カラフトマス釣りのメッカ
アイヌ語でシリエトク、地の果てを意味するともいわれる知床は2005年に世界自然遺産に登録された。現在、日本国内で世界自然遺産となっているのは、知床、白神山地、小笠原諸島、屋久島の4地域のみ。このことからも、その自然の豊かさがよく分かる。
知床を代表する魚といえば、何といっても夏のカラフトマス。知床はカラフトマスの魚影が最も多い地域と考えられている。ただし、カラフトマスはシロザケと同様、特定の調査河川以外では川での釣りが禁止されている。そのため、海岸でねらうのが一般的で、特に知床では渡船によるカラフトマスの釣りが長く楽しまれてきた。
世界遺産に登録された当初、この渡船によるカラフトマス釣りが禁止になるのではないかと心配する声もあったが、関係者らの尽力により、現在もかつてとほぼ変わらない内容で釣りができる。
カラフトマス釣りのシーズンは例年7月から始まり、8月に入ると最盛期を迎える。カラフトマスは年によって川に戻って来る数に波があることが知られており、今年に関しては、残念ながら当たり年とはいえない。(独)水産総合研究センター(現国立研究開発法人水産総合研究センター)が2014年に発表したカラフトマス来遊状況(最終報)によると、北海道における来遊数は158万尾で、前年同期の49%であり、30年ほど前の水準に近いようだ。それでも、ハイシーズンに渡船で先端部まで行くと、群れをなすカラフトマスに出会えるはず。
カラフトマス釣りはルアーやフライといった疑似餌を使い、表層をごくゆっくり引いてねらうのが定番のメソッド。難しいテクニックは必要なく、初めて挑戦する人でも釣りやすい。
圧倒的な景色で北の自然を体感
羅臼側では古くから羅臼遊漁船組合により釣り場となる半島先端部までの渡船が行なわれている。期間は年により前後するものの、おおむね7月中旬から9月中旬まで。羅臼側の道路の行き止まりである相泊の漁港から出船する。
カラフトマスは母川回帰性(自分の生まれた川に戻ること)が低く、陸路で行ける場所を含めてどの川の近くにもやってくる可能性はある。とはいえ、限られた日程で楽しむなら渡船をおすすめしたい。その理由は魚が多いだけでなく、道中の景色にもある。
目的地まではまさに絶景が続き、斜面にヒグマの姿が見られることも珍しくない。その光景は、地元北海道の人たちでも圧倒されるほどだ。
安全の確保は万全に
そんな知床を訪れる際に欠かせないのはヒグマ対策。これはアラスカなど海外の主要な釣り場でも同じことがいえるが、釣り場でクマに遭遇する可能性はほかの地域に比べて格段に高い。怖がりすぎる必要はないが、クマに人の存在を知らせて、あらかじめ不意の遭遇を防ぐためのクマ除け用の鈴や笛は用意しておきたい。
さらにクマ撃退用のスプレーもあると万全だ。なお、クマ撃退スプレーは、羅臼ビジターセンターなどでレンタルを行なっているものを利用する。それさえできれば、あとは圧倒的な景観の中で、野生のサケ・マスが待っている。日本が誇る北の大自然にぜひ触れてみたい。
この釣り場へのアクセス
女満別空港から知床の玄関、斜里町ウトロまでは約100km。レンタカーで2時間半ほど。ウトロから羅臼は知床横断道路を経由して約50分。
釣り場情報
〈知床/カラフトマス〉
シーズン | 7月中旬~9月中旬 |
問合先 |
羅臼遊漁釣り部会(http://shiretokorausu-yougyosen.com/) |
- 釣り場情報は2015年7月現在のものです。