Interview
次の時代の
パイロットを育てる。
#運航乗務員(自社養成パイロット)

石川 敦士
ボーイング777機長・教官(インタビュー時)
1993年入社 法学部政治学科卒業
Interview 1
「学部・学歴不問」の
言葉に惹かれて。
大学では法学部に所属し、卒業後は銀行か商社で働くことができたらと漠然と考えていました。しかし、ある日の新聞でANAの運航乗務職(自社養成パイロット)の求人広告と出会い、そこに「学部・学歴不問」という言葉を見つけた時、ごく自然にチャレンジしてみようと体が動いていました。きっと、その当時の私の中で航空機のパイロットはF1レーサーやプロ野球選手のような存在だったのだと思います。そんな職業を自分が今から目指せるという事実が大きなチャンスに映ったのでしょう。選考が進むにつれ、パイロットへの思いは強くなっていきました。そして、ANAに入社。熊本での座学訓練とアリゾナでの飛行訓練は厳しいものでしたが、苦楽を共にする同期がいたことで乗り切ることができました。帰国後は約3年の地上勤務、再び熊本での応用訓練を経て、入社4年目にいよいよB767副操縦士として発令を受けました。

Interview 2
立場が変わり、
意識も変わっていく。

副操縦士時代は様々な機長と共に飛ぶ中で自己研鑽に励む毎日でした。例えば、飛行ルートの選択次第で機内サービスの時間を長くも短くもできることはパイロットの仕事の醍醐味のひとつ。しかし、毎回、こうすれば上手くいくという正解があるわけではありません。また、お客様に不安を与えず、安全、快適、定刻に目的地にお届けするためには、訓練、事前準備は当然ですが、厳しい体調管理も求められます。常に向上心と緊張感を持ち、フライトに臨んでいました。そして、いよいよ機長に昇格。運航責任者として書類にサインする瞬間のプレッシャーは想像以上のものがあります。また、機長になってからは社会貢献への意識も強くなり、とくに訓練生の指導担当も兼務するようになると、「次の時代のパイロットを育てる」といったことを自分の使命のひとつとして考えるようになりました。
Interview 3
的確な判断のための
意志と謙虚さを。
現在、指導を担当するシミュレーター訓練では、実機では行いにくい悪天時や緊急時の運航を集中して訓練を行いますが、私が心がけているのは本人たちの主体性を大切にすること。まずは、彼ら自身が自らの性格や考え方に気づき、客観的に捉えることで、意志を持って判断できるようになってほしいのです。さらに、自分以外のパイロットの助言にも耳を傾ける謙虚さも教えていきたい。「2人で飛ぶ」という意識を高めることで、より安全なフライトが実現できることを伝えていけたらと考えています。そして、そのために私自身も先輩後輩関係なく、積極的にコミュニケーションを重ね、相手の感情を理解しようと努めています。空の交通量が増え、パイロットに求められるオペレーションも複雑化する時代。コクピットの中での意思疎通は今まで以上に重要になってきますからね。

Interview 4
先輩たちから
受け継いだものを次世代へ。
最後にANAの魅力について。たとえば、世界中のパイロットの中で台風のすぐ脇を飛んで着陸した経験のあるパイロットは限られます。ANAのパイロットの間にはそういった自分の貴重な経験をコーヒーでも飲みながら気軽にみんなに話す文化があります。役職や立場を問わず、失敗談も共有し、それぞれが「自分だったらどうするだろう」と考える風土があります。これは、本当に素晴らしいANAの財産です。私の今後の目標のひとつは、こうして先輩たちから受け継いだ知識、技倆に、さらには私自身が得たものも加え、後輩に伝えていくことです。学生の皆さん、ぜひ私たちの後に続いてください。飛行機のコクピットから見る日本の地形や四季は本当に豊かです。この景色はパイロットにならなければ見ることができないと思います。
