アタリが途切れないアジング時間
アジ(マアジ)は暖かい海の水を好む魚で、沿岸域に暮らしながら季節により移動する性質があります。日本海には対馬暖流が流れており、また背後の山々から流れ込む川によって陸の栄養が海に運ばれ、エサとなるがプランクトンが育つ環境も各所にあるため、アジの魚影がとても豊富です。毎年5月、6月には30cmを超える大型もよく釣れ、夏は豆アジと呼ぶ10~15cmの小型が多くなりますが、それもサビキ仕掛けやノベザオを使ったファミリーフィッシングでは手軽に楽しめる好対象魚になっています。
この日のねらいは豆アジではない良型アジですが、庄内浜のアジングで押さえておきたいのが風向きです。軽い仕掛けを扱うアジング(ルアーを使ったアジ釣り)の場合、西風が強い日はキャストがしづらく、海も波立ってしまうため釣りに適しません。反対に東風であれば、背後に山が控えているので、多少の強風でも場所を選んで釣りができます。この日は6月まで好調だった鶴岡方面のアジの釣果が一段落しているということで、「思い切って酒田方面に行ってみましょう」となりました。本命の釣り場は、鳥海山から流れ出る日向川の河口エリアです。ちなみにそのすぐ南の酒田港周辺は、すでに豆アジが湧いているという情報でした。アジの活性が高くなる日没前後の夕マヅメをねらいます。
日向川の河口は目の前に穏やかな海が広がっています。庄内浜でもこのあたりは砂丘海岸で、庄内砂丘と呼ばれる約35kmに及ぶ長い砂浜が続きます。砂丘沿いには庄内藩時代からの歴史がある防風林があり、さらに背後には鳥海山という景色です。日本の白砂青松100選にも数えられる絶景がそのまま釣り場でした。
川と海が目の前で接する河口に立ちます。この日は強めの東風でしたが、時折回り込んできた風が正面から吹き付けます。松並さんはいつもなら0.8gが基準というジグヘッドの重さを1gにして、川の流れが手前の消波ブロックに当たっている緩流帯をねらいました。すると「来ました!」とすぐに反応。あっさりと顔を見せてくれたのは、お腹も丸々としてグッドコンディションのアジです。30cmサイズとはいきませんが、しばしの連続ヒットになります。
アジングはその時にアジがいる泳層に、最適なスピードでルアーを通せるかどうかで釣れる数にはっきりとした差が出ます。「庄内浜に来るようになってから、この釣りがすっかり楽しくなりました。やっぱり魚の数が圧倒的に多いからです。釣るのが難しい時ももちろんありますが、全くの無反応で終わるという日はほとんどありません。逆に初めての場所でも、ある程度自分で地形を見て考えてから釣れば、キャストのたびに入れ食いになったりします。いろんなことを試せるので、釣りをしていて本当に面白いんです」とのこと。
日没までまだ余裕があったので、最後はもう少し北の月光川河口付近まで足をのばし、景勝地にもなっている十六羅漢岩周辺の磯場でもアジをねらってみました。するとこちらでも、日没から1時間ほどに訪れるチャンスタイムの間に、同サイズの型のよいアジが次々にヒットします。「今日は出来すぎです(笑)。でもこんな感じで釣りができるので、田舎暮らしなのに全然時間が足りません」という言葉に、日々の充実ぶりがあふれていました。