
阿波釣法の世界
徳島県は非常に釣りが盛んな土地柄。老若男女を問わず釣り好きが多いが、その徳島県人が熱くなるのが県南部、太平洋岸の磯釣りだ。江戸時代には藩主が磯で釣りを嗜んだという記録が残っており、地元では釣り場全体を「県南の磯」と呼ぶことが多い。 当地で行なわれる磯釣りは、寄せエサで魚を浮かせ、繊細なウキ仕掛けでグレ(メジナ)やチヌ(クロダイ)をねらうフカセ釣りがメイン。そして、徳島の磯釣り文化は、釣り方だけでなくルールやマナーも含めて「阿波釣法」という名で現代まで受け継がれている。



シーズン初期は伊島がおすすめ
徳島県南の代表的な磯釣り場は、蒲生田岬の沖、紀伊水道の出口に浮かぶ伊島からスタートし、海岸線を南下すると由岐、日和佐、牟岐、宍喰と有名どころが続く。まだ水温が高い10月は、最も北に位置し、瀬戸内海から出てくる潮流が影響していち早く水温が下がる伊島がおすすめで、10月でも30~40cmのグレが釣れる確率が高い。11月に入ると南部の水温も徐々に低下し、県南全域で良型のグレが釣れるようになる。フカセ釣りではないが、底もの釣りのイシダイも大型が出る時期だ。

本来、徳島県南でのグレ釣りは冬が本番だ。北西の季節風が背後の山から吹き下ろす頃が、通称「寒グレ」のベストシーズンになる。ただ、温暖な四国地方とはいえ、磯釣りの入門者には厳しい季節。まだそれほど寒くなく、海水温も温かくて、グレ以外のさまざまな魚たちが楽しませてくれる秋10月から初冬の12月が、のんびり釣るには最適なのだ。
水温が低下する年の瀬に近付くにつれ40cmオーバーの良型の期待も高くなり、ほかにイサギ(イサキ)、シマアジの子、サンバソウ(イシダイの幼魚)、回遊しだいではハマチ(イナダ)やツムブリなどの青ものもハリに掛かってくる。


安全で公平な磯抽選システムも魅力
すべての釣り場ではないが、徳島県南の磯には独自の抽選システムがある。たとえば牟岐では好みの磯に上がれる順番を渡船に乗り合わせたお客さんでクジ引きし、さらに渡船エリアの抽選場に集まった多くの渡船から代表者(ほとんどの場合、各渡船内の1番クジを引いた人)が集まり、あらかじめ区分けされた渡船区を抽選するのだ。もちろんクジ運が悪く、がっかりすることもあるが、磯取り競争を回避できる安全かつ公平なシステムとして定着している。




船からのアオリイカ釣りも期待大

そのほか、徳島県南は船釣りも盛ん。特に秋から年末にかけて面白いのが、日和佐沖のアオリイカ釣り。生きたアジをハリに掛けて底まで下ろしていき、アオリイカがアジに抱きつくのを待つ。アタリがあれば仕掛け下部にセットしたイカリバリで掛けて釣り上げるという方法だ。早い時期は小型も掛かるが、年末には1kgを超える大型も混じるようになり、条件に恵まれれば船全体で何十パイもの釣果に恵まれる。また、エサのアジを食ってくるのはアオリイカだけでなく、美味しいアヤメカサゴや特大のアカヤガラもいる。海の豊かさを心ゆくまで満喫できる、徳島県南の秋である。

この釣り場へのアクセス

徳島県南の釣り場へは、徳島空港からレンタカーの利用が便利。空港からR55を南下し各釣り場へ。夜間の場合、伊島への渡船が出る椿泊まで約1時間15分、牟岐まで約1時間40分、宍喰まで約2時間。
釣り場情報
〈徳島県南/グレ、チヌ、アオリイカ〉
シーズン | 通年(アオリイカは秋~年末) |
問合先 | いはら釣具小松島店(小松島市/磯釣り、船釣り、ルアーなど釣り全般。TEL:0885-32-8181)、 たかはし釣用品(徳島市/磯釣り、徳島の釣り文化、歴史。TEL:088-622-4978)、 ポイント徳島中洲店(徳島市/磯釣り、船釣り、ルアーなど釣り全般。http://www.point-i.jp/index.php?id=576) |
- 釣り場情報は2015年10月現在のものです。