ANA Inspiration of Japan

好奇心を刺激する、旅と日常にまつわるWebマガジンライフスタイルマガジン ANA Travel & Life (トラベル アンド ライフ)

【空飛ぶレストラン】「おいしい」と評判のANAの機内食には秘密があった!ANAケータリング(ANAC)で活躍するトップシェフが明かす秘訣とは?

2016.12.08ANAオリジナル

ANAオリジナル
ANAケータリング洋食統括部長・清水誠さん

日本の航空シーンをリードする航空会社として、子どもからお年寄りまでどんな方にも喜ばれる上質な機内食を提供しているANA。機内食には「地上1万メートルの乾燥した機内」で「突然の気流の乱れ」などにも備えながら「調理してから一定の時間が経過した料理」を「機内でリヒート(再加熱)」していただくという、地上のレストランとは大きく異なる特性があります。飛行機に乗っていない時も食べたくなるおいしさは、どのように生み出されるのでしょうか。ANACの洋食部門で洋食統括部長として活躍する清水誠シェフに伺いました。

Photo by
Masashi Yoshikawa
Text by
Shifumi Eto

―― 飛行機に乗ると「今日の料理は何かな」とメニューが気になります。機内食のメニューはどのように考案するのですか?

清水誠洋食統括部長(以下敬称略):ANAでは日本の四季に合わせて3~5月の春メニュー、6~8月の夏メニュー、9~11月の秋メニュー、12~2月の冬メニューと年4回メニューを変えています(標準食の場合)。それぞれのメニューづくりは、だいたい13カ月前から取りかかります。私は洋食統括部長として、現在は7名の洋食シェフとともに主に洋食メニューを考案しています。開発会議や試作をくり返し、調達部門やサービス部門といった他の部署とも会議をしながら、だいたい1年がかりでメニューをつくりあげています。

ANAケータリング洋食統括部長・清水誠さん
ANAケータリング洋食統括部長・清水誠さん

―― 1年がかりとは長期プロジェクトですね。なぜ他の部署も参加するのですか?

清水:なぜなら機内食にはさまざまな制約があります。たとえばここ成田工場で、私たちは1日およそ1万2300食の機内食を調製しています。新しいメニューに切り替えてから3ヵ月間、これだけの数量をまかなえる高品質な食材を安定確保できるかというのは大切な問題で、調達部門との連携は欠かせません。また、私たちシェフは料理のディッシュアップ(最後の仕上げ)を客室乗務員におまかせすることになります。限られた時間と空間でもお客様にスムーズに料理をお届けできるよう、機内ではファーストクラスは4ステップ、ビジネスクラスは3ステップまでに手数を押さえています。ディッシュアップの確認は、サービス部門とともに行っています。

ANAケータリング洋食統括部長・清水誠さん

―― 調理部門が考えるメニューづくりのポイントは何ですか?

清水:私は「味」「彩り」「食感」の3点を重視しています。「味」は1食のなかでなるべく多くの食品を使い、バランスのとれた仕上がりにする。「彩り」は旬の食材を用いて見た目から食欲をそそる色合いをつくること。「食感」は、地上より乾燥している機内でも喉を通りやすいようにとろみのあるテクスチャーと、歯応えのある質感を組み合わせています。機内には世界各国さまざまなお客様がいらっしゃるので、皆様にしっかりした食べ応えを感じていただくためにも、食感は大切にしています。

ANAケータリング洋食統括部長・清水誠さん

―― 機内食ではお刺身やたまごかけご飯は食べられないと聞いたことがありますが、使えない食材もあるのですか?

清水:機内食で最も重要なのは、衛生管理を徹底し、安全で安心な料理をお届けすることです。生のお刺身や生たまごといった加熱していないものは、食品汚染の可能性を考えて一切使用しません。これは「HACCAP(ハサップ)」という世界基準の食品の衛生管理方法に基づいています。けれども湯引きをして酢で締めるなど殺菌をしたお刺身や加熱した温泉たまごなどは、機内でお出しすることもありますよ。
ちなみにANAでは「HACCAP(ハサップ)」を遵守するほか、より厳格な自社の衛生基準も設けています。自社ルールにより、たとえばピーナッツやフレッシュベリーといった機内ではお出ししない食品もありますね。

ANAケータリング洋食統括部長・清水誠さん

―― えっ!他のエアラインでは、ドリンクサービス時のおつまみにピーナッツはよく配られますし、デザートにブルーベリーやラズベリーがトッピングされていることも多いですが。

清水:そうですね。ただピーナッツはアレルギーをお持ちの方も多くいらっしゃいますし、ベリー類は外からは見えない内側にカビがつく可能性があるので、ANAでは使用していないんですよ。

―― 逆にANAの機内食だから使う食材はありますか?

清水:ANAは現在、日本各地の魅力を全国と海外にお伝えするプロジェクト「Tastes of JAPAN by ANA」に取り組んでいます。このプロジェクトは、3カ月サイクルで3つの都道府県を取り上げ、約4年をかけて全国47都道府県すべてを特集するというもの。それぞれの県で知られざる食材や調味料を発掘しています。

Tastes of JAPAN by ANAのメニューのひとつ、ANAオリジナル郷土料理・和歌山。12月-2月に日本発アジア行き一部路線のビジネスクラスで提供
Tastes of JAPAN by ANAのメニューのひとつ、ANAオリジナル郷土料理・和歌山。
12月-2月に日本発アジア行き一部路線のビジネスクラスで提供

まだ公開していませんが、読者のみなさんだけに先行してお伝えすると、2016年12月~2017年2月の冬メニューでは、3つの都道府県のうちひとつとして「和歌山県」をフィーチャーします。私は自分の足で産地を回り、自分の舌で食材を確かめようと、先日も和歌山県を訪れました。そこで極上の酢や南高梅のピューレを見つけましたよ。こういった食材はANAの機内食でしか召し上がっていただけないですね。

―― それは楽しみです!ところでANAの機内食といえばスターシェフが勢揃いしたコノシュアーズについて「THE CONNOISSEURS(ザ・コノシュアーズ)」が有名ですよね。ザ・コノシュアーズのメンバーは、どんな方が選ばれるのですか?

清水:フード&ビバレッジのプロフェッショナルとして外部から関わっていただいているメンバーは、日本在住もしくは日本に縁のある方で、ANAの機内食における考え方に共感していただいたり、未来への挑戦を応援していただけたりする方にご参画いただいています。外部のスターシェフからいただいたレシピは、ANACのシェフが機内食用にアレンジします。ザ・コノシュアーズのメンバーやメニューの提供開始時期などは、ANAの商品戦略部とANACのシェフが一緒に考えています。

―― 機内食づくりにおいて、やりがいを感じるのはどんな時ですか?

ANAケータリング洋食統括部長・清水誠さん

清水:私は料理人ですので、やはり大勢のお客様に自分が調理した料理を召し上がっていただけるというのが最大の喜びです。私は前職でホテルに勤務しており、レストラン、宴会部門の料理長としてたくさんのお客様に料理をお出ししていましたが、やはり1日およそ1万2300食機内食とは規模が違いますので、この仕事におけるダイナミズムを感じています。また、日本の方のみならず世界各国のお客様に利用していただくグローバルな仕事だと誇りを持っています。

―― さらに進化する機内食をこれからも楽しみにしています。ありがとうございました。

清水誠
清水誠
武蔵野調理師専門学校を卒業後、プリンスホテルを経て、全日空ホテル・クラウンプラザホテルにてレストラン・宴会部門の料理長を務める。2010年ANAケータリングサービスに入社。ホテルで培った経験を生かしつつ、世界のフードトレンドや最先端の技術にも精通し、日々新しい機内食づくりの研究を重ねている。