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    掲載日:2018.10.04

    ヨーロッパのアート・シーンを彩る安藤忠雄のミュージアム建築の世界

    やわらかな自然光が石彫作品を包み込む ストーン・スカルプチュア・ミュージアム(ドイツ)

    2階のギャラリー。光と影の模様が、彫刻作品に重なる
    Photo by Shigeo Ogawa

    床面に整然と並べられた本。実は、これらはすべて石で造形した彫刻作品です。「ストーン・スカルプチュア・ミュージアム」は、ドイツ南部の温泉地・バーデン=バーデンの丘陵地帯に位置する小さな美術館。彫刻家のヴォルガング・クーバッハ氏とその夫人であるアンナ・ヴィルムゼン氏の作品を展示しています。

    アプローチから見る北側の景観。緩やかな傾斜地の中腹に立つ
    Photo by Shigeo Ogawa

    安藤忠雄氏が設計の依頼を受けたのは1996年。しかし、資金不足による条件の変更や、2007年のクーバッハ氏の死去などの紆余曲折があり、着工に取り掛かったのは2009年のことでした。一度はプロジェクト自体が頓挫しそうになりましたが、ヴィルムゼン氏や周辺住民の強い希望によって、継続することができたのだといいます。

    「小さくとも確かな空間と人々の強い思いが込められている、この建築に関われたことを誇りに思う」
    (TOTO出版「安藤忠雄の建築4」p.112)

    安藤忠雄氏はこのプロジェクトについて、このように語っています。クーバッハ氏は完成を見届けることなく亡くなってしまいましたが、その遺志は彼の作品を恒久展示するこの美術館に受け継がれているのです。

    彫刻作品の奥には水盤広場(ウォーターコート)が広がる
    Photo by Shigeo Ogawa

    建物の中心は、特徴的な屋根の納屋。壁面の上部をすべて撤去し、木組みだけを残して隙間から自然光が入り込むようになっています。やわらかい光が石彫の作品を包むその光景は、まるで建物全体がクーバッハ氏の功績を祝福しているかのよう。

    水盤広場から見る夜の景観
    Photo by Shigeo Ogawa
    ストーン・スカルプチュア・ミュージアム/Stone Sculpture Museum

    URL:http://fondation-kubach-wilmsen.de/stonesculpturemuseum.html

    美しいランドスケープの庭園美術館 シャトー・ラ・コスト(フランス)

    広大なブドウ畑が広がる敷地に、さまざまなアーティストの作品が点在する
    Photo by Shigeo Ogawa

    南フランスのエクス・アン・プロヴァンス旧市街地から北へ約15km。「シャトー・ラ・コスト」は、広大なワイナリー(シャトー・ラ・コスト)をランドスケープとともに整備し、屋外彫刻やパヴィリオンが点在する庭園美術館として再生するプロジェクト。安藤忠雄氏は施設全体のマスタープランのほか、来場者を迎えるゲートとして、インフォメーション、ギャラリー、カフェなどの機能を持つ「アートセンター」、ローマ時代の教会の一部を修復利用した「チャペル」、そして自身のインスタレーション作品を展示する「4グラス・キューブス・パヴィリオン」などを設計しています。

    水盤に浮かぶアートセンター。
    左手に見える作品はアレクサンダー・カルダー氏の「Small Crinkly」
    Photo by Shigeo Ogawa

    このアートセンターの特徴とも言えるのが、全長140m、4000m2を超える巨大な水盤。その水盤を縁取るように引かれた中央の軸線と建物の軸線が交差することによって、周囲の自然と調和しつつもスリリングな景観を実現しています。また、水盤の下部には100台以上収容可能な駐車場が。美しいランドスケープを保ちながら、駐車スペースの問題を鮮やかに解決しているのです。

    建築と造形作品が溶け合うように、水盤上に映し出される
    Photo by Shigeo Ogawa

    水盤に映り込む、ガラスとコンクリート。シンプルな造形にこそ、安藤建築に宿る力強さと美しさが見てとれます。水盤の上に立つ彫刻は、フランスのアーティスト、ルイーズ・ブルジョワ氏の作品「Crouching Spider 6695」。実は、あの六本木ヒルズの巨大な蜘蛛の彫刻「MAMAN」をつくったのもブルジョワ氏。建築とアート作品が一体となり、静謐な景観を生み出しています。

    「4グラス・キューブス・パヴィリオン」。<環境>をテーマとする、4つのキューブから構成された安藤忠雄氏のインスタレーション Photo by Shigeo Ogawa
    「4グラス・キューブス・パヴィリオン」。
    <環境>をテーマとする、4つのキューブから構成された安藤忠雄氏のインスタレーション
    Photo by Shigeo Ogawa

    2011年にオープンした「シャトー・ラ・コスト」。しかし、このプロジェクトはまだ継続中で、今もなおその全貌は定まっていません。いつ訪れても新しい発見、感動がある──。そんな生命の宿る場所に育てたい、という安藤忠雄氏の願いがこの場所に込められているのです。

    シャトー・ラ・コスト/Château La Coste

    URL:https://chateau-la-coste.com

    2019年のオープンに向けて進行中 ブルス・ドゥ・コメルス(フランス)

    現在、パリで進行中のブルス・ドゥ・コメルスの館内イメージ
    Courtesy of Ando Architect & Associates

    そして今回、最後に紹介するのが、安藤忠雄氏の最新プロジェクト「ブルス・ドゥ・コメルス」。フランス・パリの中央市場跡地に隣接する、かつての穀物取引所を美術館に改造するプロジェクトです。建物内部のロトンダ(ドーム状の屋根を持つ円形の建築)に、高さ10m、直径30mのコンクリートの円筒を挿入する入れ子状の空間が構想されています。

    安藤建築の特徴とも言える、コンクリートとガラスによる二重皮膜構造の常設展示棟 Courtesy of Ando Architect & Associates
    ブルス・ドゥ・コメルス館内の模型
    Courtesy of Ando Architect & Associates

    最上階にはレストランフロアを設け、建物の外輪部にあった3フロアにわたるスペースが展示室となる予定。建築ファンのみならず、ヨーロッパ中の多くの人々がその完成を心待ちにしています。

    2019年のオープンに向けて着工が進んでいる
    Courtesy of Ando Architect & Associates
    ブルス・ドゥ・コメルス(進行中)/Bourse de Commerce

    URL:https://collectionpinaultparis.com

    また、「ブルス・ドゥ・コメルス」が進行中のパリでは、2018年10月から安藤忠雄氏の個展「Tadao Ando : Le Défi(安藤忠雄 挑戦)」が開催されます。会場となるのは、ヨーロッパの芸術文化の拠点ともいえるポンピドゥー・センター。模型やドローイングなど多彩な設計資料を展示するこの展覧会では、安藤忠雄氏の壮大な挑戦の軌跡を追体験できることでしょう。

    「安藤忠雄 挑戦」展

    期間:2018年10月10日(水)~ 12月31日(月)
    会場:ポンピドゥー・センター(フランス・パリ)
    主催:国際交流基金、ポンピドゥ・センター、安藤忠雄建築展実行委員会
    URL:https://japonismes.org/officialprograms/「安藤忠雄」展

    安藤忠雄氏の建築は、都市と関わり合い、歴史と関わり合い、そして社会と関わり合いながら、その場所に見たことのない景色を作り出してきました。ミュージアムという公共の場所における安藤忠雄氏の建築は、アートの魅力を引き出すと同時に、そこに新たな感動を生み出す装置となっています。ヨーロッパを訪れる際にはぜひ、足を運んでみてください。そこにはきっと、これまでに体験したことのない空間との出会いが待っているはずです。

    • 記載の内容は2018年10月現在のもので、変更となることがあります。
    参考文献

    「安藤忠雄の建築2」(TOTO出版、2008年)
    「安藤忠雄の建築4」(TOTO出版、2015年)

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