水利用の管理

水資源保全に対する基本的な考え方

水資源は、あらゆる生命および社会活動において不可欠かつ代替不可能な存在です。しかし現在、世界各地において過剰な取水や環境汚染、開発に伴う水生生態系の劣化が深刻化しており、気候変動と並ぶ深刻なグローバルリスクとなっています。

ANAグループは、航空運航をはじめ、機内食の製造や機体整備など、グループ全体の事業活動において水資源の保全を「地球環境保全」における最重要課題の一つと位置づけいています。

当グループは、「ANAグループ環境方針」をはじめ「生物多様性方針」「調達方針」に基づき、水使用量の削減と徹底した水質管理を推進しています。国内外の各拠点における水ストレスをはじめとする各種水リスクの低減に努め、健全な水環境の保全に貢献してまいります。

方針

水資源におけるリスク認識

航空輸送事業を中核とするANAグループにとって、気候変動等に伴う水資源の枯渇や水ストレスの深刻化は、事業の継続性を揺るがす重大な経営リスク(物理的リスク・操業リスク)であると認識しています。具体的には、自社の事業活動およびサプライチェーン(調達網)において、以下の3つのリスクが顕在化する可能性があります。

  1. 航空機の運航および機体整備への影響
    定期的な機体の洗機やエンジンの精密洗浄には、大量の清浄な水が不可欠です。地域の水不足に伴い給水制限や節水要請が発令された場合、機体表面の汚れ固着による空気抵抗(ドラッグ)の増大や、エンジン性能低下に伴う燃費効率の悪化を招きます。また、洗浄作業の長時間化により格納庫の運用効率が低下し、機材繰りの制限や定時運航の維持に支障をきたすおそれがあります。
  2. 機内食用食材の調達および機内食調製への影響
    深刻な干ばつ等による農作物の不作は、機内食用食材の安定調達への支障や、価格高騰によるコスト負担の増大につながります。また、自社の機内食調製工場(ANAC)や国内外の委託先ケータリング会社での調理・洗浄用水が不足した場合、衛生管理の徹底が困難となり、機内食の提供不能やサービス内容の縮小・変更を余儀なくされるリスクがあります。
  3. 操業現場の衛生悪化に伴う事業継続への影響
    操業用水や生活用水の不足は、食中毒や感染症の発生、就業環境の悪化を引き起こします。これに伴う従業員の身体的・精神的負荷や要員不足が生じた場合、安全優先の観点から減便や運航停止などの事業縮小を余儀なくされ、航空輸送という社会的インフラとしての機能を維持できなくなる経営リスクにつながります。

水資源管理における事業機会

一方、ANAグループでは、水資源の保全や持続可能な利用への取り組みを、単なるリスク回避にとどめず、事業のレジリエンス(強靭性)と競争力を高める重要な「事業機会」と捉えています。 バリューチェーン全体における積極的な水リスクの低減と効率化の推進は、以下のような長期的価値の創出につながります。

  1. コスト競争力の強化(事業コストの削減)
    節水器具の導入や水の再利用(循環利用)の徹底により、水使用量を着実に削減し、水道光熱費をはじめとする事業コストの継続的な低減を図ること。
  2. サプライチェーンの安定化(調達網の強靭化によるリスク耐性の向上)
    調達先地域における水資源の保全を通じて、ジュラルミンや半導体、紙製品、食材など、事業継続に不可欠な資機材・調達品の供給網を維持。価格高騰や供給不足に左右されない強靭な調達体制を構築し、事業の安定性と企業の信頼性を向上させること。
  3. 運航品質の維持とブランド価値の向上(燃費効率と機体美観の維持による競争力の確保)
    十分な水資源を確保し、高品質なエンジン洗浄や機体洗浄を継続することで、優れた燃費効率と高い美観を維持。ステークホルダーからの継続的な信頼を獲得し、中長期的な事業基盤の安定化につなげること。

管理対象

ANAグループの事業所全てにおいて水の使用が発生します。約250拠点を対象に水の管理と削減に取り組んでいます。

主要施設
各空港施設 訓練センター 整備センター
各営業支店 ケータリング工場 コールセンター
データセンター 他

水使用量削減の取り組み

ANAグループでは、「ANAグループ環境方針」のもと、グループ共通の環境パフォーマンス管理システム「GreenGlobeX(GGX)」を活用し、各拠点における水使用量の可視化、分析、評価を行っています。

自社施設においては、フライト後に航空機から回収した未使用の機内搭載水(飲料水)を地上の清掃等に有効活用しているほか、厨房排水等を処理した中水の再利用を推進しています。また、機体整備部門では超高圧水を用いたエンジン部品洗浄技術の導入により、洗浄剤の使用量削減と水使用量の最小化を同時に実現。あわせて、排水処理施設を適正に運用・管理することで、周辺の水環境への負荷低減に配慮したオペレーションを徹底しています。

ANAケータリングサービスにおける取り組み

機内食の調製業務を担う株式会社ANAケータリングサービス(ANAC)には、水資源を多く消費する3つの主要工場があり、その水使用量はグループ全体の国内約250事業所における総使用量の約30%を占めています。同社ではこれらの主要工場を中心に、以下の水管理プログラムを通じて、水使用量の継続的な削減と適切な排水管理を推進しています。

水管理プログラム

  1. GGXによる水使用量の可視化と進捗管理
    環境パフォーマンス管理システム「GreenGlobeX(GGX)」を用いて日々の水使用量を可視化し、使用実態の正確な把握とPDCAサイクルに基づく進捗管理を行っています。
  2. 拠点特性に応じた目標設定
    可視化した実績データの分析結果に基づき、各工場の前年実績や稼働環境などの特性・実態に即した年間削減目標を策定しています。
  3. 節水機器の導入と設備投資計画への反映
    洗浄機等への節水バルブや節水器具の導入および効果検証を実施。その結果を次年度の機器更新・設備投資計画へ反映させるとともに、主要工場ごとに設定した削減目標の達成に向けた改善活動を継続しています。
  4. ドレン水の回収と有効活用
    空調設備から発生するドレン水(結露水)を回収し、工場の屋根や空調室外機への散水に活用。建物の温度上昇を抑える遮熱・省エネ対策につなげると同時に、散水用の水道水使用量を削減しています。
  5. 厳格な排水管理と水質改善
    各種排水基準を遵守するための除害設備を適正に運用し、毎月の定期点検による排水水質測定を実施。測定結果に基づく継続的な設備改善を行い、周辺水環境の保全に努めています。

詳細は

環境教育

ANAグループでは、従業員が、ESG推進の重要性を理解し、お客様応対時において適切なご案内や行動ができるようになることを目的として、環境に関するeラーニングを年に数回実施しています。

これらの教育プログラムは、水利用管理を含む環境目標や進捗、各種取り組みに対する理解促進にも活用されています。

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