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掲載日:2015.11.26

人との関わりのなかで新しいものを生み出す〜中城大祐が語るバイヤーの哲学

群雄割拠といっても過言ではない日本のセレクトショップのなかで、クオリティが高く個性的な商品ラインナップによって、独自の地位を築いているTOMORROWLAND。日本はもちろん海外からも注目されるセレクトショップは、その成功の陰にアイデア豊富なバイヤーたちの存在がありました。 TOMORROWLAND成長期にカリスマバイヤーとして活躍し、一貫して現地の作り手と関わり続けてきた中城大祐さんが語る製品に対する“思い”とは?
ANAオリジナル
中城大祐さんインタビューの様子

バイヤーとは新しいものを見つけて提案していく仕事

―― まずはバイヤーの仕事について教えてください。

中城大祐さん(以下敬称略):バイヤーというと、展示会などで商品を買い付けてくるイメージが強いと思うのですが、TOMORROWLANDの場合はそこに提案という要素が入ってくることが多いです。展示場で「これはいい」と思ったら、その商品や会社、作った人について根ほり葉ほり聞くんです。デザイナーさんのバックグラウンドや作っている場所について聞くことで、その人の感性やその商品が作られた理由が分かってきますし、それを知ればこちらからよりよいものを作るための提案ができます。

―― 商品をそのまま買うのではなく、新しいものを作るということでしょうか?

中城:もちろん完成度が高いものを、そのまま扱うこともあります。でも、例えばスーツひとつとっても、日本人の骨格とヨーロピアンの骨格は違いますよね。そのとき日本で好まれているデザインも加味して、本当に日本人に合った形に変える必要はあると思っています。

僕は、ものを作っているところには必ず見にいくというスタンスでいます。「こういう商品が作りたい」となったら、どこで作れるかをリサーチして工房まで足を運ぶんです。現場を見ると「こんなことができそう」というアイデアが浮かんできますし、「もっとこうしたらよくなる」という提案もできますから。
そういう意味では、TOMORROWLANDのバイヤーは「買う」に加えて「ものを作る」という役割を担っていることになりますね。

牛革のパスポートケース 内側

作った人、作られたもののバックグラウンドを知りたい

―― 現場を見に行くようになった理由はあるんでしょうか?

中城:現地で見たり聞いたり感じたりした経験が、もの作りに生きるということを実感しているからだと思います。
僕の最初の海外出張は15~16年前なんですが、そのときまでサマータイムを知らなかったんです。22時なのにまだ明るいということに衝撃を受けましたね。

イタリアのサマーシーズンは平日でも16時くらいには仕事を終えて、みんな海やプールにいくでしょ。休みの日は必ず海にいくような人ばかりで、僕も実際に海に行ってみたんですが、そこに流行のショップが集まっていて、都市部とは違った商品を並べていたり、雰囲気に合った店内レイアウトに変えていたり、地域に根差した工夫をしている。
それを見て「これは日本にもってこられるかな」とか「これは日本だとどうすればよいかな」とか考えましたね。そんなアイデアも現場の雰囲気を感じないと浮かんできません。

―― 現地での体験が大切ということですね。特に意識していることはありますか?

中城:トラディショナルなものは「なぜその商品がここで生まれたか」をよく考えます。そうすると、必ずバックグラウンドがあるんです。
秋にミラノでマッケイ製法というソールの返りのよい靴を買って、そのままロンドンに行ったのですが、とにかく寒くて、足は疲れるし冷えは伝わってくるしとても辛かった。この靴は暖かいイタリアの石畳を歩くのに適しているのであって、ロンドンにはまったく合ってないなと。そういう商品が生まれた背景を知ることが大切だと思っています。

―― 背景を考えることで商品のより深い理解につながる?

中城:まあ、そういうことですね。イタリアの西側に浮かぶエルバ島に、ハンドメイドの革製品を作っている工房があって、そこに「こういうのを作って欲しい」という企画を持ち込んだことがあるんです。夕方、仕事を終えて海にいって、夜はシーフードを食べて、とってもスローな生活をしているんです。仕事以外の話もしながら一緒に食事をしたのですが、こんなところにいると、こういうデザインが生まれるのかと実感しました。

ルイス島の工房で、膨大な量のサンプルをチェックする中城さん。古い生地のなかから思わぬ逸品が見つかることも。

スコットランドにはハリスツイードを作っているルイス島という小さな島があります。プロペラ機で到着したら工房のおじさんが「日本から人が来るなんで何年ぶりだ!」なんていって迎えてくれて、とってもよくしてくれたんです。

何を食べているのか聞くと「ジャガイモ」と。なるほど、過酷な気象条件の土地なんだなと。その後、島を案内してもらったら、岩、草、海ばかりなんですよ。自然そのままの風景というか。ハリスツイードの糸はすべて自然の色をアイデアソースにして染めているんですが、だからこんなに暗い色味になるんだと納得しました。

雄大な自然に包まれたルイス島を散策。現場に足を運ぶことで新たな発見が。
中城さんインタビューの様子

作っている人たちとどう関わっていけるか、それが重要

―― わりと現地の工房などにも深く入り込んでいくんですね?

中城:そうですね。浅く広くではなく、狭く深くというスタンス。だから付き合いの長い取り引き先が多いんですよ。つまるところは人と人だと思っています。相手やその人が作っているものへのリスペクトがあって、本当にいいと思っていることが伝われば、発注金額や数は関係なくいろいろやってくれます。だから、現場に足を運ぶことですね。お互い認め合わないとうまくいきません。

―― そうなると、個人の資質や情熱というのが大切になってきますね。

中城:今はTOMORROWLANDの知名度も高くなっているので、きちんと話を聞いてもらえるなど恵まれている部分はあります。でも、会社の看板があったとしても、続けていけるかどうかは個としてどれだけ相手と信頼関係を築けるのかにかかっていますからね。

もちろんTOMORROWLANDの哲学に共感してくれる人からは、どんどん入ってくるものがありますよね。相手からもいろいろ聞かれますし、意見を求められることも多いです。

―― バイヤーとして興奮するのは、そうやって信頼関係を築けたときですか?

中城:信頼関係を築けたときというか、小さな種を見つけて、それが形になったときです。そのままでは売りものにならない種なんですが、意見をぶつけあいながらよいものにしていくのが面白い。もちろん過程として信頼関係は必須ですけどね。

そうやって作ったものは、ひとつひとつに思いがこもっているので、見るといろいろなことを思い出すんです。今はそうやって、一個一個のものに思いを込めて大事にしていく時代なんじゃないかなって思っています。

中城さんインタビューの様子

日本の凄いもの、よいものを世界に発信していく

―― もの作りとしては理想的ですね。失敗することはあまりないんですか?

中城:いっぱいありますよ(笑)。僕は現地で「これいいな」という感覚を大切にしたいと思っているんですが、盛り上がりすぎちゃって仕入れたものがまったく売れないということも。海外マジックなんて呼んでいるんですが(笑)。

その土地の気候・太陽・肌の色を含めてよく見えたのに、日本に持って帰ってみるとしっくりこないという……。イタリアのファッションとか、あそこで見るから格好いいということ、ありますもんね。だから、ピンときても今はひと呼吸置くようにしています。

―― 最後に中城さんが今後、やっていきたいことを教えてください。

中城:2015年10月にニューヨークのソーホーに初のTOMORROWLANDをオープンさせたんですが、お客さんに聞くと「日本の店舗に行ったことがある」という人が驚くほど多い。日本ブームというか、日本への注目度は高いなと実感しています。また海外ではすでにホールセールを展開しているのですが、日本の商品はとても反応がよい。

日本に残っているもの作りの技術は本当に優秀ですから。今後は日本でも、地方の特産品を含めよいものに目が向けられていくでしょう。僕としても、オリジナリティのある製品を通して、日本のすごいところを伝えていきたいと思っています。

スタイルとしてもこだわりたい、旅を盛り上げる小物たち

左から「リザードのパスポートケース」、「BELFIOREのシルバー製マネークリップ」、
「J.M.WESTONのローファー180」。すべて私物(TOMORROWLANDにて取扱い)

多いときは年間に100日近く海外に出ていたという中城さんですが、意外なことに服については定番のアイテムがないそう。
「そのときに気に入っている服、いつも着ている服を持っていきます」と中城さん。
ただ、靴だけは「どの国でも、どの場所でも活躍する万能選手」があるのだとか。それがJ.M. WESTONのローファー180。ソールまで自社工場で作っているほか、アッパーの革をなめしているのも系列会社。つまり一足すべてを自社で製作している、中城さんに「感動的」とまで言わせる名品です。
「革は昔ながらの万力を使ってから、現代的なローラーにかける。職人さんいわく、より繊維が細かくなるそうなんです。雨が入り込んでこない理由が分かりますよね」

J.M.WESTONの工場にて。J.M.WESTONとTOMORROWLANDのダブルネームの靴も企画中。

海外ではマネークリップを愛用している中城さん。使っているのはBELFIOREのシルバー製のもの。
「財布もいいんだけど、盗難が不安なときもありますよね。マネークリップはカードとお金だけというシンプルさが意外と便利。このシルバーのマネークリップは、長年お世話になっているフィレンツェの工房に作ってもらったものです」

もう1点、中城さんのこだわりが詰め込まれているのがTOMORROWLANDが手掛けるパスポートケース。
「いつも、いいパスポートケースがないなと思っていて、じゃあ自分で作るしかないなって。日本製なんですが、職人さんと格闘しながら本当に無理をして作ってもらいました。真鍮のパーツも1からデザインしていますし、革に押された刻印の深さまでこだわっています」という中城さん。商品を見つめる眼差しに愛があります。

旅先であっても、お気に入りのアイテムを身につけていたい。そんな中城さんのポリシーが伝わってくるようなラインナップ。こういった作り手のこだわりが感じられる、ストーリーのあるアイテムを身につけることで、旅がより楽しくなりそうです。

中城心平(なかじょうだいすけ)
中城大祐(なかじょうだいすけ)

1995年、新卒でTOMORROWLANDに入社後、横浜元町、横浜みなとみらいクイーンズイースト、東京丸の内の店舗を経て1998年からバイヤーの道へ。セレクトショップ全盛期に、カリスマバイヤーとしてその名を馳せる。現在は商品部門メンズ統括部長であり、細かいバイヤー業務は後進に譲っているが、若いバイヤーのチャレンジを後押しするアドバイザーとしても活躍している。

ライター:Shotaro Takai
Photo by
Masashi Yoshikawa

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