ドンコ舟が行き交う掘割
福岡県、筑紫平野の南部に位置する柳川は、南を有明海、西を筑後川、東を矢部川に挟まれている。江戸時代、町には柳川城を中心に縦横に掘割(水路)が張り巡らされ、これらは防備はもちろん、水上の交通機関として商業や生産業にも大きく貢献した。この掘割を今も行き交うのが名物のドンコ舟だ。舟頭が水竿を操る、ゆったりとした川下りが楽しめ、赤レンガの蔵やなまこ壁の蔵など情緒ある水郷景色を堪能できる。
掘割は民家の横を流れ、民家の庭には掘割に降りて作業ができるような階段が付いている。古くから住民と水との距離が近いことがよく分かる。この水路網にタナゴやフナといった魚たちが泳ぐのである。
多彩な小魚の楽園
タナゴは日本に18種いるコイ科の小魚で、その多くは春に産卵期を迎える。柳川ではタナゴ類を総称して「ベンジョコ」と呼ぶ。「便所?」と驚く人もいるかもしれないが、実際は「紅(=ベニ)、雑魚(=ジャコ)」が訛ったものと思われ、産卵期になると鮮やかに色づくタナゴのオスの特徴から来ているらしい。
春から初夏は水路の各所でベンジョコが見られる。柳川にはアブラボテとヤリタナゴが最も多く、カネヒラも比較的出会える機会は多い。また九州にのみ生息するカゼトゲタナゴやセボシタビラも柳川で釣ることはできる。これらはすべてタナゴの仲間だ。また、フナやライギョ、当地でミズクリセイベイと呼ばれるオヤニラミ、さらにドンコ、ヌマムツ、カワムツ、オイカワ、イトモロコ、モツゴなどもいる。フナは「釣りはフナに始まり、フナに終わる」という言葉があるほど、日本人にはもともと馴染みの深い魚だが、最近は全国の川でコンクリートの護岸整備などが進み、フナが当たり前のように釣れる川がむしろ少なくなった。そうした中で、日本の原風景のような水辺が残る柳川では今もしっかりとフナが泳いでいる。人の営みが間近な水辺に、これだけの淡水魚が泳ぐ環境は全国的にも貴重なものだ。
詩人を生んだ水郷の町を歩く
日本を代表する詩人の一人であり、童謡作家、歌人でもあった北原白秋は柳川の出身。「水郷柳川は我が詩歌の母体である」という言葉を残したといわれ、現在、北原家の広大な旧跡地の一隅には「白秋記念館」が建てられており、水郷柳川の民俗資料や白秋の詩業を紹介している。
そして、白秋の生家のある沖端町は、有明海の豊富な産物であるムツゴウロウやクツゾコのほか、当地の名物であるウナギのせいろ蒸しを食べられる店も多い。ウナギのせいろ蒸しは、タレをまぶしたご飯の上に、ウナギの蒲焼きを乗せ、金糸玉子をあしらい蒸し上げたもので、アツアツのところをいただく。柳川でせいろ蒸しを食べられる店が数十店舗あり、それぞれが独自の秘伝のタレを使っている。
釣りやドンコ舟での水路散策をしたら、美味しい食事でお腹を満たし、白秋の詩情を育てた柳川の町の歴史を記念館に訪ねてみるのがおすすめだ。
この釣り場へのアクセス
福岡空港からのアクセスが一般的だが、有明佐賀空港からも近い。福岡空港から柳川市街には九州自動車道・みやま柳川ICを降りてR443、R208を経由して約1時間。佐賀空港から柳川市街には県道18号で筑後川に掛かる新田大橋を渡って県道709号、R208を経由して約30分。
釣り場情報
〈対馬/アオリイカ、クロダイ、ヒラマサ〉
シーズン | おすすめは4~5月 |
問合先 | キャスティング飯塚店(釣具店/飯塚市。http://castingnet.jp/shop/shop.php?s=37) |
- 釣り場情報は2015年5月現在のものです。