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    出典 : pixta_55452092

    掲載日:2020.05.20

    【ドッグトレーナー監修】犬の上下関係は嘘?主従関係や服従は間違い?信頼関係を築くためのしつけとは?

    「犬は上下関係を作る」「犬は家族を順位づけする」「犬はリーダーのいうことしか聞かない」。これまで広く伝わっていたこれらの犬の特性は、現在ではすべて否定されているものです。古い知識や誤った情報をどんどん更新して、いち早く愛犬との関係づくりに役立てていきましょう。

    犬に上下関係はない!

    犬に上下関係はない!
    pixta_25804751

    ●人間の考える上下関係は存在しない
    食べもの、寝床、おもちゃ、すべてを最上位に立つものが優先して得られる。
    そのような上下関係を構築する特性が犬にはあると、長い間考えられてきました。

    上下関係をつくり、頂点に立とうとする性質を犬が持っているために、人間との暮らしにおいては「犬を頂点に立たせない、人間の上に立たせないためのしつけが必要」という考えが広く信じられてきたのです。

    犬のトレーニングにおいても、その考えに即した理由付けが多くされてきました。

    しかし、実際は違うことがその後の研究によって明らかになっています。
    今では、人間が思う「上下関係」の概念そのものが犬にはないと考えられています。

    ●アルファシンドロームの解釈は誤り
    アルファとは順位社会のなかの頂点のことをいいます。
    リーダーと言いかえることもできるでしょう。

    アルファシンドロームとは、日本語では権勢症候群と訳されます。
    犬が飼い主の家族を群れと認識し、自分の思い通りにするため、群れの頂点に立とうとして起こるさまざまな問題行動を指します。

    「アルファ気質が強い犬」といえば、すべてを支配下におこうとする気質、そのための行動を起こす特性が強い犬、と捉える人が今でも多いかもしれません。

    しかし、こうしたアルファシンドロームに関わる解釈も、現在では専門家の間で否定的に考えられています。

    アルファシンドロームとは人間が定義付けた行動にすぎません。
    その意味する支配的欲求は、あくまでも人間的などん欲さをイメージしたものであり「そもそも犬には当てはまらない」と考えられるようになりました。

    なぜなら、犬に限らずとも動物は生きるための必要最低限の資源(食べ物、寝床、おもちゃなどの欲求を満たすもの)を得られれば満足します。
    人間と違い、それ以上多くを望むことはないと言えるからです。

    ●支配的な欲求はない
    「アルファ気質が強い」とされてきた行動のひとつに、目の前の食べものを奪われまいとして唸る様子が挙げられます。
    この行動を犬種の特性で比べて考えてみましょう。

    警戒心に優れた柴犬と、友好的で社交性の高いトイ・プードル。
    食べものを少しでも奪われそうになると大きな不安を感じやすいのが柴犬です。
    そのため、食べ物を前にして低く唸ったり、歯を剥き出したりする行動は、トイ・プードルよりも柴犬に多く見られることでしょう。

    両者の行動には「これ以上は無理」「譲れない」という結果にいたるまでの許容範囲、寛容さの違いがあらわれているのです。

    とはいえ、陽気でフレンドリーなトイ・プードルも、生きるための最低限の資源を取り上げられ「これ以上奪われたら飢えてしまう」という経験をすれば、食べものを取り上げる素振りを見せるだけで不安に感じ、守ろうとして咬みついてくるに違いありません。

    「アルファ気質が強い」とされる犬の行動は、上に立とうとする支配的な欲求のためでなく、不安を感じやすい神経質な性格や、些細なことにも敏感に反応する警戒心の強さなどが理由と考えられるのです。

    犬の上下関係が出てきた理由は?

    ●狼の研究が発端
    犬の世界に上下関係が存在するという認識が広まった背景には、犬の祖先である狼の研究が大きく関係しています。

    研究がなされていた当時、狼の群れを観察するなかで、自分の欲求を通すためにほかの個体よりも上に立ち、支配しようとするアルファの存在が確認されました。
    アルファの狼がすべての権限を持ち、下位にいる狼は食べることさえも許可なしではままならないという様子でした。

    このことから、狼の子孫である犬も同様の特性を受け継いでいるという説が支持され、広く一般的に知られるようになりました。

    ●飼育下の環境による特殊な関係性
    しかし、このときの研究対象の狼は人間に飼育されており、その環境は野生とは明らかに異なるものです。

    限りあるテリトリーのなかで、限りある資源(食べ物や寝床など)しか与えられず、それを狼同士で奪い合い、競争を余儀なくされる特殊な状況。
    その中で、生き残るために強いものが全体を支配する、という構図が生まれていたのです。

    現在では、アルファを絶対権力とする群れ内の明確な順位付けや上下関係は、人間が作り出した特殊な環境によってできたものだと解釈されています。

    ●野生の群れは家族のような関係性
    その後に続く野生の狼の群れの研究では、アルファといわれる支配的な存在や順位社会は確認されていません。
    狼の群れの中にも父親と母親のような存在があり、家族を思わせる関係性が築かれていると分かってきました。

    ●野生にボスザルはいない
    狼だけでなく、ニホンザルにも野生の群れにボスザルのような役割が存在しないことがわかってきました。

    動物園などでみられる猿のリーダー制や階級制度は、狭いテリトリーで同じ食べ物を争う特殊な環境でこそ生まれたものです。

    自然界では、別の場所で、別の食べ物を探して食べれば良いため、同じ食べ物を巡って激しく争い、そこから順位付けが行なわれることはありません。

    犬のいる家庭の中で順列はある?

    犬のいる家庭の中で順列はある?
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    ●犬は家族を順位づけしない
    「1位はお母さん、2位はお兄ちゃん、3位はお父さん。
    お母さんがお父さんよりも上だから、お母さんのいうことを聞く」など、犬は家族を順位づけして行動している、などの話を聞くことがありますが、果たしてそうなのでしょうか。

    実は、犬は順列という考えも持っていません。

    「子供のいうことだけ聞かない」「お母さんとソファでくつろいでいるときにお父さんが近寄ると怒る」「お父さんが呼ぶとすぐ来るのに、妹が呼んでも来ない」「たまにしか会わないトレーナーさんにすごくなついている」など、相手によって犬の態度や行動が変わることに疑問を持たれる読者もいるかもしれませんが、犬の行動の違いには、犬が許容できる範囲や、許容する順番があらわれているのです。

    たとえば、幼い子供のいうことを聞かないのは、「自分を養護してくれる相手ではない」と考えているためです。
    お父さんやお母さんはお世話をしてくれたり、遊んでくれたり、ご褒美をくれるので期待を持って指示を聞くのです。

    ちなみに、子供が犬の世話ができる年齢になると、指示に従うようになるという事例は多くあります。

    特定の人にだけなつかない、吠える、などの行動がみられる場合は、相手を脅威に感じていたり、関係性が薄いことが多くあります。
    関係性があっても、爪切りや耳掃除など犬にとってうれしくないことをする相手も警戒されてしまうでしょう。

    ドッグトレーナーが犬に好かれるのは、いつも優しく接してくれ、一緒に遊んでくれたり、たくさんほめてご褒美をくれたりするからです。
    過ごす時間が少なくても、犬と親しい関係を築くことができるのです。

    順位づけのように思える行動は、そのとき自分が置かれた状況のなかで、単純に自分にとっての「うれしいこと」「楽しいこと」を選んだり、人によって許容している範囲が異なるだけなのです。

    犬のリーダーウォーク

    犬のリーダーウォーク
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    ●リーダーウォークってなに
    以前は、人と犬の上下関係を明確にするために、リーダーウォークという訓練方法が用いられていました。

    訓練中は犬と目線を合わせず、声も出さず、無視することを徹底して行ないます。
    そして、犬より早く歩いたり走ったりします。
    方向転換をした際、犬がついてこない場合はチョークチェーンと呼ばれる犬の首が締まるタイプの首輪を用い、ぐっと犬の首を締めます。

    なぜ、このようなトレーニングが求められたからというと、先頭を歩く者は群れのリーダーで、目を合わせるのは下位の者がリーダーに対して行う行為だと信じられていたからです。

    そのため、飼い主が上位に立つためには「犬と目を合わせず、チョークチェーンを用いて犬が飼い主の前を歩くことを力で制圧する」ことが重要だと考えられていた時代があったのです。

    ●上下関係はトレーニングの理由付けにならない
    このように以前は、犬を上位に立たせない、アルファシンドロームにさせない、という理由から、「散歩中に犬を前に歩かせてはいけない」「食事は人間が先にする」「一緒の寝床で寝てはいけない」などの方法が推奨されてきました。

    しかし、「犬は上下関係を求めない」、「アルファシンドロームは誤り」という現在の考えでは、しつけを行う目的にこのような理由付けは当てはまりませんし、体罰を中心としたしつけ方は犬の福祉を損ない、飼い主さんと犬との信頼関係が崩れてしまうことも様々な研究で分かってきました。

    人と犬が共に生活するためにしつけは必要なものですが、その目的は上下関係を維持することではなく別の理由があります。

    散歩中にむやみに前を歩かせないことや、リードを引っ張らせないことは、飛び出しを防止して犬の安全を確保し、お散歩をスムーズで快適なものにするためですし、「寝床を共有しない」ことは、犬にとっても生きていくうえで必要な「寝床」を守るための問題行動が起こる可能性を取り除くために有効だと考えられています。

    犬の上下関係まとめ

    犬の上下関係まとめ
    pixta_56448460

    犬は飼い主さんとの間に上下関係を求めません。
    ただ純粋に、飼い主さんの犬への接し方が犬の行動や性格に影響を与えるのです。
    愛犬が困った行動を起こしたら「アルファシンドロームだ!」と考える時代は終わりです。
    安易な原因を求めず、行動の理由を探り、接し方について振り返ることが大切です。

    愛犬を理解し、それぞれの個性に合った適切な対応がとれる飼い主さんを目指したいですよね。
    そのためにも、古い情報や誤った方法を用いないように細心の注意を払っていきましょう。

    ライター:石川 明加 Haruka Ishikawa
    監修者:鹿野 正顕(学術博士)

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