
食べて美味しく、釣って楽しい魚

日本各地の湖で釣れるワカサギは、サケ目キュウリウオ科ワカサギ属に分類される小魚です。もとは海水と淡水が入り混じる汽水域に生息し、自然分布していたのは、北海道の全域、青森県から島根県の宍道湖・中海にかけての日本海側、青森県から利根川までの太平洋側でした。しかし、食用魚として優れていることから、各地の湖やダム湖に移植・放流が行われ、今では山間の湖やダム湖を含む全国の広い範囲に生息しています。そして、釣りの好対象魚となることから、近年では観光資源としても評価が高まっています。

ワカサギの寿命は1年(北海道には2年のものもいます)。産卵期は1~5月で、南に生息するものほど早くなり、単独行動はせず大きな群れで回遊します。春に生まれた稚魚が大きくなる、秋から釣りのシーズンが始まるところが多く、さらに育って食味もよくなる冬が最盛期というのがワカサギの特徴になります。
釣りやすくなった近年のフィールド

ワカサギ釣りは昔から人気がありましたが、近年はより多くの方に釣りがしやすい環境が整っています。その立役者となっているのが、全国に広まった「ドーム船」「ドーム桟橋」「屋形船」などの釣り施設です。呼称は場所によりさまざまですが、いずれも「屋根付きの室内のような空間」で釣りができるのが特長です。建物の中に入れば暖房が効いており、誰でものんびり快適に冬のワカサギ釣りが楽しめます。

これらの施設は、湖の中でもワカサギが釣れやすい場所に設置されていて、釣り道具のレンタルやスタッフによる釣り方のレクチャーもあり、手ぶら感覚で遊びに行けるのが大きな特長。家族や仲間と同じ空間に腰を下ろし、ワカサギ釣り初挑戦でもみんなが盛り上がれるので大人気です。出かける際は、それらの施設を運営している漁協や船宿のホームページに釣果情報や利用料金が掲載されているので、事前に予約します。予約なしで大丈夫な場合もありますが、特にワカサギがよく釣れている年は平日でも満員になることがあります。
自然をより満喫できるスタイルもある

また、冬のワカサギ釣りでは、氷上に張るテントを持って行き、自分で場所を決め、凍った湖にドリルで穴を開けて釣りを楽しむスタイルもあります。テントは冬の湖で寒さをしのぎ、多少の雨風があっても釣りができるように持って行くものですが、真っ白な湖に熱心なワカサギ釣りファンのカラフルなテントが並ぶ光景は壮観。「これぞ冬のワカサギ釣り」と楽しみにしている方も少なくありません。こうしたスタイルでは、防寒着や手袋などの装備もよりしっかりとしたものが必要になりますが、キリリと冷えた空気を吸いながら、大自然の中で自分だけの拠点を作り、釣りをする爽快さは他ではなかなか味わえないものです。


ワカサギ釣りが盛んな湖

北海道は冬になると結氷する湖や川が多く、氷上のワカサギ釣り場が各地でオープンします。道北の朱鞠内湖、道南の大沼、道東の網走湖や阿寒湖などが有名です。本州は結氷する湖とそうでない湖があり、氷上のワカサギ釣りが楽しめる場所としては、岩手県の岩洞湖、福島県の桧原湖、長野県の松原湖、群馬県の榛名湖や赤城大沼などが知られています。ただし、近年は暖冬の年も多く、氷上釣りに必要な厚さの氷が張るかは年によって異なります。
朱鞠内湖淡水漁協
- 住所:北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内
- ウェブサイト:朱鞠内湖淡水漁協
東大沼キャンプ場
- 住所:北海道亀田郡七飯町東大沼
- ウェブサイト:東大沼キャンプ場
あいすランド阿寒
- 住所:北海道釧路市阿寒町阿寒湖温泉4丁目5-10
- ウェブサイト:あいすランド阿寒
岩洞湖レストハウス
- 住所:岩手県盛岡市薮川外山24-12
- ウェブサイト:岩洞湖レストハウス
桧原漁協
- 住所:福島県耶麻郡北塩原村桧原剣ヶ峯1093
- ウェブサイト:桧原漁協


ドーム船、ドーム桟橋、屋形船などがあって、ワカサギ釣りが盛んな湖としては、長野県の野尻湖や諏訪湖、山梨県の山中湖や河口湖、千葉県の高滝湖、神奈川県の相模湖や津久井湖などがあり、さらに奈良県の津風呂湖、兵庫県の佐仲ダムなど、西日本にもドーム桟橋を設置して、手軽にワカサギ釣りを楽しめるようにしている場所が増えています。
山中湖漁協
- 住所:山梨県南都留郡山中湖村平野506-296
- ウェブサイト:山中湖漁協
河口湖漁協
- 住所:山梨県南都留郡富士河口湖町河口2985
- ウェブサイト:河口湖漁協
高滝湖観光企業組合
- 住所:千葉県市原市養老字柏野1365-1番地
- ウェブサイト:高滝湖観光企業組合
ハイマート佐仲
- 住所:兵庫県丹波篠山市小坂459-3
- ウェブサイト:ハイマート佐仲
釣りの道具とテクニック

ワカサギ釣りは、魚の活性が高い日であれば、ビギナーであっても1日に100尾近くが釣れることもあります。釣り方は、エサを付けた仕掛け(サビキ仕掛けと呼ばれる複数のハリが並んだもの。ハリにはエサを付け、仕掛けの下部にオモリを取り付ける)を底まで落とし、着底したあとは穂先を軽く揺するようにして、ワカサギにエサをアピールします。その後、穂先の動きを止めてアタリを待ち、プルプルッと震える穂先の動きを目で確認したところで、スッと仕掛けを持ち上げてアワセを入れます。あとは電動リールならボタンを押し、手巻きリールなら自分の手でリールを巻いて、ハリに掛かったワカサギを取り込みます。慣れてきたら初めの1尾が掛かったところでしばらく待ち、ワカサギが暴れることで仕掛けが揺れ、その動きに誘われて他のワカサギが別のハリに食いつくのを待ってから引き上げると、一度に2尾や3尾が釣れるようになります。

このように基本はシンプルなワカサギ釣りですが、「数釣り」を探究する方も多く、熱心なファンは自分用の小型魚群探知機を用意したり、一連の操作が少しでもスムーズにできるように、釣り座のレイアウトや装備品を工夫しています。穂先も硬さや長さが異なる複数のタイプを用意しておき、仕掛けもハリの数・形状・大きさ・ハリスの長さなどが違うものを使い分け、1尾でも多くのワカサギをねらいます。中には1日の釣りで1,000尾以上釣る「十束釣り(じゅっそくづり)」をする方もいて、電動リールを左右の手に1台ずつ持ち、交互に動かして途切れなくアタリを得て行く「二刀流」も標準的なスタイルになっています。工夫を重ねるほどアタリが増え、上達が実感できるゲーム的な面白さに夢中になる方も多いのがワカサギ釣りの特徴なのです。
釣りのあとは新鮮な味を楽しむ

ワカサギ釣りのもうひとつの魅力が、簡単かつ美味しく食べられることです。たくさん釣れた場合も下処理は簡単で、ボウルにワカサギを入れたら塩をバサッとかけ、軽くもみ洗いして表面の汚れを落としたら、流水で流す作業を2回ほどやるだけ。キッチンペーパーで表面の水気を拭けばどんな料理にも使えます。素焼き、素揚げ、空揚げ、天ぷらなどの定番の料理法のほか、マリネ、アヒージョ、かき揚げなどにしても美味。新鮮なワカサギは臭みもなく旨味があって、おかずにもおつまみにもぴったりです。誰でも釣果が期待でき、釣り応えも食べ応えもあるワカサギ釣りにぜひ挑戦してみてください。
- 記載の内容は2025年1月現在の情報です。変更となる場合があるのでご注意ください。
協力:つり人社