2025/10/10
ANAの飛行機には、お客様の空の旅を支えるさまざまなアイテムがあります。客室のシートカバーもその一つです。
しかし、機材の更新やメンテナンスに伴い、まだ使える状態のシートカバーでも、多くが廃棄されてしまうという現状がありました。
この大切な資源を、新たな価値を持つ製品として生まれ変わらせることができないか、そんな想いからスタートしたのが、「ANAアップサイクルプロジェクト」です。
このプロジェクトは、単に廃棄物を再利用することだけでなく、「お客様に本当に喜んでいただける高品質でデザイン性の高い製品」をつくることを目指しました。
そこで協力を求めたのが、アパレルメーカーとして高い技術力を持つ株式会社オンワードコーポレートデザイン(旧 オンワード商事株式会社、以下「オンワード」)です。
オンワードの『Re-make-up プロジェクト』がもたらす廃棄衣料のアップサイクル技術は、ANAグループの『ANA Future Promise』が掲げる環境負荷低減への取り組みと、共通の想いでつながっています。
両社の企業姿勢が重なり合うことで、単なる製品づくりに留まらない、より価値ある作品を生み出せるという確信を持つことができました。
こうして、空の旅を終えたシートカバーを素材として活用し、「ANA特製ルームシューズ」へと生まれ変わらせた第1弾のアップサイクル商品が、2022年に誕生しました。
好評をいただいた第1弾でしたが、製作後には多くの「切れ端」が残されていました。
小さな切れ端でも貴重な資源を無駄にしたくない、という想いから誕生したのが、第2弾の「ANA特製パッチワーククッション」です。
このクッションは、飛行機の座席シートカバー5種類*の柄を組み合わせた、唯一無二のデザインが特徴です。
生地の厚みや質感が異なる素材をひとつひとつ丁寧に手作業で縫い合わせるパッチワークは、熟練した職人の高い技術と細部への徹底したこだわりによって実現しました。
山形県の工場で端切れを丁寧に切り出し、兵庫県の工房で縫製と検品を行う、ものづくりに関わる多くの人々の想いが、この製品には込められています。
また、クッションの裏地には、機内のギャレーで使用されていたカーテンを再利用しました。
これにより、廃シートカバーの約85%をアップサイクルすることに成功しました。
ANAウィングフェローズ・ヴイ王子株式会社(以下「AWO」)のご担当、矢羽田さんにお話を伺いました。
ルームシューズ用の生地を切り抜いた後の端切れの活用ということで、大きな面積が使える部分が残っていなく、作れるアイテムを考えるのにとても苦労しました。(はじめは11㎝角の生地のコースターなどの案でした。)
そこでパッチワークの技法で生地を縫い合わせることを思いつき、オンワード様に相談しパッチワーククッションが生まれました。
破棄対象になる(ルームシューズ工場に送られてくる)シートの柄の種類や枚数は予想がつかず、さらにルームシューズを作った後の端切れの為、どのシートの柄の11㎝角の生地が、どれだけ確保できるかがわからない状態でした。
工場の株式会社後藤様に協力いただき、ルームシューズ製造後の端切れから11㎝角生地を地道に一枚一枚抜き出していただいた上で、枚数を数えていただきました。
切り抜いた柄ごとの枚数から、できる限り無駄が少なく作れて、見た目も良い柄の配列をいくつか検討しこの2柄にたどり着きました。
一つ一つの柄の向きも縦が良い、横が良い、など他の柄の配列のバランスを見ながら一緒に議論しながら完成いたしました。
また、ルームシューズに使用したシートカバーだけでなく、ギャレーのカーテンもアップサイクルに使用することを関係部署とも調整し商品につなげた事も特別なポイントになっていると思います。
これからも、ANAの「飛行機での旅」と、オンワード様の「デザイン」を組み合わせて「サステナビリティ」という共通の目標に向けてこれから更に発展させていきます。
このクッションは、8月4日(月)より「ANA Mall」内の「ANA ワクワクショップ」で販売しています。
ANAグループは、これからもお客様と共に、廃棄物の削減や資源の有効活用に努めていきます。