脂が乗りながら上品な味わいの特産魚
ヒメマスという魚をご存じでしょうか?漢字で「姫鱒」と書き、種としてはサケの一種であるベニザケにあたります。そのベニザケのうち、氷河期などの影響で、海と隔絶された環境に育つようになったものをヒメマスといいます。
日本にいるヒメマスは、もとは北海道の一部の湖にのみ生息していましたが、明治期に本州を含む他の湖への移殖が試みられるようになりました。理由は山間部において貴重なたんぱく源として利用するためです。現在、ヒメマスは阿寒湖、支笏湖、十和田湖、芦ノ湖、西湖などで地域の漁業資源になっています。
ヒメマスの身はサーモンピンク。身は柔らかく繊細、なおかつ脂がしっかりと乗っていながら臭みがなく、上品な中にもしっかりとした旨味があります。刺し身、塩焼き、ムニエルなど、多彩な料理法で味わえますが、十和田湖の周辺はヒメマス料理を提供する飲食店や宿が多く建ち並んでいます。
十和田湖のヒメマスは4~12月が漁期。その中で5~6月と10月頃にピークがありますが、いずれにしても漁の期間中は特に新鮮なヒメマスが味わえます。お店ごとに工夫をこらしたメニューもあるので、さまざまな料理を食べ比べるのも面白い季節です。
お土産とお食事の店 もりた
- 住所:青森県十和田市大字奥瀬字十和田湖畔休屋486
- ウェブサイト:お土産とお食事の店 もりた
民宿 春山荘
- 住所:青森県十和田市大字奥瀬字十和田湖畔休屋5-1
- ウェブサイト:民宿 春山荘
今につながる賑わいを生んだ先人の情熱
十和田湖のヒメマスを語るうえで欠かせない人物がいます。それが和井内貞行(わいないさだゆき)です。和井内は江戸末期の1858年に、十和田湖の30kmほど南に位置する毛馬内村に生まれました。そして、地元の鉱山で坑夫監督の職に就きます。その頃から、当地での食料にもなる魚の養殖に関心を寄せるようになりますが、閉ざされたカルデラ湖であることから魚が生息していないといわれていた十和田湖での試みは何度も失敗に見舞われ、20年近く成功することはありませんでした。
しかし、和井内の情熱と粘り強さはそれを上回ります。彼は私財も投じてその努力を継続。そして1905年、3年前に青森県水産試験場の仲介で和井内が北海道支笏湖から卵を購入し、孵化させ稚魚まで育てたものを放したヒメマスが、大きな成魚の群れとなって湖面に姿を現したのです。これが今日につながる十和田湖のヒメマスの始まりとなりました。
秋はヒメマス釣りで訪れるのも楽しい
現在、十和田湖のヒメマスは釣りの対象魚にもなっています。10月以降の秋がシーズンとなり、船釣りと岸釣りで解禁期間が異なりますが、北東北でも屈指の美しい紅葉を眺めながらサオを振れるため、県内外から熱心なファンが足を運びます。
釣りで持ち帰りができるヒメマスは20尾まで。また、釣りの解禁日は年ごとに状況を見て決定されるので、詳しくは漁協のウェブサイトも確認のうえ、お出かけになってください。なお、釣り方はルアーフィッシングやフライフィッシングが人気です。釣りのアドバイスについては下記ヒメマスの記事でもご確認いただけます。
十和田湖増殖漁業協同組合
- 住所:青森県十和田市奥瀬字十和田湖畔休屋486
- ウェブサイト:十和田湖増殖漁業協同組合
人と自然の関わり合いの中で、現在の姿が生み出された十和田湖のヒメマス。季節や趣味に応じて、食べ歩くもよし、釣り歩くのもよし、ぜひその魅力を味わってみてください。
- 記載の内容は2025年9月現在の情報です。変更となる場合があるのでご注意ください。
協力:つり人社
