ANA Inspiration of Japan

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世界中の海を潜ってみたい!
フリーダイバー福田朋夏が、海を通して見ている風景

2016.10.06ANAオリジナル

ANAオリジナル
福田朋夏さん

空気タンクを背負わずに息を止めて潜り、その深度を競うフリーダイビング。福田朋夏さんは今年5月の世界大会に出場し、水深95mと輝かしい成績を収めて優勝。世界記録の水深101mにせまる最も有力な選手として、国内外から熱い視線を送られています。

一年のほとんどを海外で過ごす福田朋夏さんから、遠征先でのリラックス法や、海を通じて見ている世界について伺いました。

Text by
Makoto Miura
Photo by
Koichiro Doi

最も幸せを感じるのは、海とひとつになれた瞬間

福田朋夏さん

―― フリーダイビングを始めたきっかけを教えてください。

福田朋夏さん(以下敬称略):趣味で海に潜り始めたのは10年以上も前です。最初は友人と素潜りをしたり、漁師さんの手伝いをしたりして楽しんでいました。
2010年に、当時住んでいた沖縄でフリーダイビングの世界大会が開催されたんです。スタッフとして参加させていただくなかで、世界トップクラスのフリーダイバーが潜る姿を見て、その美しさに感動しました。そして「私もいつかこんなふうに潜りたい」と思い、翌年の2011年から本格的なトレーニングを始めました。

―― 競技を始めてすぐにCWT(※1)で水深58mを記録したんですね!

(※1 CWT)コンスタントウェイト・ウィズフィン。フィン(足ひれ)を装着し、ロープに沿って目標の深度まで潜るフリーダイビングの代表的種目。ロープをつかんで進んではならない。

福田:初めて出場したのは、2011年のギリシャ・カラマタでの大会でした。海がとても綺麗で、涙が出てきそうになったことを覚えています。水深を58mに設定したのは、沖縄のメインストリートの国道58号から。いつも「ゴッパチ」と呼んで親しんでいたからなんです(笑)

―― ゴッパチ、覚えやすくていいですね!そこから着々と記録は伸びていきましたか?

福田:翌年には、大会前にブラックアウト(失神)を起こすトラブルもあったのですが、無事に目指していた80mをクリアしました。2016年5月には95mに到達し、少しずつですが100mに近づいている実感があります。今後の目標は、世界記録の101mを超えることです。

撮影 篠宮龍三
撮影 篠宮龍三

―― 水深100mの世界へ潜るというのは、どんな感覚なんでしょう?

福田:水面でメディテーションを行い、何も考えずに潜っていきます。水深30mくらいからは泳がなくても沈んでいくフリーフォールという状態になるんですが、これがとっても気持ちいいんです。周囲がどんどん暗くなって、体にかかる水圧も大きくなるなかで、海と一体になっていくような感覚に包まれます。

―― まるで体が海に溶け込んでいくような感じですね。

福田:この「海や自然とひとつになった」と思えるときが、フリーダイビングをしていていちばん幸せな瞬間です。決して毎回ではなく、私が海のすべてを受け入れて、海にも受け入れてもらえたときだけ、一体になれるんです。
この感覚を味わいたいために、私は潜り続けているのだと思います。

―― フリーダイビングをする上で大切なことはなんですか?

福田:鼓膜や肺の鍛錬や、恐怖心のコントロールなど、フィジカルもメンタルも通常のスポーツとは違ったトレーニングが必要になります。でも、最も大切なのは海が好きという気持ちです。この気持ちさえあれば誰でも、深く潜らなくたって、水中を泳ぎ回る楽しさを味わうことができます。
もっとたくさんの方にフリーダイビングを経験してもらいたいですね。

遠征先では食事や料理でリラックス☆

福田朋夏さん

―― 一年のなかでどれくらいの期間を海外で過ごしているのでしょうか。

福田:年間でだいたい5ヶ国の大会に出場し、一回の滞在はトレーニングも含めると3週間から2ヶ月ほどになります。ですから、一年のほとんどを遠征先で過ごしていることになりますね。

―― それは長いですね。遠征先では、どのように気分転換をしていますか?

福田:毎日練習ばかりしていると精神的にも体力的にも疲れてしまうので、大会前は2日おきに休みを取るようにしています。ビーチでストレッチをしたり、散歩をしたり、好きな音楽を聴いたり、仲間と食事をしたり。とにかくリラックスすることを心がけています。
そうはいっても、試合の期間に入ると、どうしても潜ることばかりを考えてしまいます。そんなときは、パンをこねたり、お鍋の火加減をみたり、味見をしたり、楽しく料理に集中して、気持ちを切り替えています。

―― 料理がお好きなんですね。得意な料理はなんですか?

福田:やっぱり日本食でしょうか。出汁の匂いにホッとしているとき、私ってやっぱり日本人だなーって実感しますね。
この間、海外にいるとき、夢に卵かけご飯が出てきたんです。その日は一日中、頭の中がその夢でいっぱいになって…。新鮮な生卵と白い炊きたてのご飯を食べに、今すぐ日本に帰りたくなっちゃいました(笑)。
そういうシンプルなものが、たまに恋しくなりますね。

―― 卵かけご飯というのがリアルでいいですね(笑)。遠征先では自炊することが多い?

福田:自炊が基本ですね。遠征先では海外の選手と部屋をシェアして、一緒に料理をします。だから、いろいろな国の料理を習って食べることができるんです。
私も日本から調味料を持っていって日本料理を作ります。日本食は海外の選手からも大人気で、特にお寿司や日本のカレーを作ってと言われます。

福田朋夏さん

―― 海から離れて過ごすこともあるんですか?

福田:大会後はしばらく潜るのをお休みしますが、1週間くらい経つと、潜りたくてしょうがなくなってくるんです。そんなときは、ビーチで足を海に浸して深呼吸をすると、力がみなぎってきます。海は私にとってパワーを充電する場所であり、なくてはならないものです。

―― なるほど。今まで潜った中で印象に残った海はどこでしょうか。

福田:たくさんあって難しいのですが、モルディブの海は色とりどりの命が輝いていて、楽園にいるようでした。イルカの大群が現れたり、かわいいサメがいたり、いろんな出会いがありました。

メキシコのラパスでは、美しいビーチが広がる無人島で寝起きしたのもいい経験でした。練習の合間にアシカのコロニーに行って一緒に泳いだり、夜は満天の星を眺めたりと、最高な環境だったんです。

―― 国内ではいかがですか?

福田:日本では、やっぱり沖縄がいちばん気に入っています。海に潜ると「帰ってきたな」という気分になりますし、まったりとした空気が大好きです。

プライベートでもやっぱり気になるのは海!

福田朋夏さん