2025/12/26
ANAグループでは、社員一人一人がESGを自分事として捉え、行動につなげられるよう、2023年度より多方面で活躍されている方や、環境配慮のビジョンを掲げる企業の方を講師としてお招きして、ANA Future Promiseフォーラムを開催しています。
2025年11月に第5回目となるフォーラムを開催し、対面・オンライン含め約140名のANAグループ社員が参加しました。
今回のゲストは、太田プロダクション所属のお笑いコンビ「マシンガンズ」の滝沢 秀一さんです。
滝沢さんは、芸歴28年のお笑い芸人という顔を持ちながら、14年間ごみ清掃員としても活動している「二足のわらじ」の持ち主です。
メディアでの活躍はもちろん、ごみ清掃員の経験を活かした書籍も多数執筆され、環境問題に関する講演会も全国で開催しています。
また、オンラインコミュニティ「滝沢ごみクラブ」を主宰し、楽しみながらごみを減らせるような活動も推進しています。
本フォーラムでは、ごみ清掃員という特殊な仕事を通じて滝沢さんが気づいたことを軸に、ごみが語る社会の真実、そして私たちが未来のために今できることについて、熱くお話しいただきました。
家庭から排出されたごみ袋の写真をいくつか紹介し、滝沢さんは「ごみは嘘をつかない」と話します
ごみの中身から、個人の嗜好や生活パターンがわかることから、ごみはまさに「生活の縮図」と言えます。
このようなごみが大量に廃棄されることで、日本の未来を脅かす深刻な問題となっています。
現在、日本におけるごみの最終処分場の寿命は残り約25年で、このままごみが増え続ければ、近い将来、ごみを捨てる場所がなくなってしまうかもしれないのです。
しかしながら、この寿命は年々少しずつ伸びています。
この理由には、悪い意味と良い意味があり、まず悪い意味は、少子高齢化や経済停滞による消費の減少です。
一方良い意味は、国民一人ひとりの分別意識向上があげられます。
少しずついいことをして、みんなが協力することで、最終処分場の寿命は少しずつ延ばすことができているという希望も示されました。
この危機を乗り越え、持続可能な社会を実現するためには、ごみの量を根本から減らすことが不可欠です。
特に問題視されたのが、「食べきれなければ捨てればいい」というマインドが生み出す大量の食品ロスです。
お中元やお歳暮などの贈答品、新米シーズンに捨てられる古米など、まだ食べられるものが大量にごみとして廃棄されています。
滝沢さんは、「物には価値を与えないといけない」と強調し、タダでもらったものや食べきれないものを安易に捨てるという無責任な行動は、「顔の見えにくい社会がつくられている」ことの表れだと指摘しました。
生産者への敬意や、食べ物の価値を軽視する意識を根本から変える必要性を強く訴えました。
ごみ問題、食品ロス問題のすべての根源には、「人の心」があると滝沢さんは話しました。
ごみを減らすための環境活動として知られる3R(Reduce:ごみを減らすこと、Reuse:繰り返し使うこと、Recycle:資源として再利用すること)の中で、最も優先すべきは「Reduce、次に「Reuse」であり、これに「Respect(敬意)」を加えた4R(3R+Respect)が重要です。
滝沢さんが14年間ごみを回収してきて行き着いた結論は、「ごみは人の心」だということです。
ごみ屋敷の住人にとっては、その山積みのガラクタもごみではないかもしれません。
逆に、まだ使えるものでも、人がごみだと思ったらその瞬間にごみになってしまいます。
そのごみを誰が回収するか、回収された後にどこへ行くかといった「見えないもの/こと」に対する配慮や、人や物、食べ物に対する「リスペクトの気持ちをもって普段から生活すること」が欠けているからこそ、ごみ問題は慢性化していると指摘しました。
清掃員への配慮から、割れ物で清掃員が怪我をしないよう丁寧に包んで出す行為や、食べ物に感謝する謙虚な気持ちなど、相手や物事への敬意を持つことが、結果としてごみを減らし、安全を守り、持続可能な社会へつながるのです。
滝沢さんは、私たち一人ひとりがリスペクトの気持ちを普段の生活に取り入れ、ごみとして生まれてきたわけではない「物」や「資源」に、もう一度価値を見出すことから、未来を変えていくことができると話しました。
参加した社員からは、
「ゴミ問題はわかっているようでも、わかっていなかったことが沢山あったことに気がつきました。実際に話を聞くと理解度・真剣度が大きく向上すると思います。」
「普段自分がごみについていかに無関心だったか、ハッとさせられる講演でした。」
「清掃員でのさまざまな経験からの考察がとても興味深く感心しました。「物には価値を与える必要がある」
という考えに納得しました。」
「仕事をする上でもプライベートでももっと自分にできることを行っていこうと意識改革できました。」
などの感想が寄せられました。
真剣な内容ではありますが、滝沢さん持ち前のユーモアとテンポの良いトークで、会場内は終始笑いがおき、和やかな雰囲気のなかで学びを深めることができました。
滝沢さんの講演は、「ごみ」の裏側には、環境問題、経済、安全、そして人々の心といったさまざまな要素が詰まっていることに気づかせてくれました。
本フォーラムを通じて学んだ「リスペクト」の気持ちを大切に、ANAグループはこれからもお客様、地域社会、そして環境に対して責任のある行動に努めてまいります。