歴史と自然が息づく城下町
四国の西南に位置する愛媛県宇和島は、九州と四国の間を通る豊後水道に面した宇和海を望む古くからの城下町。海、山、そしていくつもの島々が織りなす多彩な自然の景観に恵まれ、数多くの漁港を抱える港町でもあります。
その宇和島が「鯛の季節」を迎えるのが春。沖合に広がる宇和海は昔からマダイの好漁場。入り組んだ地形と豊後水道からの潮流が交わり、マダイの生育に適した環境が保たれています。宇和島はマダイの養殖で全国屈指の産地となっていますが、春は産卵を控えた天然マダイも沿岸部に集まるため、市内の港から出航する遊漁船のマダイ釣りもハイシーズンを迎えます。
入門者も楽しめるタイラバ
近年、遊漁船のマダイ釣りで人気の釣り方がタイラバです。エサではなくルアーでマダイを釣る方法の一つで、オモリ、ハリ、ヒラヒラと水中で揺れ動く細長いゴム(ネクタイと呼ぶラバー)の3つを組み合わせた仕掛けでマダイをねらい、仕掛けの名前がそのまま釣り方の名称にもなっています。
タイラバの特徴は釣り方がシンプルで釣れるチャンスが多くあること。オレンジや赤のタイラバを底まで落とし、ゆっくり巻き上げると興味を持ったマダイが追いかけてきて、噛みつくと「ガツガツ」というアタリが手に伝わります。複雑な操作が必要な他のマダイ釣りに比べ、基本は「落として巻くだけ」なので、ビギナーの方がベテランの方と同じくらい釣果を得られることも。そのため各地で人気を高めています。
宇和島には春になるとタイラバを案内する遊漁船が複数あり、レンタルタックルを用意しているところなら手ぶらでマダイ釣りを体験することも可能。地元の「宇和島遊漁船団体」では毎年春に「うわじまタイラバ祭」も開催していて、地域を挙げてタイラバを盛り上げています。チャンスがあれば、ぜひ参加してみてはいかがでしょう?
宇和島遊漁船団体
- 公式Instagram:宇和島遊漁船団体公式Instagram
漁師町の知恵が生んだ宇和島の鯛めし
宇和島のマダイは味のよさも折り紙付き。刺し身、塩焼き、天ぷら、カルパッチョなど、釣ったマダイはどのように料理しても美味しく味わえますが、地元のお店でぜひ味わいたいのが「鯛めし」です。鯛めしというと炊き込んだものを指すことが多いですが、宇和島の鯛めしは生卵を溶いた醤油ダレ、新鮮なマダイの刺し身、熱々のご飯の組み合わせ。
発祥は宇和島の沖合に浮かぶ日振島を拠点に活動する海賊たちが、火の使えない船の上で豪快に食べたまかない飯ともいわれ、店ごとの工夫を凝らした鯛めしが宇和島の名物になっています。それらを食べ歩き、味の違いを比べてみるのも面白い体験です。
ほかにも宇和島には重要文化財である「宇和島城」、宇和島藩伊達家の文化を伝える大名庭園の「天赦園」、新鮮な海産物が並ぶ「きさいや広場」など、釣りをする方もしない方も楽しめる散策スポットが多くあります。釣りをするもよし、食べ歩くもよし、あるいは城下町の風情を味わうもよし。春の宇和島で素敵な旅の形を見つけてみてください。
- 記載の内容は2025年12月現在の情報です。変更となる場合があるのでご注意ください。
協力:つり人社
