大分県九重町:洞窟奥の岩壁から湧き出る「壁湯温泉」
渓流沿いに佇む一軒宿「旅館 福元屋」に湧く、混浴の壁湯天然洞窟温泉。300年以上前、猟師が鹿の湯治を目撃したのがはじまりとされるこの湯は、今も変わらず、旅人の心と体をやさしく包み込みます。
洞窟奥の岩壁から湧き出る温泉はおよそ39℃とぬるめの温度。柔らかい肌触りのため、長くつかっても心地よさが続きます。ラジウムを含む泉質は、胃腸や皮膚に良いとされ、飲用も可能。せっかく訪れたなら、ひと口味わってみるのもこの地ならではの体験です。
女性専用の洞窟風呂も用意されており、こちらは手掘りで造られた屋内風呂。露天に比べてこぢんまりとしたつくりですが、しっとりと落ち着いた空間で、洞窟風呂ならではの趣が楽しめます。
湯に身をゆだね、川のせせらぎや鳥のさえずりに耳をすませながら温泉に浸かる、なんとも贅沢な時間です。
おすすめポイント
「町田川の渓流沿いに立つ一軒宿です。岩壁の奥から温泉が湧き出す天然洞窟風呂が名物であるほか、宿泊者が利用できる主人手づくりの内湯や離れの貸切風呂も風情満点。民芸調の宿がより非日常的な空間をつくり上げています。」
温泉宿だからこそ味わえる田舎料理
湯の魅力に加え、1泊2食付きの宿泊プランで味わえる女将の手づくり料理も楽しみのひとつ。夕食は地元の旬を映した田舎懐石、朝食はご飯が進むおかずが並びます。どの料理にも温泉の源泉を使用するほか、自家栽培のお米や地元の食材を取り入れています。温泉旅館ならではの滋味深いひと皿ひと皿を、地酒とともに味わえば、この地ならではの豊かで静かな時間が流れていきます。
旅館 福元屋
- 住所:大分県玖珠郡九重町大字町田62-1
- TEL:0973-78-8754
- 営業時間:日帰り入浴10:00~16:00まで受付
- 定休:無休
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料金(税込):
- 日帰り入浴 大人400円、子供200円
- 1泊2食付き20,900円~
- ウェブサイト:壁湯天然洞窟温泉 旅館 福元屋
「天空の散歩道」で紅葉を楽しむ九重“夢”大吊橋
九重“夢”大吊橋(ここのえゆめおおつりばし)は全長390m、高さ173mの歩道専用の吊り橋として日本一高さを誇ります。足元には深い渓谷が広がり、高所ならではのスリルも。橋の上からは、日本の滝百選にも選ばれた「震動の滝」や、新緑と紅葉の名所「九酔渓」が望めます。紅葉は11月上旬が見頃で、国内外からの観光客でにぎわいます。
吊り橋の入場ゲート周辺には展望台のほか、名物「九重“夢”バーガー」などのご当地グルメを提供する売店もあります。
九重“夢”大吊橋
- 住所:大分県玖珠郡九重町田野1208
- TEL:0973-73-3800
- 営業時間:8:30~17:00、7月~10月8:30~18:00(入場券の販売は閉門30分前まで)
- 定休:無休(悪天候時は入場制限の可能性あり)
- ウェブサイト:九重“夢”大吊橋
大分県竹田市:2時間歩いてたどり着く秘湯「法華院温泉」
標高1,700m級の山々が連なる、九州屈指の山岳地帯「くじゅう連山」。その山あいに広がる坊ガツル湿原の北西にあるのが「法華院温泉(ほっけいんおんせん)」です。
鎌倉時代に法華院白水寺として開かれ、明治時代より山小屋として登山者に親しまれている「法華院温泉山荘」に湧くもの。やまなみハイウェイの長者原から歩くこと約2時間、標高1,303mに位置し、九州で最も高い場所にある温泉と言われています。
湯船に浸かれば、大船山や平治岳などが窓越しに一望でき、雄大な自然に圧倒されます。神経痛や疲労回復に良いとされる源泉かけ流しの湯が、登山で疲れた体をやさしく癒してくれます。たどり着いた者だけが味わえる、まさに秘湯と呼ぶにふさわしい一湯です。
おすすめポイント
「九州で唯一歩いてしか行けない一軒宿の秘湯。片道約2時間のハイキングをした後に入る温泉は極楽です。紅葉の名所としても知られています。」
法華院温泉山荘
- 住所:大分県竹田市久住町大字有氏1778
- TEL:090-4980-2810
- 営業時間:11:00〜20:00(最終受付19:30)
- 定休:無休
- 料金(税込):日帰り入浴500円(3歳以下は無料)
- Instagram:法華院温泉山荘
- 備考:シャンプー、石鹸なし
- 持ち込みも不可
絶景を眺めながら、ソフトクリームを味わう
阿蘇くじゅう国立公園内の「レストハウスやまなみ」は旅の途中に立ち寄りたい休憩スポット。なかでも人気を集めているのが、種類豊富なソフトクリームです。定番のミルクソフトから、カボスとはちみつを合わせた「かぼはちソフト」など、ユニークなものまで7種類を展開。ミルクの味をしっかりと残しながら、すっきりとした後味なので、するりと食べられます。
くじゅう連山やタデ原湿原が眺められるカフェテラスでひと息つけば、旅の疲れも癒されそうです。そのほか、地元食材を使った料理や洋菓子も味わえます。
レストハウスやまなみ
- 住所:大分県玖珠郡九重町大字田野260-2
- TEL:0973-79-2345
- 営業時間:4月~11月9:00~17:00、12月~3月9:30~16:00(繁忙時は延長あり)
- 定休:火曜日(臨時休業あり)
- Instagram:レストハウスやまなみ
「ミヤマキリシマ」が咲く山として有名な平治岳
くじゅう連山の一峰「平治岳(ひいじだけ)」は、坊ガツル湿原の北東にそびえています。6月になるとツツジの一種「ミヤマキリシマ」で山の斜面がピンク色に染まり、この景色を見るために多くの登山客が訪れます。秋には山肌が紅葉に包まれ、四季を通じて彩り豊かな景観を楽しむことができます。
登山口である長者原には、小説や映画の題材にもなった登山案内犬「平治(へいじ)」の銅像が建てられています。訪れた記念として一緒に写真を撮ってみてはいかがでしょうか。
平治岳
- 住所:大分県竹田市久住町大字有氏
- TEL:0974-63-1111(竹田市役所)
熊本県南阿蘇村:江戸時代からある奇跡の湯「地獄温泉」
江戸時代から愛されてきた「地獄温泉」。その名湯を受け継ぐ「青風荘」では、「すずめの湯」「たまご地獄」「元地獄」と3つの源泉を楽しむことができます。
なかでも「すずめの湯」は、浴槽の底から直接湧き出す「足元湧出」と呼ばれる稀有な温泉です。硫黄成分を含んだ湯は、リューマチや肌荒れに良いと言われています。着衣入浴のスタイルをとっており、パートナーや家族と肩を並べてくつろげば、自然のぬくもりに身も心もゆるやかに包まれていきます。
おすすめポイント
「熊本地震被災からの被災を乗り越えた温泉宿です。足元湧出の露天風呂「すずめの湯」は、この地ならではの湯あみが楽しめます。湯上がりの楽しみは、旬の食材を活かした夕食。多彩な献立が揃う料理には、舌が唸ります。」
阿蘇の食材を贅沢に使ったコース料理
青風荘の1泊2食付きプランでは、厳選した阿蘇の旬の食材をふんだんに使った料理が並び、山の恵みを五感で堪能できます。
夕食は囲炉裏焼きが楽しめる山竈(やまくど)コース、器にもこだわった旬菜懐石コース、猪・鴨・鹿などジビエを味わえる季節の鍋コースの3種類を用意。普段なかなか出合えない食材に舌鼓を打つ、貴重なひとときが過ごせます。
また朝食は囲炉裏の火で魚や卵など自ら炙っていただくスタイルで、焼きたての香ばしさが食欲をそそります。食後はシェフが炭火で焼き上げた特製フレンチトーストで締めましょう。
地獄温泉 青風荘
- 住所:熊本県阿蘇郡南阿蘇村河陽2327
- TEL:0967-67-0005
- 営業時間:日帰り入浴10:00~17:00(最終受付15:00)
- 定休:火曜日(祝日の場合は営業)
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料金(税込):
- 日帰り入浴 大人2,000円、中学生~大学・専門学校生1,800円、小学生800円、小学生以下は無料(レンタル湯あみ着とバスタオル付き)
- 宿泊 1泊2食付き1人33,150円(1室2名利用時)~
- ウェブサイト:地獄温泉 青風荘
豊かな恵みをもたらす阿蘇山
地獄温泉の近くには世界最大級のカルデラを有する活火山「阿蘇山」があります。温泉やこの地域独自の生態系などは、火山の営みによって育まれてきました。
そんな阿蘇では、熱気球やパラグライダー、乗馬といった雄大な自然を体感できるアクティビティも数多くあります。登山だけにとどまらない、多彩な楽しみ方ができる場所として、多くの旅人を惹きつけています。
阿蘇山
- 住所:熊本県阿蘇市
- TEL:0967-67-2222(南阿蘇観光案内所)
- ウェブサイト:阿蘇山
長崎県壱岐市:古墳時代に発見された古湯「壱岐湯本温泉」
壱岐湯本温泉の歴史は古く、5世紀に神功皇后が三韓出兵の際に発見し、応神天皇の産湯として使われたという伝説が残されています。この地域は子だくさんの家が多いこともあり、神功皇后の「子宝の湯」として信仰されてきました。
その湯を今に伝える「平山旅館」の温泉は、湯本のなかでも旧湯と呼ばれています。近くに海があることから「塩湯」というしょっぱい湯が特徴です。内湯と露天それぞれで源泉かけ流しを楽しむことができるほか、温泉の蒸気を利用した蒸し風呂も。じんわりと身体の芯まで温めてくれる古湯は、何度でも入りたくなります。
おすすめポイント
「壱岐島にある温泉宿ですが、フェリーや飛行機を利用すればアクセスも快適。約1,500年の歴史を持つ古湯はぜひ堪能してみてください。」
壱岐島の魅力が詰まった海鮮会席料理
玄界灘に浮かぶ自然豊かな壱岐島は、美食の宝庫としても知られています。そんな土地の滋味をじっくり味わうなら、平山旅館の1泊2食付きのプランがおすすめです。
夕食に提供する海鮮会席料理には、料理長が自ら釣り上げた魚や、自家菜園の野菜など、旬の食材がふんだんに使用されています。彩りや器など細部にも気を配り、美しい見た目に思わず息をのむほど。この料理が忘れられないとリピートする方も多いそうです。
奥壱岐の千年湯 平山旅館
- 住所:長崎県壱岐市勝本町立石西触77
- TEL:0920-43-0016
- 営業時間:第1部8:00~17:00(最終入館16:00)、第2部19:00~21:00(最終入館20:00)※
- 定休:無休
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料金(税込):
- 日帰り入浴 大人800円、子供300円
- 宿泊 1泊2食付き19,800円~(2名1室/1名料金)+入湯税150円
- ウェブサイト:奥壱岐の千年湯 平山旅館
- 繁忙期は日帰り入浴不可の場合あり
神話に登場する「八本柱」の1つと言われる奇岩
写真提供:(一社)壱岐市観光連盟
壱岐のシンボルである「猿岩」は黒崎半島の先端にあります。長い時間をかけ自然に削られていき、まるでそっぽを向いたサルの横顔のような姿をしています。夕暮れ時には、赤く染まる空と猿岩のシルエットをひと目見ようと、多くの方がカメラを手に訪れます。
また海側から猿岩を眺めるクルーズ体験も湯本湾から出航されており(予約制)、陸から見るのとはまた違った楽しみ方ができます。周辺には土産物店もあり、猿岩をモチーフにした商品を思い出に買ってみてはいかがでしょうか。
猿岩
- 住所:長崎県壱岐市郷ノ浦町新田触870
- TEL:0920-48-1130(壱岐市観光課)
- ウェブサイト:猿岩
鹿児島県出水市:温泉マニアが虜になる足元湧出の温泉「湯川内温泉」
かつて薩摩藩主・島津家御用達の温泉として知られた湯川内温泉。その名湯を今もなお受け継ぐのが「湯川内温泉かじか荘」です。
館内には「上の湯」と「下の湯」という2つの温泉があり、どちらも足元から湧き出す足元湧出の湯。空気に触れることなく湧き出す温泉は、新鮮な温泉が楽しめると人気です。
温泉は38~39℃で湧出しているので、長時間の入浴にも最適。体の芯までほぐれた後は、飲泉場で温泉水を飲み、大地の恵みを心ゆくまで堪能してはいかがでしょうか。
おすすめポイント
「廃業危機や台風の災害を乗り越え、2025年7月1日にグランドオープンしました。日帰り入浴のみですが、全国的にも希少な足元湧出の名湯です。」
湯川内温泉かじか荘
- 住所:鹿児島県出水市武本2060
- TEL:0996-68-0085
- 営業時間:9:00~12:00、15:00~19:00
- 定休:水曜日、木曜日
- 料金(税込):大人(12歳以上)450円、6歳~11歳150円、5歳以下50円
- アクセス:JR出水駅から車で15分
- ウェブサイト:湯川内温泉かじか荘
外はサクサク、中はしっとりなチーズ饅頭
出水市を訪れたなら、お土産にぜひ手に取りたいのが、1950年(昭和25年)創業の老舗菓子店「菓匠 田中」で販売されている「チーズまん」。チョコチップを練り込んだ皮に、チーズクリームを包んだ洋風の饅頭です。
そのままでもおいしくいただけますが、電子レンジで温めるとふんわり、冷蔵庫で冷やすとしっとりと味わいや食感が変化。上品な甘さなので、コーヒーやワインと合わせるのもおすすめです。
菓匠 田中
- 住所:鹿児島県出水市下鯖町464
- TEL:0996-67-1237
- 営業時間:8:30〜19:00
- 定休:第3日火曜日
- ウェブサイト:菓匠 田中
世界でも有数のツルの越冬地
毎年10月から3月にかけて、1万羽を超えるツルが越冬のためシベリアから出水へ渡来してきます。ナベヅルやマナヅルを中心に、数多くのツルを観察することができます。また、世界にいる15種のツルのうち、約半数の渡来記録があり、その数と種類の多さは日本一を誇ります。
ツルをじっくりと観察したいのなら、「出水市ツル観察センター」2階の展望室がおすすめです。空を羽ばたく姿だけではなく、エサをついばんだり、羽つくろいやダンスをしたりなど、さまざまな様子が見られます。ツルの生態をより詳しく学べる日本唯一のツルの博物館「クレインパークいずみ」もおすすめです。
ツルの越冬
- 住所:鹿児島県出水市全域
- ウェブサイト:出水市ツル博物館クレインパークいずみ
- Instagram:出水市ツル観察センター
- 記載の内容は2025年7月現在の情報です。変更となる場合があるのでご注意ください。
(識者)
飯出敏夫
温泉紀行ライターとして約40年活動し、取材した温泉は3,000湯を超える。日本初の温泉専門誌「温泉四季」創刊に携わり、現在は「温泉達人コレクション」で情報発信を続ける。著書に「一度は泊まってみたい秘湯の宿70」「温泉百名山」など。日本旅のペンクラブ代表会員、温泉達人会代表。
