上質なヌーヴォーをゆったりと味わうスタイルが主流に
日本でもすっかりおなじみのボジョレー・ヌーヴォー。フランス・ボジョレー地区から届く新酒ワインは、新米や新そばと並ぶ秋の風物詩になっています。
解禁日は11月の第3木曜日。日本では時差の関係でフランスより一足早く飲めることもあって本国に負けない盛り上がりをみせますが、「楽しみ方は少し様変わりしています」と話すのはA-styleワインアドバイザーで、2022年までANAインターコンチネンタルホテル東京のシェフソムリエを務めた佐藤雄介さんです。
「ボジョレー・ヌーヴォーというと、大勢で集まりにぎやかにカウントダウンパーティーを開くスタイルが主流でしたよね。でも、ここ数年は家族や友人など少人数でゆったりと味わう方たちが増えているんです。その変化の背景にあるのがクオリティの向上。ボジョレー・ヌーヴォーというだけで売れた時代とは違い、昨今は"おいしさ"に軸足が置かれ、じっくりと味わいたい質の高いボジョレー・ヌーヴォーが数多く輸入されるようになったのです」
しかも、その"おいしさ"は一様ではなく、新酒らしくフレッシュな酸を備えたタイプもあれば、凝縮感と複雑味のあるリッチなタイプもありとバリエーションは豊か。ご存じのとおり、ボジョレー・ヌーヴォーに使われるのは赤ワイン用の黒ブドウ、ガメイ種ですが、同じ品種を使った新酒でも多彩な味わいがそろうところが実はボジョレー・ヌーヴォーの面白さ。その真価に気づいた方たちが増えたといえるでしょう。
オリジナルラベルにボジョレー屈指の自然派ドメーヌを初採用
A-styleで取りそろえたボジョレー・ヌーヴォーはどれもワインのプロの折り紙付き。今年はいつもよりも品ぞろえを充実させているとのことですが、どのような特徴があるのでしょうか。佐藤ソムリエに教えてもらいました。
まず、毎年大人気のANAオリジナルラベルには、「ボジョレー希望の光」と賞賛される"ピエール・マリー・シェルメット"のヌーヴォーを初採用。
「ここは17世紀から続く家族経営のドメーヌで、ボジョレー・ヴィラージュなど格付けボジョレーでも高い評価を得ています。当主のピエール・マリー・シェルメットは除草剤など農薬を使わずにブドウを育て、醸造には自然酵母を用いるなどナチュラルなワイン造りを実践する、ボジョレーを代表する生産者の一人です」
そんなドメーヌから選んだのは、ボージョレ ヌーヴォ レ・グリオットとボージョレ ヌーヴォ キュヴェ・ヴィエイユ・ヴィーニュの2タイプ。
「前者は、グリオット(さくらんぼ)と名付けられた区画で造られ、ベリー系果実のアロマが力強く香り、なおかつバランスの取れた味わいです。後者は、樹齢30年以上の古木(ヴィエイユ・ヴィーニュ)のブドウを使用。凝縮感がありながら滑らかで完熟ベリーの芳じゅんさとほのかなミネラル感で心地よい余韻が続きます」
味わいを想像するだけでワクワクしてきますが、聞けば、これらのヌーヴォーはANA国際線ファーストクラス・ビジネスクラス(一部路線限定)にも搭載。解禁日に空の上で特別ラベルの新酒を味わえば、スペシャルな旅の思い出になりそうです。
ワイン好きからビギナーまで楽しめる多彩なラインアップ
もちろん、オリジナルラベル以外にも注目銘柄は目白押しです。
その中で、「ワイン好きに飲んでほしい1本」として佐藤ソムリエが挙げたのは、"ルロワ"のボージョレ・ヴィラージュ プリムールです。
「"ルロワ"は"ブルゴーニュの至宝"と称される名門メゾン。マダム・ルロワは卓越したテイスティング能力を持ち、このヌーヴォーには古木のなかでも選び抜いたブドウを使っています。濃密で複雑な果実味はボジョレー・ヌーヴォーの概念を覆すほど。新酒で飲んでおいしいのはもちろん、10年、20年と熟成させても真価を発揮する特異なヌーヴォーです」
逆に、普段はあまりワインを飲まないけれど、ボジョレー・ヌーヴォーには興味津々という方には、"アルベール・ビショー"がセレクトされました。昨年も大好評だったこのヌーヴォーは500mlのペットボトルに入っているのが特徴。夫婦や友だちと2人で飲み切るのにちょうどよく、スクリューキャップだから開栓も簡単です。気になる味は「名門ワイナリーならではの安定感があり、新酒らしい爽やかな飲み心地は誰からも好まれるはず」と佐藤ソムリエも太鼓判。ボジョレー・ヌーヴォーデビューにもうってつけの1本といえそうです。
さらに"タイユヴァン"のヌーヴォーも見逃せません。
「パリの老舗レストランである"タイユヴァン"は、"食とワインの調和"を標ぼうするように、ワインのセレクションでも世界的に高い評価を受けています。ヌーヴォーにおいてもクオリティはずば抜け、A-styleで扱うボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォーのプレミアム・レゼルヴ とヴィエイユ・ヴィーニュは毎年完売する人気商品です」
ほかにも今年は日本から山梨ヌーヴォー3本を取りそろえるなど全方位のラインアップとなっています。
飲み比べてボジョレー・ヌーヴォーの奥深さを体感
家族や友人たちとテーブルを囲むとき、タイプの異なるヌーヴォーをそろえて飲み比べをすると楽しみがさらに広がると佐藤ソムリエは言います。
「ヌーヴォーの場合、どのつくり手のものでも収穫時期と醸造期間はほぼ同じ。飲み比べると個々のコンセプト、テロワール、醸造技術まで違いが浮かび上がり、奥深さを実感できます」
選び方は、同じ生産者やブランドで比べてみる方法が一つ。例えばオリジナルラベルの2本なら、レ・グリオットをまず開けて、次にキュヴェ・ヴィエイユ・ヴィーニュを飲めば、愛らしさのある味わいから重厚感が加わったエレガントな味わいへと華麗なグラデーションが描かれます。
「"タイユヴァン"の2本をそろえて、ヴィエイユ・ヴィーニュからプレミアム・レゼルヴへと格を上げながら楽しむのも面白いでしょう。あるいは、最初にスパークリングの山梨ヌーヴォーで乾杯をした後、ボジョレーの新酒へという飲み方をするのも一興です」
アイテムにこだわればおいしさは倍増
意中の新酒をそろえたなら、味わい方にもひと手間かけたいところです。例えば、温度。渋みが少なくすっきりした酸が持ち味のボジョレー・ヌーヴォーは、軽く冷やすと清涼感が際立って魅力が倍増するのだとか。
「ただ、冷やしすぎると味が閉じてしまうので、飲む1時間ぐらい前に冷蔵庫へ。飲んでいる間に温度が上がらないよう、ワインクーラーも用意したいですね」
グラス選びも気になるポイントです。何で飲むかで味わいは変わるとよく耳にしますが、どんなタイプが合うのでしょうか。
「スタンダードなボジョレー・ヌーヴォーは香りが穏やかなので、細身で口の狭いリースリングタイプにすると香りを余すことなく楽しめます。一方、ボジョレー・ヴィラージュなど格上のヌーヴォーを飲む時は、ゆったりとしたブルゴーニュタイプがおすすめ。香りが膨らみ、味にもボリュームが出ます」
ヌーヴォーに合うのはどんな料理?
ワインがあればその友となる料理も欠かせません。赤ワインだから合うのはこってりした肉料理?
「いえいえ、ボジョレー・ヌーヴォーは香りの華やかなチャーミングなワイン。低めの温度で飲むことも考えると、生ハムやパテ、サラミといった冷前菜が合います。生ハムはセミドライのフランボワーズを包むと、ワインの果実味に寄り添って見た目もおしゃれになりますよ。魚ならマグロの赤身も相性がいい。その場合、薄口醤油であっさりめの味付けにするのがコツです。温かい料理ならトマトソースのピザやパスタもオススメです」
肉料理の出番があるのは、芳じゅんな格上のヌーヴォーを開けたとき。特に脂の少ない赤身のステーキはベストチョイスとか。
「チーズならモンドール、ブリー、カマンベールといったクセの少ない白カビタイプを選ぶとワインの風味が引き立ちます。そこにラズベリーなどのジャムを添えれば、味も見た目も華やかに演出できますよ」
食卓の準備が整えば、あとは抜栓の時を待つのみです。そもそもボジョレー・ヌーヴォーは収穫を祝うワインのお祭り。家族や気の置けない仲間と和やかに味わって実りの秋を満喫しましょう。
- 記載の内容は2024年8月現在の情報です。変更となる場合があるのでご注意ください。