大学時代は自動車のエンジンについて研究していました。航空会社に興味を持ったのは3年生の時。大学OBにANAのドックを見学させてもらったことがきっかけです。最初にスケールの大きさに驚きましたし、何より整備士の方々がいきいきと働いている姿が印象的でした。グローバルスタッフ職(技術)としての1年目の配属は運用技術チームです。ここで海外の航空機メーカーが作成しているパイロット用のマニュアルをANA用に編集し、パイロットに説明、提供するという仕事を担当。機種が異なれば内容も異なるため、ANAが新しい機種やシステムを導入する際には一から勉強しました。そして、2年目からは性能技術チームへ。最初の頃はANAが就航している世界中の空港情報を収集し、離着陸性能データを算出する仕事に従事していました。離着陸性能とは簡単に言えば、その航空機が法律に基づき安全に離着陸するための重さ(離着陸制限重量)を計算するというものです。機体やエンジンのパワーの違いはもちろん、滑走路の長さや空港周辺の障害物、離着陸時の風向き、気温によっても、その重さは変わってきます。そして、その計算された重さを基に、日々の運航便において搭乗可能なお客様の人数や貨物の重量が定められていくのです。
グローバルスタッフ職(技術)
機体とパイロットの間で、
最適な飛び方を考え、
安全を支えていく。

Interview 1
イキイキと働く先輩の姿が
印象に残っている。

Interview 2
自分の提案が、
世界標準として採用される。

その後、同じ離着陸性能に携わりながらも、その仕事内容は変わっていきました。ボーイング777型機やボーイング787型機では、それまで地上のホストコンピューターにて行っていた性能計算に代わり、航空機自体に離着陸性能を算出できるソフトウェアが組み込まれ、適宜、精密にデータを算出できるようになったのです。しかし、どんなに優れた技術も、それを導入し、運用していくのは簡単ではなく、新しい技術に基づく新しい運航方法を一から築き上げていく必要がありました。さらに、新しい運航方法はパイロットに伝えるだけでなく、日本の航空局の承認を得なければなりません。ソフトウェアを開発したボーイング社にも協力してもらいながら、離着陸性能計算の正確性や運用方法を航空局へ丁寧に説明していきました。また、世界中の航空会社や航空機メーカーの運航技術者が集まる「IATA(国際航空運送協会)」の国際会議にANAを代表して参加する機会も増えていきました。日本の航空会社の優れた安全性を背景に、私は離着陸性能に関するANAの考え方を提案し、現在その考え方は世界標準の一部として採用されています。
Interview 3
ANAの仕事のやり方は、
世界でも通用する。

入社8年目には1年半、海外研修プログラムの一環としてシアトルのボーイング社で勤務しました。ここでは日本で運用に携わっていた離着陸性能計算ソフトウェアの開発チームに参加し、新しいルールに基づく性能計算の検証に関わりました。IATAの国際会議で顔を合わせていたメンバーも一緒に働いていましたし、航空機を日々使っているエアライン側の意見であるということ、さらには自分の意見を論理的かつ明確に伝えるように心掛けたこともあり、周囲はよく私の提案に耳を傾けてくれました。また、ボーイング社で働いて強く実感したのは、ANAの仕事のやり方は海外でも十分に通用するということ。仕事を進める上での正確さや細やかさに私たちの強みがあると感じましたし、常により良いものにしようというマインドの部分でも、自信を深めることができました。一方で、分業体制による効率的な働き方など、米国企業の優れている点も知ることができ、海外での経験をANAの今後のグローバル化に役立てたいと思いました。
Interview 4
背景から理解し、
広い視野で捉えられるように。

帰国後は、最初に配属された運用技術チームに再び戻ってきました。しかし、何も分からず夢中で目の前の仕事に取り組んでいた1年目と比べると、仕事を背景から理解し、広い視野で物事を捉えられるようになったと思います。現在は、航空機メーカーが作成した通常時及び緊急時のパイロットの手順書をANAの運航状況に合ったものであるか検討し、それをパイロットのマニュアルに反映する役割を担っています。また、検討内容によってはメーカー側にフィードバックし、世界の空の安全に役立ててもらうため、標準化を提案することもあります。さらに、物事を判断する際に安全面を最優先することはもちろんですが、世界で競うエアラインビジネスとして経済性も考慮しながら判断ができるようになった点も1年目とは大きく異なりますね。ANAが新しい航空機の購入を検討する際には、運航技術の視点から意見を求められるという重要な役割もありますが、この会社では、若手社員でも手を挙げればそういう仕事を担うチャンスが回ってくる。改めて、ANAという会社は新しいことに挑戦する文化が根付いていると思います。今後もこの恵まれた環境を最大限に活かし、成長し続けていきたいですね。