業では、単に知識を伝えるだけでなく、子供たちが楽しみながら学べるよう、自ら「海の豊かさを守るゲーム」を作成して実施しました。
QRコードを読み込み、「イベントカード」と「アクションカード」を順番に引いていくゲームになっており、どんなことが起きると海が汚染されていくのか、どんなことをすると海を守ることができるのか、「汚染度」をポイントで表すことによって、遊びながら学ぶことができる仕組みとなっています。
授業を受けた小学生からは、「まずは落ちているごみを拾おうと思いました」「使い捨てプラスチックはなるべく使わないようにします」といった感想が寄せられ、大成功に幕を閉じました。
全ての工程が分かっているようで見えていないことが多く、前に進んだら壁が見える。
その壁を越えてみるとまた次の壁が、という感じでした。
これまでANAグループでは、機内の座席カバーや従業員の制服、または製品の製造過程ででる切れ端など、「捨てるはずだったもの」を商品化したことはありましたが、捨てられている「ごみ」から商品を作るということは初めての取り組みでした。
前例がないからこそ、誰をターゲットに、どうやって販売するのか、すべてが手探り状態で、時間をかけてトライ&エラーを重ねました。
再生素材ゆえ、有害物質の検査や製造の遅延など、数々の技術的・スケジュール的なハードルもありましたが、お客様に安心して手に取っていただけるよう、万全な準備をしてきました。
糸を制作した株式会社オーシャンクラス、タグを製品化した興和株式会社、販売元の株式会社FUJISEY、全日空商事株式会社と、さまざまな企業の多大なる協力のおかげで、商品化することができました。
この苦労があったからこそ、商品ができた時には感動しましたし、この過程も全てとても重要だったと思います。
引き続き、海を守る活動は続けていきたいと思っています。
今回、ごみを資源化して商品にするというスキームをつくることができました。
将来的には、海洋ごみの回収はもちろんですが、この課題の認知が広がり、ごみが海に流れ出る前に止められる仕組みも実装した、循環型の事業を成立させたいと思っています。
ビジネスとして回る仕組みを作ることこそが、ごみを出す側の行動を変える最大の近道だと考えています。
また、出張授業において「気づきが行動につながる」ということを検証できたので、教育も継続して挑戦していきたいです。
海洋に流入するプラスチックごみは年間約800万トンと言われており、2050年には魚よりも残存する海洋プラスチックごみの量が上回ると予測されています。
この問題の解決には、何より「一人一人の小さな気付き」が重要です。
まずは、道端に落ちているごみを見かけたら、拾って通常のごみ処理の仕組みに戻す、それだけでも世の中を変えることができます。
海洋プラスチックも元々は、私たちの生活を豊かにしてくれた貴重な資源です。
過去の豊かさに感謝をしながら、ごみ(資源)を回収し、未来の海を本来の美しい”美ら海”に戻していけたら嬉しいです。
一緒に海を綺麗にしていきましょう。
ANAグループはこれからも、社員一人ひとりの情熱を原動力に、航空輸送という枠を超え、地球環境の保全に真摯に向き合ってまいります。