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【空飛ぶレストラン】おいしい機内食はどうやってつくられる?ANAの機内食工場ANAC(ANAケータリングサービス)へ潜入!

2016.10.20ANAオリジナル

“食材別”の“一方通行”ルールで食品の交差汚染を防ぐ

「プレパレーション(下ごしらえ)」エリアは、肉・魚・野菜といった食材ごとに、保管する冷蔵庫や下ごしらえをするゾーン、包丁やまな板といった調理器具まで分かれています。ちなみに魚のまな板はブルーで肉はピンクとひと目でわかりやすくなっています。

肉専用の冷蔵庫には、程よく霜の入った上質な国産和牛のフィレやサーロインがどっさり
肉専用の冷蔵庫には、程よく霜の入った上質な国産和牛のフィレやサーロインがどっさり

これは食品の「交差汚染」を防ぐため。交差汚染とは、調理済みの料理と生ものが触れたり、食材から別の食材へ菌が移ったりすることです。そのために工場内では「食材別の一方通行」が徹底されています。また、食材の入荷した材料から順番に使うという管理(先入れ先出し)も、曜日ごとに決められた7色のカードを使い分けて徹底して完璧に遂行されていました。

さて、ブルーの「魚」ゾーンを歩いていると、目を疑うような光景に出合いました。取材時期は8月でしたが、なんと旬の盛りのハモがまるごと何本も並び、それをシェフが1本ずつ調理していたのです。

まるで料亭のような美しい骨切りを見せてくれた丸山正樹さん。ハモはお椀になるそうです。
まるで料亭のような美しい骨切りを見せてくれた丸山正樹さん。ハモはお椀になるそうです。

ハモといえば夏の割烹や懐石の花形食材ですが、細かく包丁を入れて骨切りをしなければならないため高い技術が必要で、非常に手間のかかる食材です。「当然すでに切り身になったものを仕入れているだろう」と思い込んでいましたが、実はこんなところまで人の手がかけられているのでした。

下ごしらえから調理まですべて手作業!プロの技術にうっとり

こうして下ごしらえされた食材は「プレパレーション」エリアから「調理製造キッチン」へと一方通行で運ばれます。調理製造キッチンは「和食」と「洋食」に大きく区別され、さらに冷たい前菜やサラダなどを扱う「コールドキッチン」と、肉を焼いたり魚を煮たりする「ホットキッチン」に分かれています。

下ごしらえ同様、調理工程でも手作業が多いことに気がつきます。例えばオムレツもひとつひとつ手作り。

朝食用のオムレツをひとつずつ焼いていた中嶋裕幸さん。まるでホテルのよう
朝食用のオムレツをひとつずつ焼いていた中嶋裕幸さん。まるでホテルのよう

工場というからなんとなくベルトコンベアで食材が運ばれてきて、機械が調理していくというイメージがありましたが、機内食工場ではむしろ機械が調理する方が稀なくらいです。

オムレツは、機内で再加熱するためふわふわとやわらかく仕上げているそう
オムレツは、機内で再加熱するためふわふわとやわらかく仕上げているそう
ファーストクラスの前菜のひと品(8月メニュー)。ひとつずつ異なる調理法で味つけした各々の食材を、手作業で串に刺す
ファーストクラスの前菜のひと品(8月メニュー)。ひとつずつ異なる調理法で味つけした各々の食材を、手作業で串に刺す
野菜のサンドイッチはベジタリアンメニューの軽食。切り口が美しい!
野菜のサンドイッチはベジタリアンメニューの軽食。切り口が美しい!

ところで、機内食とレストランの料理で決定的な違いは食べるまでのタイムラグ。普通のレストランであればできあがった料理は熱々のままお客様の元に運ばれますが、機内食ではお客様が食べるまでに数時間かかります。常温のままでは雑菌が繁殖してしまい、安全性に支障をきたす可能性があります。そこでできたての料理をブラストチラーという機械に入れて急速に5度程度まで冷却します。菌が繁殖しやすいとされる10度~60度の温度帯に料理を留めないことで、料理の風味を損なわずに機内食の安全性を高めているのです。

日本の機内食工場ならではの美しい盛りつけ。自家製パンも見逃せない

さて、適切に調理し、温度管理された料理は「ディッシュアップ(盛りつけ)」エリアに運ばれます。「調達」エリアで離ればなれになった肉や魚、野菜が、ようやく再会するのがこのエリアです。ここでは盛りつけの見本写真がついたマニュアルに従って、ひと皿ずつ手作業で料理を盛りつけていきます。

盛り付けも全てひとつひとつ手作業
盛り付けも全てひとつひとつ手作業

ANAの機内食は、エコノミークラスといえど品数が豊富で、もれなく盛りつけるのはかなり大変そうですが、ベテランのキッチンスタッフは手早くも美しく盛りつけを進めていました。スタッフいわく「チャイルドミール」はかわいらしく楽しげに、エコノミークラスはおいしそうなシズル感を大切に、ファーストクラスやビジネスクラスは美しく上品に、それぞれ思いを込めて盛りつけているそうです。

チャイルドミールは、今人気のデコ弁風
チャイルドミールは、今人気のデコ弁風

ちなみに「お隣りの人のお肉のほうが大きく見える」という“機内食あるある”は、実はまったくの目の錯覚です。「プレパレーション」エリアの段階から、すべての食材はグラム単位で正確に測られているので、ご安心あれ。

ところでANAの飛行機に乗ったことがある方は、「パンがおいしいな」と思われたのではないでしょうか。実は数種類あるパンも自家製で、専門のパン焼き職人が羽田に設けられたベーカリー工場で毎日焼き上げた新鮮なパンを、川崎工場と成田工場に運んでいます。以前はファーストクラスとビジネスクラスにのみ提供していましたが、人気が高かったため2015年12月よりエコノミークラスでも食べられるようになりました。

羽田のベーカリー工場から運ばれたばかりのフレッシュなパン
羽田のベーカリー工場から運ばれたばかりのフレッシュなパン

最終の安全確認も抜かりなし。専用の車両でようやく飛行機へ

盛りつけられた料理は、異物混入がないかを最終確認するために、最後にX線検査を受けトレイにセットされます。こうして一連の過程を見てみると、ホットキッチンの「ブラストチラー」とディッシュアップエリアの「X線検査装置」の2点だけが機内食工場特有のものですが、それ以外の調理はほとんどが手づくりで、街のレストランと変わらないどころか、むしろ品質管理レベルが高いことがわかります。外国のエアラインなどでは、街のレストランでつくった機内食をそのまま運び込むといったケースもあるようですが、「食の安心・安全」を追求するANAは自社基準を厳しく設定しています。

行き先ごとにメニューや乗客の数が異なるため、指示書に従って搭載する
行き先ごとにメニューや乗客の数が異なるため、指示書に従って搭載する

カトラリー類などの備品とともにセットされた機内食は、トレイごとカートに収められロックがかけられます。安全を管理するため、この先は機内でクルーがサービスする直前まで、カートが開けられることはありません。

いよいよ出発。ドリンクや機内サービス用品、機内で販売される免税品なども積み込まれる
いよいよ出発。ドリンクや機内サービス用品、機内で販売される免税品なども積み込まれる

フライトごとに分別された機内食を収納したカートは、「フードローダー車」という機内食を運ぶためにつくられた特殊な車両の荷台に、カートごと積み込まれてようやく工場を出発。

フードローダー車が飛行機まで直接機内食を運ぶ
フードローダー車が飛行機まで直接機内食を運ぶ

運び込まれた機内食は、機上で食事時間になると再び加熱され乗客の空の旅を楽しませてくれるのです。